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金色のひかり

少年刑務所に送られて、1ヶ月ほどたってやっと面会が出来るようになった。夏休みも終ろうとしていた。


弁護士のロバートソン、Mrアキヤマ、母、そして僕。母はこの間日本とロスを何度も往復していた。仕事が忙しい様子だった。


カフェテリアで会えるようになっていた。開放的な雰囲気に少し驚いた。



「お忙しいところありがとうございます」

サミュエルは少し痩せたようだったが、顔立ちはスッキリとしていた。ちょっと大人になったように見えた。


ひと通り近況やこれからの状況を話してから、僕たちはふたりにしてもらった。


母とアキヤマはロビーで待っていた。



「Hi!少し痩せたんじゃないか、タクミ」

「サミュエルだって‥ ここのご飯おいしくない?」

「ああ(苦笑) 確かに… でもジャンク(フード)抜けして丁度いいよ。」


さわさわさわ‥‥ 少し伸びた金色の前髪がサミュエルの睫毛の上を泳いだ


「‥‥もう、来るな‥」

サミュエルは何の感情もこめずに言った。


「もう、ここへ来るな、タクミ…」

「‥‥‥‥‥」


僕は予感していた‥

きっと今、銅像のような顔をしているのだろう。


「オマエのそんな顔を見るのはたまらないんだ。」

「ふふ‥」自嘲気味に笑った。

「‥‥そんな‥女神のような顔で微笑まれたら、たまらない‥」

「?」


「最初に会ったときはびっくりした。オーロラ姫は本当にいるんだと思った。でもオーロラ姫はなぜかオレと同じBoyでしかも何でも出来るスーパーマンだった」

「‥‥‥」


「オレは困った… 高嶺の花のオーロラ姫といられるのは本物の王子だけだから。‥‥でも‥オレは王子にはどうしてもなれなかった‥つらかったよ‥」

「‥‥サミュエルは‥‥」僕は口を開いた。


「気付いてないかもしれないけど‥‥サミュエルは王子だったんだよ」

「?」

「僕もロイもディビットもどうしてサミュエルについていってたと思う?どうしていつもリーダーだったと思う?柔道教室でヒーローだったのは誰だと思う?


エリックたちとケンカして負けても負けても最後に勝ったのはなんでだと思う?僕を守るため人を殺してもいいと思ったのはなんでだと思う?」

「‥‥‥‥」


「Mrアキヤマが親がわりになってくれたのは何でだと思う?」

「‥‥‥‥」

「みんな、みんなサミュエルが皆に優しかったからじゃないか?弱いものを守って闘ってきたからじゃないか?」


サミュエルは泣きそうな顔になった。


「サミュエルは王子の種をちゃんと持ってるんだよ」

僕は彼から目をそらさなかった。


「僕たちはまだまだ子どもなんだから成長する。その成長の速度はきっと色々なんだ。一部とって僕と比べたってそれは意味のないことなんだ。


僕といてひけめを感じるなら、そのひけめを上回くらいサミュエルのいい所を伸ばしていけばいいんだよ」


「‥‥でも‥ オレはローラに‥」

「‥‥‥」


僕はひと呼吸した。


「聞いてると思うけど‥‥僕とローラは何もなかったんだ」

彼は小さくうなずいた。

「…オマエとSEXしているローラとSEXしたかったんだ… どうしても…」

「‥‥‥」


喉がつまるような甘い気持ちが僕の中から湧いてきた。



僕とサミュエルが直接的な関係になれないのは、お互いの性嗜好セクシュアリティのせいなんだろうか?


SEXできれば、ラクだったね‥‥


未熟すぎて僕達の性はまだまだ分からないことばかりだ。。。


「また、会おう‥‥」

「来るなよ」


「違うよ… もっと大人になったらさ。そしたら僕たち2人でSEXできるかもね。もっとも僕がおっさんになってたら、ゾッとしてサミュエルは逃げ出すだろうけどさ(笑)」

「タクミはならないよ‥」


ならないよ。言葉には出さなかったけど、そう決意した。




「はい」


僕は"星の王子さま"をサミュエルに手渡した。


「これ、サミュエルにあずけておくよ… あの木の前で話したこと、忘れないで」


震える手で受け取ったサミュエルに、僕はにっこり笑って席を立った。


そして、そのまま彼から立ち去った。


「タクミ!」

サミュエルは立ち上がって叫んだ。


「バオバブに似たあの木‥背中を合わせて話した時間、オーロラ色の星空‥ オレは忘れないから!」


「僕も。僕も同じ本を読むたび…金色の星をみるたび…サミュエルの金髪を思い出すよ」


振り向かず、後ろ手に振って僕はカフェテリアを出た。







さよなら、ロサンゼルス


僕は日本へ飛びだつ。


もっと強くてたおやかな人間になれるように。

母さんのようになれるように。


―でも


忘れないよ。サミュエルと過ごした時間。


僕たちは、あの時間の宝物をもっている。それは確かなんだ。ほら、金色の町の光が僕の下にひろがる。


それは、サミュエルの髪の色だ。彼の心の色だ。


どこにいても僕はこの光の色をみると、君を思い出すんだ。


(完結)



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