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危険

次の日、僕たちは飛ばした。何をどう思ったか、どうしてか早くサミュエルのお母さんに会う決着をつけたかった。


だから、夜もそのまま深夜走行のバスに乗っていくつもりだった。


イリノイ州スプリングフィールドについたのは夜中の1時もすぎた頃だった。30分…次のバスが出るまでに時間があった。


お手洗いに出たのが失敗だった。


僕たちは、たちのよくない連中に目をつけられたのだ。僕の外見が日本人だから旅行者と間違われたのだろう。お金をもっていると思われたのだ。


トイレを出たところで後ろから声をかけられた。


「おい、オマエ!金を置いていけ!」

相手は銃を持っているような気配がした。後ろは見れない。

サミュエルは30メートルくらい向こうにいた。


「OK… 財布はバッグの中にあるんだ」

「ゆっくりと下ろして、こっちに投げろ。後ろを向くな!」

2人、3人? いや、2人までだ。


肩からリュックをゆっくりすり下ろす。‥‥そのまま急に後ろに向いて僕は1人に向かってバックを下から投げつけた! 同時にもう1人の足をひっかける!もんどりを打って1人はひっくりかえった。


「うわっ!」

「Shit!何しやがる!」


僕はそのまま彼らの後ろに逃げた。幸いなことに銃は持ってないのか撃ってこない!


「待て!」

自分たちの後ろに逃げられたのが、意外だったのか、追いかけてくるのに時間がかかった…ように僕には思えた。


そのまま僕は暗闇の中を走った。


はぁ、はぁ、はぁ、はぁ


サミュエルはきっと気づいただろう…


どうしようか…?バス停に戻るのは危険だろうか?

物陰に隠れながら僕は考えた。


何となく嫌な気配だ。あの二人はこのあたりに詳しそうだし、深夜バスの旅行者を狙う常習犯みたいだ。もし仲間なんか呼ばれたら大変だ。


僕は通りに出た。


少しでも人に紛れたかったからだ。でも夜中の1時すぎに、ダウンタウンの通りにいるのは酔っ払いや麻薬中毒者のような人間ばかりだった。


今にも何かされそうな緊張感に耐えながら僕は通りを走った。こんな時ほど人を惹きつける僕の容貌をうらむことはない。


パン!パン!


その時銃声が鳴った。


振り向くと、右後ろの通りで黒い影が呻いている。


「タクミ!」

「サミュエル?!!」


どうやらサミュエルが撃ったらしい。うずくまっている影はさっきの男のうちの1人みたいだ。


「逃げるぞ」

「うん」

「こっちだ!」

「えっ」

「これに乗れ!」


男が乗っていたと思われる車がそこにあった。サミュエルと僕は乗り込んだ。


どこで覚えたのかサミュエルは車を急発進させてダウンタウンを横切った。


「このまま街を出るぞ!」

僕たちは夜の街をぶっ飛ばした!!!


「えっと、えーと、そのまま通りを出たら南下して!インターステイトに出る!」

「南下?どっちだ!」

「うーと、左!」


標識を見ながら、記憶の地図をたぐり寄せる。地の利がない場所では大通り、大通りと道を辿っていくしかない。


ST LOUISセントルイス


この文字の標識を見てやっと僕たちは息をついた。


「サミュエル、運転できるんだ」

「まあな‥ タクミだってもう仮免取ってるんだろ?」

「いや、僕はまだだよ‥」


「…大丈夫?」

「オレの腕は確かだぜ」

確かにサミュエルは運動神経は抜群だし、運転もうまかった。だけど僕は色々と心配になってきた。


「オレが銃を持ってたのが気に入らないのか」

サミュエルが僕の心を読んだように言った。


「いや、そんなことないよ。さっきは本当に危なかったし… サミュエルが助けてくれなかったら僕は今この世にいなかった」

「…親父の銃‥持ってきたんだ」

「…」

「オレは撃ったことを後悔してない!オマエは絶対に守るんだ…そのために人を殺しても構わない!」


きっと結んだ薄い唇にサミュエルの決意が現れていた。僕は急に泣きそうになった。


「…ごめん…」

「あやまるな」


こんなに広い世界なのに、僕たちは暗いハイウェイをどこまでも走るだけなのに、僕はすごく嬉しかった。





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