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次はきみが笑う番だ  作者: odd
3章 君を忘れる
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25 闇を切り裂く光の矢

その日は、出撃命令がなかったので上官のナポルスキーさんの講義を受けていた。

戦地に来て半年、たくさんの仲間の死を見てきた。


同じ時期に連れてこられた40人くらいの子供たちの中で、生き延びたのは私とカイトを含めて5人だけだった。

人の死に慣れきってしまった私が、戦場で人間らしくいれたのはカイトのおかげだった。

きっと、彼がいなければ私は心を無くしていただろう。生き抜こうと思わなかっただろう。

戦場で私とカイトが生き延びることができたのは、絶対にこの場所から抜け出すという約束があるからだ。



そしてもう一つ、私とカイトが生き延びれているのはこの鬼のような上官ナポルスキーさんのおかげでもある。彼が真剣に私達に戦い方を叩き込んでくれたから、私達は生きることができた。


ナポルスキーさんの経歴はよくわからない。

でも私達と同じように幼い頃から軍隊にいて、叩き上げのスキルと経験で軍の幹部まで上り詰めた逸材らしい。

そんな人だからこそ、同じ境遇の私達に少しでも生き抜いて欲しいと思って厳しくしているのだろう。そうしないと、この場所では生きていけないから。



ナポルスキーさんの訓練は毎回吐くほどハードだ。むしろ、実際の戦闘よりもきついかもしれない。気を抜けば大怪我するし、怒鳴られるし、今思い出すのも嫌になるような罰を受ける。

これだけ厳しいと彼の訓練についていけない者が大半だった。そうなると、部下たちは彼の元を去って違う上官の元で作戦に参加して死んでしまう。

そんな状況を見ているからこそ、ナポルスキーさんは厳しくしてしまうのだろう。



また、訓練は身体を動かすものだけでなく座学も徹底的に叩き込まれた。

その日の講義内容は戦争学だった。

実践的なものじゃなくて、戦争の起こった歴史的背景とか国家間のパワーバランスとか概念的なものが大半だった。

ちなみに、この他にも座学では数学とか化学とか気象学、天文学といった事も教えてくれる。

実戦で役立つかはかなり微妙だが、ナポルスキーさんはこういうことこそ大切だと言って私達に教えてくれた。



それでも納得いかない私たちは、講義が終わったあとナポルスキーさんのところへ行った。


「すみません、上官ちょっといいですか?」

「なんだ、お前らか。明日も訓練あるんだから早く寝ろよ。」

「質問なんですけど、なんでもっと実戦的なことを教えてくれなかったんですか?私達の役目って最前線で盾になって戦うことですよね?」

「そうっすよ、武器の使い方とか戦略的なこととか実戦に役立つものだと思ってたのに。」


私達の質問を聞いてナポルスキーさんはため息をついた。


「まったく、お前らは…。いいか、自分が何のために戦っているのか考えろ。」

「何のためって言われても、私連れてこられただけなんですけど。」

「俺も、口減らしに売られただけだし。」

「じゃなくてだな、この戦争が何のために起こっているかってことだ。それを知らなければ、いざという時正しい判断ができなくなる。戦局を読めなくなる。戦場ってのは訓練通りにはいかないだろ。」


この言葉を聞いたとき私とカイトの頭の上には間違いなく、はてなマークが浮かんでいただろう。

それを察したナポルスキーさんは続けた


「例えば、敵に捕まった時にお前らを助けるものはなんだと思う?」

「武器!」「援軍!」

「違う、それはお前たち自身だ。

お前たちが窮地に陥ったとき、それを脱するためにどうするか考えるだろ?そこで生まれた知恵こそがお前たちを助けるんだ。目の前の敵と交渉したり、戦ったり、逃げたりするときにどうするか考えるだろ?

武器を利用するのか、地形か、その日の天気か、敵との距離か、何が利用できるか考えられる事が重要となってくる。

その考え抜く力と知識こそがいざと言うときお前たちを救うんだ。そして今さっき俺が教えたことは、考えるときの大事な材料となる。」



それを聞いたとき、なんとなくだがナポルスキーさんが戦場で上り詰めた理由がわかった気がした。

ナポルスキーさんは誰よりも遥か先を見ていた。

とりあえず、この人を信じて戦ってみよう。私はそう決めた。

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