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灰色の涙  作者: みー
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1 カミングアウト

1 カミングアウト


高校を卒業して約1年、私も気がつくと大学2年生になっていた。2年生からのゼミも希望の教授の所に入ることができ、彼氏である竜之介の就活も順調に進んでいることからそれなりに大学生活を楽しんでいた。


『明菜ー今大丈夫?』


LINEの通知が届いた。そう、この時気づかなければ全て平和に過ごせていたのかもしれない。


相手は奏太からだ。奏太は高校生の頃同じ部活で3年間を共にした友人。友人というより仲間という言葉のほうがこの関係から見ると近い存在だろう。彼は部活推薦で合格した隣県にある大学に通っている。

-うん!どうしたの?

『実はさ』

-?

『東口って覚えてる?』

-えーっと確か

-私たちが高3のときの部活体験に来た子で合ってる?

『そうそうその子』

-その子がどうかしたの?

『前から好きですって冗談で言われてたのは知ってると思うんだけど』

-あ〜!そーぴー先輩好きです〜の子か!!やっとわかった!

『それならよかった。また簡単に言うとそいつと喧嘩して気まずい』

-えー?あんなに仲良かったのに?

『うん、色々あってさ』

ここまで来て私は奏太の色々に少し引っかかった。割とストレートに物事を言う総太からしたら珍しいと思ったからだ。これは何かがあった、高校3年間を共に過ごした仲間が悩んでいるとすぐに察知できた。


-色々って?

-まあ優しい明菜様が聞いてやるよ(笑)

『本当に?』

-もちろん!私と奏太なんだから!

-なーんでも任せとけ!相棒!

『ありがとう明菜、俺さ』

-なになに改まって(笑)

ほんの少し静寂が訪れた。そしてこの文字を突きつけられる。




『俺さ東口と付き合ってた』



-え?


『これは本当の話。でももう別れてる。そん時に喧嘩した』

-ちょっと待って

-理解出来ないんだけど

-出来ればゆっくり説明してもらえる?

『うん』

-いつから付き合ってたの?

『2月の終わりくらいから』

『1個下の後輩らの卒業式に明菜と2人で行ってすぐくらいだと思う』

-なるほど、じゃあ3月に高校遊びに行った時は付き合ってたの?

『うん。その後喧嘩して別れた』

-そ、そっか…


今思えばこの時はなぜか冷静に物事を考えられていた。突然のカミングアウトすぎて何が何だかわからなかったのだろう。受け止め切れていなかったが、受け入れようと感じていた。

-なんで喧嘩したの?

-どうして付き合ったの?

-東口君って何なの?

私は無意識に連続で質問をしてしまった。少し後悔しているといつの間にか既読が付き、それから暫くすると奏太から返事が返ってきていた。


『まず喧嘩した理由ってゆーより別れた理由。東口に付き合いだした時に沢山好きって言って欲しいってお願いされた。なのに急に向こうから別れたいって言われて…』

-うん。別れたい理由は何だったの?

『好きって沢山言われるのがしんどいし、重たい。って言われた』

-それって東口君言ってること矛盾しすぎじゃない?

『そーだろ!?あいつから言い出したのに矛盾してるよな!?』

-確かに。そっから喧嘩して別れたってこと?

『それも1つの原因』


『次に付き合った理由だっけ?東口とLINEは去年の大会前からずっとしてて、年明けくらいからLINEでも部活見に行った時も奏太先輩好きです~って駆け寄ってきてくれてて…初めは冗談半分で言われてると思ってた』

-奏太後輩ウケなぜかいいもんねー

『なんでか知らないけど』

-絡みやすさとかがあるんじゃない?

『自分ではよく分からん』

-能天気なやつね

『褒め言葉だと思っておく!』

-う、うん

『んで急に東口から“僕が中学生の時に体験入学あったと思うんですけど、その時キラキラ輝いてる奏太先輩を見て一目惚れしたんです”って言われた』

-一目惚れ!?東口君は何者?

『あ、この続きが東口って何なの?に繋がるから今から話す』

-うん

『これは本人が言ってたんだけど男の子の人格と女の子の人格を持っているらしい』

-2重人格?ってこと?

『そう。俺と付き合ってる間、普通に東口が同期の女の子と付き合ってたことを又聞きしちゃって俺が突き詰めてたら険悪になって気まずくなってる』

-まさかの二股…斬新ね

自分で質問を投げかけたくせに理解が出来ていなかった。1つ1つの質問の答えがあまりにも濃すぎる。ゆっくり頭で整理しないとぐちゃぐちゃにってしまいそうだった。


-それでさ

『うん』

-奏太はどうしたいの?

『東口との気まずい関係から先輩後輩っていう関係に戻りたい』

-そっかぁ

『俺、大会前になったら先生に呼ばれると思うからそん時に気まずいとあれだからさ』

-時間はかかると思うよ。でも奏太が元の関係に戻りたいって考えてるんやったらきっと戻れると思う。東口君もきっと戻りたいとはどこかしらでは思ってるはず。

『ありがと。明菜に相談してよかった』

-いえいえ!

『でもさどーしたら元の関係に戻れると思う?話も全然聞いてくれないし、部活行ったら避けられるし…』

-今は放置するのがベストじゃない?

-ある程度熱りが冷めてお互い冷静に考えることが出来るようになってからの方が話が進みやすいと思う。

『だよなーよし!早速、東口に言ってみるわ!』

-うんうん、そーしとこう!

奏太はその後すぐ"とりあえず今は関わらないようにする"というような内容のLINEを送った。全てがよい方向に向かっていった、そう思うと少しばかりか私は安心していた。


『距離とってからはどーしたらいい?』

-うーん。モヤモヤするとは思うけどお互いある程度落ち着いてから戻ろうって提案するべきかな、時間はかかるとは思うけど…

『なるほどなぁ〜それ雅美ちゃんにも言われた』

-え!?雅美も知ってるの?

『うん。雅美ちゃんも俺と同じように好き好きって言われ続けてたらしいんだけど今は戻ってるって聞いたから話した』

雅美は私達とは2個年下の高校3年生だ。東口君から見ると1個年上の先輩にあたる。雅美と私は中学時代から先輩後輩で本当の妹のように可愛がっていた。正直、高校3年生は受験勉強以外にも最後の大会への部活全体のチーム作りという責任も与えられている。私たちの部活はこの辺りでも有数の強さで何年も連続で良い成績を残していることから1人1人が日々見えないプレッシャーと戦わないといけなくなる。そんな大事な時期にこんなことを打ち明けるなんて…。


-雅美も色々大変だったんだね。でもさ、奏太

『なにー?』

-雅美は今、高3で1番大事な時期なの分かってた?もしかしたら雅美が最後の大会のメンバーに入れないかもしれないのに奏太の話なんか聞いてられなくない?』

奏太にお灸を据えさせたかったから少しキツめに忠告した。

『今はそうだけど相談したのは2月とか3月とかだしさ…別によくない?』

-奏太は自分がよければそれでいいのね…まあ過ぎたことだから私から謝っとく

『お!ありがと!(笑)』

なんなのこの軽い感じ、奏太からは反省の色が全くもって見えないし謝る気はさらさらないように思えた。普通は反省するし俺も謝るわ、って言って欲しかった。私も奏太もまだ20歳にもなってない若僧でまだ何も分かってなかったんだ。これが長い長い戦いの始まりになることも何もかもを失うってことも。

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