37 価値観はひとつだけじゃない
私たちの不安はよそに、キャリーさんは本当に学校のある場所に連れてきてくれた。
「どうしたの。二人共そんな驚いた顔して。ここがあなた達が通う学校よ。」
「いや、あの…」
「ごめん!俺たちキャリーさんの事信じてなかった。半分売られるんじゃないかって疑ってたんだ。」
「ちょっと、カイト!」
「あははは!あなた達私のこと疑ってたの?ごめんね、もっと信じられるまでちゃんと話せばよかったわね。」
「いや、なんかごめんなさい…」
「いいのよ、気にしないで。さあ、二人共荷物を持って早く降りて。」
私たちは恐る恐る車から降りて、改めてびっくりした。
そこは今まで見たことがないくらい立派なお城のような学校だったからだ。
後から知った話だけれども、連れてこられた学校はブリランテ校と言う世界的な名門だったらしい。
そんな名門に何故私たちが編入できたかというと、ナポルスキーさんを始めとした軍の幹部の推薦と学力テストをパスできたからだ。
今までナポルスキーさんを含めた鬼教官達の理解するだけでもやっとな講義に必死で食らいついたおかげで、基本的な学問は一通り理解できていたみたいで、意外と無駄じゃなかったみたいだ。
そうでなければ、元軍人の孤児なんて受け入れなかっただろう。
この時ばかりは、昔ナポルスキーさんの言う通りしっかり座学も勉強しておいてよかったなと思った。
「全寮制の学校だから、寝る場所も食事もあるから安心して。あなた達はこれから目一杯学ぶのよ。」
学長への挨拶を済ませたあとキャリーさんは私たちに労いの言葉をかけてくれた。
「キャリーさんありがとう。でもなんで私たちにここまでしてくれるの?」
「そうだよ、俺らが勉強したってキャリーさんに金なんて入らねーじゃん。」
「そんなことないわ、あなた達みたいな才能ある子を埋もれさすことこそ、世界にとってマイナスなのよ。それにあなたたちが活躍してくれれば私の将来の評価も上がるしね。」
「ちぇ、そっちが狙いなのかよ。」
「でも、そんな未来のことわからないじゃん。」
そう言うとキャリーさんはやれやれと行ったポーズで、私たちの頭に手を置いて言った。
「あなたたちが思っているほど世界は冷たくないの。必死に生きようとする子供を見たら、助けたいと思うのが大人なのよ。エイもカイトも今までいっぱい辛い思いをしていたんだから、そろそろ幸せになってもいいの。だから、いっぱい学んで幸せになりなさい。」
そう言って私たちを抱きしめてキャリーさんは車を走らせていった。
「あんな大人もいるんだね…。」
「だな、キャリーさんのためにも頑張らないとな。」
「うん!カイトもいるし大丈夫だよ」
私たちは互いに頷きあって、明日から通う学校の寮に戻っていった。




