36 新たな一歩
「がっこう?」
その言葉を聞いたとき私とカイトは二人揃って首を傾げた。
「がっこうってあの学校のこと?」
「俺たちまたどこかの工場とかで働くんじゃねえの?」
そんな疑問をどこかの国際機関から来たというボランティアのキャリーさんに投げかけていた。
「違うわエイ、カイト。あなた達のような子供は今まで沢山辛い目にあってきたでしょう。だから少しでも元の生活に戻れるように私たちはサポートするの。でもあなた達だけ元いた場所に帰ることを拒否したでしょ。だからといってそのままにはしておけない。だからせめて普通の子供たちと同じように学校に言って学べる環境を提供したいの。」
「そうは言ってもキャリーさん。俺たち今まで何も勉強なんてしてきてないぜ。」
「そうだよ、武器の使い方とか作戦の立て方とか戦うために必要なことしか勉強してきてないよ。学問っぽいことと言えば距離の計算とか地政学とか爆弾とかに使われてる化学や物理くらいしかないし・・。」
「それだけできていれば大丈夫よ。あなた達結構優秀だったらしいじゃない。きっと飲み込みも早いはずよ。」
「けれどもなあ…。いきなりそう言われても理解が追いつかねーよ。」
「そう思う気持ちはわかるわ。でも考えてみて。あなた達の知らないことをたくさん学べるのよ。それに努力すれば何にだってなれる。」
「何にだってなれるの?」
「そうよ、エイ。あなたが努力さえすれば何にだってなれる。だってあなた達まだ若いもの。」
話が上手い具合に進みすぎている気もしたけれど。私たちはこの話に乗ってみることにした。
どうせ、乗っても乗らなくてもどっちでも苦労するのは目に見えているからだ。
それにナポルスキーさんにこの話を相談しに行ったときも、学校に行くことを勧めてくれた。
今まで付いていったナポルスキーさん言うならということで私たちは最終的にキャリーさんの上手く出来すぎた話に乗ることにした。
数ヶ月前まで戦場で銃を撃っていた私達が学校に勉強しに行くことなんて考えられないことだった。
多分一人だったらこの決断はできなかっただろう、でもカイトがいたから、ずっと一緒に戦ってきたカイトがいたから思い切って決断できた。
もしかしたらキャリーさんの話が嘘でまた売られるかもしれないっていう恐怖はあったけど、カイトと一緒ならなんとかなる気がした。
「またこれからよろしくね、カイト。」
「おう、まあなんとかなるだろ。」
「そうだね。だって私たち戦場の中生き抜いたんだからね。」
「だな。あそこより怖いところなんてそうそうねーよ。」
私たちは苦笑いをしながらキャリーさんの車に乗って学校があるらしい土地に向かった。




