31 何故心は痛むのか
基地に帰った頃には背中のリズは冷たくなっていた。
雨のせいなんかじゃなかった。
血まみれの私と冷たくなったリズを見てナポルスキーさんは苦い顔をしていた。
怒るわけでもなく、悲しむわけでもなく無表情でタバコを吸っていた。
「それで、成果はどうだったんだ。」
「ごめんなさい、配置くらいしかわかんなかったです。敵兵の数も、装備もわからなかったです。」
「そうか…、お前今日はもう休め。そしてその怪我治すまで戦うな。」
そう言ってナポルスキーさんは部屋から出ていった。
私は自分が少し怖くなった。
リズが死んだというのに、淡々と報告をしている自分が。
もっと悲しんで泣き叫ぶと思っていたのに。
報告して自分の部屋に戻ろうとしたところにカイトが血相を変えて走ってきた。
「おい、エイ。どういうことだよ、なんでリズが…なんで…」
「ごめん、私のせいだ。」
「何があったんだよ、嘘だよな。あいつが死ぬわけないよな。冗談だよな。」
「ごめん…」
何も言葉が出てこなかった。
目の前のカイトが泣いているのに私は涙一つも出てこなかった。
こんなに人って冷静でいられるものなのだろうか。
「ごめん、今日はもう休むね…じゃあ、また明日…」
「おい、待てよエイ!」
そう言って涙を流すカイトを背に私はベッドに戻った。
戦場で仲間を失うなんてことは日常茶飯事だった。
だから、きっと、何日かしたら忘れる。
今までもそうやって来たじゃないか。
だから、きっと少し休んだらまた戦える。
もしかしたら次に命を落とすのは自分かもしれないじゃないか。
そう自分に言い聞かせて、寝ようとしたが眠れなかった。
眠れない理由はわかっているくせに、わからない振りをしている自分がいた。




