第10話 「正直コピー能力ってハズレのイメージない?」
「はぁ......」
またいつもの空き地、いつものメンバーとダラダラとしていた。
「どうした滝山、元気がないな。俺のオススメのエロ漫画を貸してやろうか?」
「嫌だよ!お前の勧める奴9割がNTRモノだろうが!異様に乳デカイし!
間違えて見たうちの上司が寝込んだんだぞ!」
「どんな上司なんだそれ...」
マフィンが呆れたように呟く。
「じゃあ聞くが、滝山、お前は彼女がいるのか?」
ケビンの問いにギクリとする。
「.........いないけど」
「出来たことは?」
「.........ないけどォ!?」
「ならいいだろ。」
「言い訳あるかクソボケぇ!」
「まあケビン、そう滝山を責めてやるな。
滝山は仮にも異世界から来たんだ。
ここまでしておいてハーレムどころか彼女の1人も作れなければ、見た目か人格に重大な欠点があるということになってしまう。」
「お前も煽ってくるんじゃねぇよ骨野郎...!」
「気になる子はこっちにいるのか?」
「ま、まあな...どこか野生児的な所があって結構可愛くて......
あ!可愛いからって狙うなよ!」
「貧乳はお断りだ」
「幼女でないなら用はない」
「俺はBL以外はちょっとな」
「お前らが変態でよかったわ!クソが!」
「まあそう怒るな、俺もケビンも同士の女には手を出したりしない。」
「まあな」
「まぁ...ならいいけど」
「そういえば滝山、1つ聞きたいことがあるんだけど...」
「なんだマフィン?」
「お前魔力解放どうなったの?」
「......それ聞く?」
「いや聞くよ...気になるだろ」
「はぁ......」
私は大きくため息をつき、地面を見つめる。
「結論から言えば、コピー能力だった...」
「コピー能力か」
「あまり例を見ないな」
「そんな悪い奴じゃないと思うが?」
「私はコピー能力にろくなイメージがない...!
コピー能力者ってだいたいオリジナルには勝てなかったよ...って言ってやられてるイメージがある。」
「そんなことない、訓練を積めば無双できるかもしれないぞ。」
「訓練か...めんどくせえな...」
「そう言うな、俺の未来予知も使えるようにするのが大変だったしな」
「お前がそれ使ってるの見るのガチャ引くときだけだけどな」
「とにかく...私が一番気にしてるのが、この能力がどの程度の汎用性があるかなんだ。」
「汎用性?」
「ああ、例えば...1度コピーした能力をメモリーに保存して後から使うとかできるのかとか。
その場その場でコピーしなけりゃならないなら使い物にならない。」
「そんなことないだろう。
カーヴィがどこでも全能力を使えたら強すぎる。」
「じゃあ言わせてもらうが、本家が傍にいなきゃモノマネできないモノマネ芸人なんて役に立たないだろ?」
「それもそうか...」
「とにかく滝山、今は色々と使ってみるといい。どうやってコピー出来るとか、魔力だけなのかとかな」
「スケルトンの言う通りだ」
「そうだな...帰ったら早速練習してみよう。これも正式雇用の為だ。」
「そうだ、頑張れ滝山。俺の秘蔵のエロ漫画を貸してやるから」
「いいよ!気持ちは有難いけど幼女には興味ねえよ!」
「BLは?」
「ない!!!!」
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「うーん...」
とりあえず、部屋にあった多くの本の中に『子供でもできる殺人空手 著者:ファゲ老子』というものがあったので必死になって読んでいる。
「これは使えそうだな...」
手やら足やらの動かし方が非情にわかり易く書かれている。
イメージしやすくて実に良い。
「なるほど...こうしてこうか!」
写真を見ながら完全にコピーするイメージで動作を真似る。
割と出来てる気がする。
数時間かけて本に載っていた技やら奥義やらはどうにか繰り出せるようになった。
さて、それでは早速使い物になるか試してみるとしよう。
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「なるほど、それで僕のところに...」
「そうなんです、お時間があればですが...」
私が空手の実験相手を頼んだのはカワサキ准将だった。
今は紅茶を啜りながらリラックスしていた所を頼んでみた。
筋肉の強弱は付けられるらしく、こうして見るとただの紳士にしか見えない。
「そういう話なら、僕よりハイユの方が適任だと思うよ。
繊細な動きなら彼女の方がずっと優れているからね。」
「なるほど...わかりました、失礼します。」
頭を下げ、ハイユの元に向かう。
「特訓か!いいぞ!!やろう!!!」
彼女は快くOKしてくれた。
目を輝かせて飛び跳ねるくらいワクワクしてる。手加減してくれるといいんだが...
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「さあ!どこからでもかかってこい!!」
「お手柔らかにお願いします...」
支部前の空き地、私はハイユと向かい合って構えた。
「イヤァァーー!!!」
叫びながら駆け出す。ろくな叫び声が思い浮かばなかった。
(殺人空手...蛾の円舞曲!)
心の中で叫び、教科書通りに攻撃を繰り出す。
(右手で相手の右半身上側!次に左足で蹴り上げ!左手で首元を突く!)
「いいぞ!いいぞ滝山ァ!!」
全力でやっているが、ハイユはいとも容易く受け止めたり、かわしたりしてしまう。
「はぁ...はぁ......おぇ」
一区切り着いたところで構えたまま間を開ける。
「次は...私が行く!」
「ファッ!?」
叫ぶと同時にハイユが勢いよく襲ってきた!
(マズい!!!)
(殺人空手!回避編!)
先ほどの本を必死で思い返し、轟音をたてて迫ってくるハイユの拳を避けまくる。
「オラ!オラ!オラオラオラァ!」
(ひぃぃぃぃ〜〜〜!!!)
頭を逸らし、後ろに飛び跳ね、屈み、右に飛び......
と繰り返し、必死になって避けまくる。
それが少し続き、漸くハイユが攻撃の手を止めてくれた。
「凄いぞ!よく避けたな!」
「手...かげ...ん......してくだ......おぇぇ」
必死で息を吸い、どうにか呼吸を整える。
しかし、これで戦いに使えることがわかった!
先ほどのハイユの動き方も至近距離で見たおかげでコピーできた気がする。
いける...!いけるぞ......!
これで!出世を目指せる!!!
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翌朝
「おや...今朝の朝食はカワサキが作ったのか...?」
「おはよう、ヤーデル。今日は滝山くんが作ってくれる予定だったんですけど、降りてこないので代わりに僕がやってるんです。」
「おかしいな...寝坊でもしてるのか?」
「おはよ...どうしたの?ヤーデル?」
「ミリーか、滝山が起きてこないんだ。見てきてくれないか?」
「え〜...僕寝癖ボサボサなんだけど?」
「大丈夫だ、あいつは前に寝癖ボサボサの子が好きって言ってたからな。」
「......本当?
じゃ、じゃあちょっと行ってくる......♪」
「......チョロイな」
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コンコン、とノックをする音が響く。
「タキ〜?入っていい〜〜?」
「ミ...リー......助け......て......」
「どうしたの!?タキ!?」
ミリーが勢いよくドアを押し開け飛び込んできた!
「タキ、大丈夫!?どうしたの!?」
「身体が痛くて...動けない......」
そう、身体中が痛くて身動き一つできないのだ。
「なんで...?重い病気......!?」
「これは...多分......」
重い口をこじ開け、言葉を発する。
「筋...肉痛......だ......ゴフッ」
「タキーーーー!!!!」
薄れゆく意識の中、私の目には涙目で必死に呼びかけるミリーの顔が写っていた......




