35 君がいないならなんだっていいや
ここ数週間で私たちを取り巻く状況は目まぐるしい勢いで変わっていった。
今までのごたごたが嘘だったかのように、私たちが参加していた内戦は収束して新政府が生まれようとしていた。
同じことが繰り返されないように、国外の協力組織も入り混じってこれから国をどうするかっていう話し合いがされていた。
元々この国の出身じゃなく、人身売買でここにやってきた私からしたらこの国の行く先なんてどうでもよく興味もなかった。
ただ、人身売買で売られてきた子供が戦ってたっていうのは少なからず問題になっていたらしくその恩情として私たちにはそれぞれが望む恵まれた環境が用意されるようだった。
自分の故郷に帰りたいと言ったものは帰るだろうし、故郷がないと言ったものはどこかの孤児院に入ることになるだろう。
だが、元々孤児院にいた私はそれも嫌だったのでどうしたものかと考えていた。
「ルーク、よかったね。これでお母さんと妹に会えるじゃん。」
「おう、お前も元気でやれよ、エイ。」
「うん、どうなるかわかんないけどね。」
「そうだよ、俺が出発する前にそれを聞きたかったんだ。お前らこれからどうするんだよ。」
「うーん、私は孤児院に入るのも嫌だし、かと言って故郷に帰る気もないからなあ。またストリートチルドレンみたいなことして生きていくよ。」
「エイがそうするなら、俺もそうしよっかな。色んな所旅するのも楽しそうだしな。」
「いや、カイトは帰りなよ。そんなに甘くないよ路上生活。私はいざとなったら体売るなりして稼げるけどカイトは男だから、またしんどい肉体労働させられるよ。」
「そんな事言ってる奴一人で行かせられるわけねーだろ!お前ほんっとそういう自分に無頓着なとこ変わらねーよな。」
「いいじゃんカイトには関係ないじゃん。」
「まーまー!二人共そんな事言わずに!エイももっと自分を大事にしろよな。お前黙ってたらそれなりになるんだから、自分を安売りしちゃいけねーよ。」
ルークが仲裁に入ってくれたおかげで私たちは喧嘩をせずに済んだ。
こんな呆気ない形で終わってしまった戦争だけれど、辛いことだけじゃなかったのは確かだ。
ナポルスキーさんという上官に色んなことを教えてもらって、世界の広さを知った。
苦しい訓練を積むことで努力の大切さを学んだ。
そして何より大事な仲間が出来た。
戦場という非日常的な空間にいたせいで、自分を必死に守ろうとして思い込んでただけかもしれないけれど全てを失ったわけじゃなかった。
だから、大丈夫。生きることを諦めなければ私は生きていけると思った。
絶望の中でも光を見つけることができるとわかった。
「でもさー、俺たち本当にどうなるんだろうな。路上生活するつってもそんなの大人が許さねーぜ。あいつら掌返したように、訳のわからない正義感で孤児院に入れって言ってくるぜ。」
「確かに…うーん、どうしようか。」
「困ったもんだな、お前やりたいこととかねーの?」
「やりたいこと…か。特にこれと言ってないけど、知りたいことはいっぱいあるよ。」
「知りたいことってなんだよ。」
「うーん、はっきり言えないけどこの世界の状況?的なこととか…」
「なんだよそれ、訳わかんねー。」
「うん、私もよくわかんない。だから特にやりたいこともないんだよなー。」
私たちはそんな会話をしながら真っ暗な空を見ていた。




