【プロローグ】夕方に...
「ねぇ...そこの貴方、一つだけ能力をもらえるとしたら何が良い?」
目の前の少女は言った。
部活が終わり、友達と別れを告げそろそろ家に帰ろうかと考えていた時だった。
瞬きをした刹那、いきなり目の前に現れた少女、鼓動が速くなり自然と眼を見開く。驚く僕に対し、
笑みを浮かべる彼女は構わなく続けて話をする。
「一つだけ、能力を与えてあげる。『火』でも『浮遊』でも『具現化』でも何でもいいよ。
でも『死』と『生』は無理よ?」
突然現れた彼女は凛々しい姿に美しい瞳をして僕を見つめる。かなりの美人だ。
長髪で青髪。天使と言われれば信じても仕方がない容姿をしている。
「頭がついてきてない?仕方ない、場所を変えよっか」
何も発する事の出来ない僕に対し、淡々と口から言葉を出す彼女。
すると、急に強い光が僕を包んだ直後、自分の部屋に移動していた。いみがわからん、なんだこれ。
彼女は軽く息を吐くと、僕のベットの上に座った。
「ここなら落ち着くでしょ?...もう一度言うよ?一つだけ能力をもらえるとしたら何が良い?」
「ちょっと待ったください。」
噛んだ。でも僕は続ける。
「意味がわからないです...お願いだから一つ一つ説明してください」
「ごめんね、焦りすぎちゃった。
まず今から貴方に能力を一つあげるから、それを使って他の能力者と戦ってもらいます。優勝すれば、どんな願いでも叶えてあげます。
他にも、能力者には『身体強化』と『一つだけ欲しい才能』が与えられます。これは年齢や経験、体格差を配慮する措置です。これで説明は終わり、質問はある?」
「あの…あなたはそれを本気で言ってるんですか?...簡単に信じれると?」
当然、疑うに決まっている。ここは現実だ。主人公もクソも無い。夢じゃないかとさっき腕をつねった所だ。でも...
「君が一番わかってるんじゃない?瞬間移動に、空間移動。体験して来たのは君でしょ?
それに、君の事なら何でも知ってるよ。
高校2年生、サッカー部の山本 隼人君、妹と二人で暮らしていて彼女も居る。もうすぐ2か月記念だからケーキでも買ってあげようか悩んでる男の子。そんな"リアルが充実して普通そうな貴方"に私は賭けたの。」
不適な笑みを浮かべながら彼女は言った。個人情報なんてお構いなしに調べ上げられている...もうどうにでもなればいいんじゃないかな。
「じゃあそろそろ、能力と才能を決めてもらおうかな。それとも質問とかある?」
「....なんとなく理解しました。本当に何でも知ってるみたいですね。質問いいですか?」
「どーぞ。私の情報以外なら何でも答えるよ~」
何でも良いらしい。一番聞いてみたかった質問を僕は遠慮せずに彼女にぶつけた。
「僕の妹の病気も治せますか?」
...そう。そういう事。願いを叶えると聞いてからそれしか頭に無かった。
きっと今の僕は、目が血走って今にも牙を向きそうな顔をしているのだろう。
それに、むしろ彼女はそれを狙って僕を...
「ええ、言葉通りどんな病気でも障害でも治せるよ。」
「その言葉、信じます。わかりました、その戦いに乗りましょう。」
「ほんっとシスコンだね。嫉妬しちゃいそう。まぁ...仕方ないよね。
で、能力と才能はどうするの?決めた?」
「はい、既に決めています。――――――にします。大丈夫ですよね?」
「うん...大丈夫....だけど本当に良いの?それよりもっと強い力だってあるよ?
例えば...」
彼女の言葉を、僕の声で上書きする。
「いいんです。この能力が何かしっくりきますから。」
「ふふっ相変わらずね。いつ会っても……あ、一応、貴方に賭けてるんだから頑張ってよ?」
「ええ...ところで、僕が勝つと貴方にも何か利点があるんですか?あ、あと名前聞いてませんでしたね。」
「名前は、そう…ね、メイジって呼んで。特典はあるけどまだ言えない。まず初戦頑張れ。じゃあねー」
意識なく瞬きをした途端、メイジさんは消えた。名前の通り魔法使いなのかな。
もっと聞きたい事はあったけれど、何故か満足してしまっている。
急に訪れた非日常に胸が躍っている僕を、僕自身は理解していない。
不意に見てしまった電子時計を見ると、午後8時を過ぎている。忘れてた……妹の晩御飯を作らないと
いつの間にか、数分前に起こった出来事は頭から消えていて。リビングに急いで向かっていた。
悪い予感は的中し、妹は激怒。僕は必死に謝り、急いで晩御飯を作る。
文才も、発想も無いですが。楽しんで読んでもらえれば幸いです。