第10話 これからは
10話です。これからも楽しく書いていくのでよろしくお願いします。
「カイム、起きてー!!」
俺はトールのでかい声によって夢の世界から連れ戻される。クソー、いい夢見てたのに!だがそれを口にはしない。なぜなら、ちょっといかがわしいことだからな。
「うーん、なんだよ。どうした?敵でも来たのか?それならモシュネーに頼めば……」
「全然違う。モシュネーが、モシュネーの胸がめっちゃデカかったの!」
どういう意味か理解が出来ない。トールはなぜそんなに切羽詰まっているのか。なぜそれを俺に言うのかをだ。
「それがどうかしたのか?」
「なに言ってんのよ!前よりモシュネーの胸が!」
「やめてください、お嬢様ー!」
そんなトールと俺の意味がわからない会話にモシュネーが慌てて割って入ってくる。
「カイム、貴様はきくな、いいな。耳を潰せ!」
「無理だよ!どうやったらそういうことになるんだよ!」
どうして女は胸の大きさにこだわるのだろうか。俺は別に女を胸で決めようとかいう概念はないんだけどな。
「別に俺、そういうのどうでもいいから」
「え……ちっちゃい胸には興味ないってこと……」
トールは泣きそうになりながらきいてくる。
「別にちっちゃい胸が嫌いなわけじゃ……どっちかというとちっちゃい方が好きだ」
「やった……う、うん。別に嬉しくなんてないけど、……ありがとう……」
「カイム、貴様ー!表に出ろ、剣の稽古をつけてやる」
「なんで怒ってんだよ!てか絶対にボコるきだろ」
どうしてモシュネーはそんなに起こってんだろうか?やっぱり女は意味不明だ。
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俺らはこの森を抜ける準備をしている。
モシュネー達はなぜ胸の話をしてきたのかというと、朝、水浴びをしているときにトールがモシュネーの胸をもんだところから始まったそうだ。その時、昨日の夜のこと、王都にいかないことも伝えてくれたらしい。
「で、カイム。これからどこに向かうの?」
「そうだなー、モシュネー。ここからどこにいけるんだ?」
モシュネーは準備を済ませて洞窟から出ようと歩き出す、俺とトールも準備を済ませてモシュネーの後ろについていく。
「そうだな、王都以外となると、少し遠いがゼルの村が一番近いな」
「そこってどの位かかるんだ?」
「2日くらいだと思う。だが、あそこの村は……」
なんだろうその悪そうな感じは……。ききたくないがきかないとな。
「その村には何かあるのか?」
「あのね、カイム。ゼルの村っていうのは、……亜人の村なの」
「亜人ってもしかして獣人とかのことか?」
「うん。よくしってるね」
そりゃ当然だ。だって獣耳だぜ、テンション上がるぜ。だけど亜人ってだけでそんなに嫌がるものか?
「もしかして亜人ってこと以外にも行きたくない理由があるのか」
「あのな、カイム。その村っていうのは、……人間嫌いの種族なんだ」
「それって、その村で人間が何かをしたのか?」
「その話は森を移動しながらにしよう」
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俺らは洞窟から出て火の処理をしてゼルの村へと出発する。歩きながら今さっきの話をきく。
「で、人間とのイザコザって何なんだ?」
「それはな、昔、ゼルの村にもたくさんの人間と獣人が共に暮らしていた。その村では異種族での恋愛・婚姻は禁じられていた。だが、その禁じを破ったものがいた。周りからは反対されていたのだがそれをも押し切り、村の端でひっそりとふたりで暮らしていた。そしてそのふたりにひとりの男の子の子供ができました。その子は父の獣の見た目を受け継ぎ、母の人間らしい顔立ちを受け継いだ。その子供はすくすくと成長し、8歳の誕生日を迎えた。そのとき異変が起きた。その子供は両親を殺害したのだ」
「なんでだ?どうしてそんなことが……」
「黙って聞いてろ。その子供はゼルの村の人も虐殺し、この森を越えて、王都に襲来した。王都でもたくさんの人を虐殺した。それを止めるべく沢山の騎士を王が派遣し子供を倒したのだ」
どうしてなんだ、どうして子供は暴れ始めたのか。……
多分突然変異かなんかだろう。だけど、騎士を沢山って、そんなに強いのか?
「それから、ゼルの村は人間を嫌い始めたのだ。……どうだ、わかったか?」
「なんとなく、な。そんな悲しい話だとわな」
ありきたりだが、やっぱりこういうのが一番泣けるな。いや……
「ちょっと待てよ、そんな村入れねーじゃないか」
「それは大丈夫だ。一様村外れに人間がやっている宿屋が、あるから大丈夫だ」
「それなら大丈夫じゃないか、そんなに嫌がることは」
そんな俺とモシュネーの会話にトールが割って入ってくる。
「だけど、そこに行く途中に亜人の村を通らないと行けないんだよ」
それはやばいな。なんか雰囲気が重くなる。どうにかして雰囲気を変えなければ。
「そういえば、モシュネーの胸ってどんくらいなんだ?」
クソ、これしか思い浮かばなかった。これを言ったんだ、雰囲気が変わってくれないと俺の死が無駄になる。だけどそんな心配は無駄だったようだ。
「貴様ー!殺される準備はできているようだな」
「そんなわけじゃ、うわーー!」
そんな俺の言い訳を聞かずに襲い掛かってくる。そして……
「何?カイムそれは私へのあてつけなの、そうなんだよね!」
「だから違うんだあぁぁぁぁーー!」
俺の死は無駄にならなくて済んで良かったー。だけど
「死ねー、カイム!」
と、ふたり同時に襲い掛かってくる。俺は逃げる必死に足を走らせる。トールは楽勝だが、モシュネーにすぐ追いつかれた。
「捕まえた!よし、これからどうなるかわかってるだろうな!」
トールが俺らに追いついく。
「わかってるよね」
これはヤバイ、ヤバイ!
怖いふたりの目が近づいてくる。
キャアァァァァーーー!犯されるーーー!
俺は死を見た。これが生き地獄なんだと初めて知った。(知りたくなかったけどな)