32 君がいなくたって大丈夫
あれから5日が経った。
私の怪我は治ったのに、まだ待機命令が出ている。
いっそのこと戦場に戻してくれればいいのに、そうすれば全て忘れられるのに。
そんな事を思いながら、私は訓練を再開しようとしていた。
あの日からカイトにも会っていない。
きっとカイトは私のこと憎んでるんじゃないだろうか。
そう思うと彼に会うのも億劫になった。
そんな鬱蒼とした気分を晴らそうと、私は射撃の訓練場に向かおうとした。
「エイ!」
遠くから呼ばれた気がした。
振り向くとカイトがいた。
会話をどう切り出せばいいのかわからなくなって、立ち尽くす私に向かってカイトは歩いてきた。
「もう怪我は治ったのか。」
「うん…」
「お前は大丈夫なのか。」
「うん…」
「リズが死んだのはお前のせいじゃない、だからしゃきっとしろ。」
「え…」
「お前だってリズだって俺だってここにいる以上、死ぬことを覚悟している。そうなってしまうのは誰のせいでもないんだよ。」
「そんなこと…」
「だって、俺たちだって殺したくて人を撃っているわけじゃないだろ。そう思わないと生きていけないんだよ。」
「言ってることわけわかんないよ…」
「俺だって訳がわかってないさ、でも誰かのせいって片付けられるほど軽い覚悟で戦ってないだろ。だから俺たちは生きなきゃいけないんだよ。リズがいたってことを忘れないために。あいつの覚悟と一緒に戦うために。」
「何言ってるかわかんない。」
「分かんなくていーよ。エイは絶対死なせないから」
「カイトがそう思ってたって、私だっていつ死ぬかわかんないじゃん。」
「うるさい、俺が死なせないって言ったら大丈夫なんだよ。」
「さっきから言ってることめちゃくちゃだよ。」
「うるせー、黙って俺を信じとけ。」
カイトといるといっつもこうだ。
言ってることはめちゃくちゃなんだけど、元気づけようとしてくれてることは分かる。
ここじゃ立ち止まってちゃいけない。進むか死ぬかの世界なんだから。
でもこうやって隣で小言を言ってくれる仲間が居るうちは、まだ戦える。生きることを諦めずにいられる。
「ありがと。でもね、約束して。」
「なんだよ約束って」
「カイトだけは死なないでね、私も死なないから。」
「おう、当たり前だ。」
この約束にきっと私は何度も救われるだろう。
ライとの思い出と同じように、この約束があるから強くあろうとするだろう。
大丈夫、ちゃんと私は自分の足で戦える。
そう信じて私は射撃場に向かった。




