23 明日よ、どうか来ないで
どうやら私達の仕事は最前線に立って、敵の的になることらしからった。
上官のナポルスキーさんからそれを聞いたとき私はまだ戦場の恐ろしさを知らなかった。
次の日から文字どおり地獄のような訓練が始まった。
訓練はキャンプを張っている荒野の近くの岩石地帯で行われた。
昼は灼熱の太陽が照りつけて、夜は昼の暑さが恋しいくらい寒い。そんな過酷な場所だった。
銃器の使い方からはじまって、キャンプの張り方、サバイバルの仕方、体づくり。
気を抜いている暇なんてないくらい目まぐるしいスピードで知識と技術を呑み込むことを要求された。
ハードすぎる訓練についていけないものもたくさんいた。
かくいう私も、何度も吐いて泣いた。体の小さい私には重い銃器を持って臨む訓練は厳しすぎた。
訓練に耐えかねて倒れる人が続いていたある日、私は初めて同じ境遇の仲間と話した。
「お前中々やるな。歳は俺と同じくらいだろ?俺はカイト。お前の名前は?」
話しかけてきたのは私と同じ黒い髪と目を持つ少年だった。
運んでくるトラックに乗ってなかったので、別の場所から来たのだろう。
「私は…、エイ。」
「エイっていうのか、俺のことカイトでいいよ。それにしても何でエイはこんなところいるんだ?」
いきなりこんなことを聞くなんて無神経な奴だと思った。
でもいつ死ぬかわからないし、私は今日を乗り越えることしか考えられなくなって全てがどうでもよくなっていた。
「治安の悪い所で遊んでたの。そしたら偶然人身売買の業者に見つかってそのまま連れ去られたの。」
吐き捨てるように言った。
「へぇ、捕まったんだな。俺は家の口減らしに連れてこられたんだよ。」
「そうなんだ、お互い散々だね。」
「でもさ、絶対こんなところ出てやるんだ。そして絶対やりたいことできる世の中にするんだ。」
「やりたいことって何?」
「さあね。まだ決めてない。でも好きなように笑って、好きなことをして、笑って人生楽しかったって言える人生がいい。」
「そっか、なれるといいね。」
正直この時私はカイトのことを馬鹿にしていた。
やりたいことなんてやる前にきっと死んでしまうんだから。
銃弾が飛び交う最前線に毎日立って生き延びられるわけがない。
馬鹿みたいなこの話に救われることなんて夢にも思わずに、私は彼の話を適当に流した。
「あーあ。寝たらまた訓練かあ、明日もよろしく。」
「当たり前だろ、絶対明日も生きぬいてやるんだ。」
戦場で生きる私達にとっては1日を生き抜くことが何よりも重要なことだった。
明日なんてこなければいいのに。
寝てしまえば、再び太陽が昇ることを恐れて眠れない日々を過ごした。




