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3 果敢に少女を誘拐していくスタイル

「あ?」

「その子を離せ」


 俺は手に小太刀を出現させる。確かこれを出している間は身体能力が強化されるんだったな。


「なんだてめえは。盗人か?」

「妙な武器をかまえやがって。やるのか? あぁ?」


 片方の男は俺をにらみ、もう片方の男は俺につかみかかってくる。


 ガッと音がしたと思ったら、男のこぶしが俺の頬を打っていた。


 全然平気だった。

 何か当たってる、くらいの感触はあったけれど。


「盗人はどっちだよ、この人さらいども」


 もはや問答無用だ。


 俺は瞬時に掴みかかってきた男の腕を振りほどくと、みぞおちに思いっきり突きを叩き込んだ。


「うごあっ!」


 くの字に折れる男。


 確かに力が増している。これなら刀を抜かなくてもいける!


「てめえ!」


 もう一人の男がナイフを抜いた。


 俺はくの字に折れた男の首根っこをつかんで、盾のように前に出しながらナイフを持つ男に突進する。


「くそっ! その手を離――」


 言い終わる前に、俺はナイフを持っている男に盾として使っていた男を投げつけた。


「ぐっ!」


 うめいたが、男は投げつけられた男をどうにか受け止める。


 でもこれで反撃できない。


 俺は抜いていない小太刀の鞘で男二人を横薙ぎにした。


「ぐああっ!」


 鞘が腹に食い込んで、横ざまに吹っ飛ぶ男二人。


 それでも起き上がろうとする男の前に、俺は立った。


「!」


 俺は正面に持っていた小太刀の鯉口を切った。


 抜き切らず刃を見せながら、


「もうこれ以上は、やめといたら?」


 忠告する。


 どうやら風は意のままに操れるみたいだ。

 そよ風になるまで調整して、男たちに浴びせた。


 たぶんこれ、戦意を削ぐことにも利用できるぞ。


「……行くぞ。なんか、変な野郎だ」

「畜生、盗人め」


 男たちは肩を抱き合いながらおぼつかない足取りで逃げていった。

 だから盗人はお前らだろ。



「さて」


 俺はさらわれた女の子に向き直った。


「ひっ、申し訳ありません……私、私……!」


 女の子はおびえきっていて、座り込んで震えている。よく見たら服もぼろぼろだった。


「大丈夫だよ。俺はきみに何もしないから」


 後ろ手に隠した小太刀のそよ風を浴びせると、女の子は次第におびえた表情をしなくなった。


「…………?」


 なにか不思議な顔をして俺を見ている。

 もう怖がってはいないみたいだ。


 意外と便利だな、この風。


「あ……新しいご主人様ですか?」

「え? いや、その」


 違うんだけど。

 どう言えば怪しまれないんだ?

 いや、風のおかげで女の子の警戒心はすでに解かれている。普通に話して大丈夫か。


「違うよ。きみを助けたかっただけ」

「助けたかった……?」


 女の子は首をかしげた。


 助かるという発想がもうすでになかったらしい。


 でもあのままだったら奴隷とかにされて売り飛ばされていたところだろう。


 話を聞くと、女の子の名前はウル。軽く体を痛めつけられていたが重症ではない。


 俺は小太刀を出して、ウルに怪我をさせないように慎重に鎖を外そうと試みる。

 意外と硬い。


 もう少し強く力を込めてみるか……。


「いた! あいつだ!」


 途中で、住人らしい人が兵士を連れてやってきた。


 ちょうどよかった。この子を保護してもらって、さっきの男二人を逮捕してもら――


「衛兵さん、あそこだ! あそこに奴隷商の商品を盗んだ犯人が!」


 住人は、俺のほうを指さして叫んだ。兵士の人が剣を抜いて走ってくる。


「俺!? 俺が悪いの!?」


 何か悪いことした!?

 いやいや、断じてしてないね!


 でも住人の人は高めのテンションで叫ぶ。


「そうだ兵士さん! あの変な恰好した、黄色い肌にのっぺり顔の奴だ!」


 ひどい言いようだな!


「行こう!」


 俺はウルの手を引いて走り出した。


「は、離した方がいいです。私の手、汚いのに……」

「汚くない!」


 ていうかなんで俺が追われなきゃいけないんだよ! 罰せられるのはあいつらじゃないのか!

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