5 新しい世界
最初に君に連れて行かれた場所は、町の大通りからちょっと横道に入った所にあるお菓子屋さんだ。
「マッシュのお菓子屋」と書かれた店で、店内には色とりどりのキャンディやグミ、チョコレートが所せましと並べられていた。
生まれて初めてみたその夢のような光景に私は驚いた。
明日の食べ物すら食べれる保証がなかった私がこんなキラキラした世界に居ていいのだろうか。そこにいる自分がみすぼらしくて、情けなくて、私は店から逃げ出した。
後ろから君の叫ぶ声が聞こえたけれど、その声に余計に腹が立って走る速度を上げた。
なんで、こんな世界があるのだろう。
君と私は何が違ったのだろう。
考え出すと理不尽なことばかりで何もかもが嫌になった。
そんなことを延々と考えながら走っていたら、人気のない所までたどり着いた。
人々の怒鳴る声も、足音もなにもないその場所はひどく静かだった。
だけれども、この島に来て一番心が安らいだ。
この頃の自分の行動を振り返ると、本当に馬鹿だなって笑っちゃうよ。
小さい頃から島を自分の庭のように駆け抜け、島を知り尽くしてる君から逃れられるはずなかったのに。
きっと、状況の変化に思考が追いつかなかったんだろうな。
めまぐるしく自分を取り巻く世界が変わって、世界が眩しすぎて逃げてしまったんだ。
案の定、私はあっさり君に見つかった。
でも、私を見つけたときの君の顔は今でも笑えるくらい泣きそうな顔してたよ。
私はその顔を見て君を馬鹿にしたね。
会って数時間しか経っていない私を必死に探すなんて信じられなかったからだ。
この時私は君を馬鹿にしていたけれど、この時はじめて君の優しさに打ち抜かれいたんだって今では思うよ。




