21 今すぐ君を忘れよう
気づいたら私は船に乗せられていた。
なぜわかったかというと、単純に地面が揺れていたのと部屋に窓がなかったからだ。
どうやら、私は捕まってしまったらしい。
もうジェイさんがいるあの暖かい家にも、大好きな友達がいる学校にも、ライの元にも帰れないとおもうと自然に涙が出てきた。
そして、未来が全て真っ暗に見えた。
船には私と同じように売られてきた子供たちがたくさんいた。
ざっと見回して、ライの姿がないことを確認できて私は安心した。でも少しだけ寂しかった。
ここにいる子供たちは泣き叫ぶこともなく、暴れることもなく皆ただ呆然としていた。
まるで人生を諦めたみたいな表情をしていた。
いっそのこと舌でも噛み切って、私の人生を終わらせようとも思った。
けれど、ライが助けてくれたこの命を捨てる勇気は私にはなかった。
考えもなしに、ライを逃がすための囮になって捕まったのはいいけれどこれからどうしようか全く考えていなかった。
近くに座っていた女の子に、「どこに連れて行かれるのか知ってる?」と尋ねても力なく首を横に振られるだけだった。
昼は馬車馬のように働かされ、夜は交代で見張りをするためまともに眠れず、必要最低限の食事しか与えられなかった地獄の航海生活で倒れる子供もたくさんいた。
そうなってしまったら海に投げられておしまいだ。
私達の命に何の価値なんてない。
そんな航海を3週間ほど続けていると、やっと陸地についた。
私はついに自分が売られるのだと実感した。
自分が売られるのは売春宿だろうか、それとも金持ちの奴隷としてだろうか。
知ったところでなにも変わらないけど、聞いてみた。
船を下りるとき私は勇気を出して声をかけた。
「ねぇ、おじさん。一つだけ聞いていい?」
「なんだ?質問によってはお前をここに沈めるからな。」
「ごめんなさい…。でもどうしても知りたいの。私今からどこへ行くの?」
「そんなの知ってどうするんだよ。」
「どこ行ったって変わらないのは知ってる。知りたいだけなの。売春宿?金持ちの玩具?私どこに売られるの?」
「それならまだマシなんだがな…」
私を売ろうとする男はニヤニヤ笑ってこういった。
「お嬢ちゃん、お前の行く場所は戦場だ。」
そう言われたとき、私はライを忘れる覚悟をした。




