愛と憎
激しいローラへの嫉妬に苦しんでいた僕の気が変わったのは、事件後のローラを見てからだった。
彼女は完全に打ちのめされていた‥
ご飯も食べない、水も飲まない、返事もしない、ただ点滴をしてベットに寝ているだけだった。
廃人のようだった
僕は涙が止まらなかった‥
「これがレイプということよ」
母さんが僕に言った。
「確かに彼女の行動には問題がなかったとはいえない。……けど、これほどヒドイ目に合うようなことはしてないはずよ‥ サミュエルは彼女を殺したのよ…」
「‥‥‥」
僕は何も言えなかった。
「レイプはね‥ 性欲だけでするんじゃない、と言われているわ。それは拓己は分かってるわよね」
僕はうなずいた。
「社会への復讐、とも言える。一番征服しやすい女性をターゲットとする卑劣な行為なのよ。‥‥‥ここからは本人たちへのカウンセリングになるけど、サミュエルはまずローラに対して元々性的な興味を持っていた、第二に父親からDVを受けていた、第三に母親の愛情の希薄さ、飢え、これは今回の事件に大きく影響している」
「そうなんだよ!サミュエルはお母さんに復讐したかったんだよ」
「それだけじゃないでしょ、そんな単純じゃないでしょ!?」
僕は黙った。
「あなたよ!拓己!」
「え?僕?」
「あなたも関係あるのよ!」
僕は何のことか分からなかった。
「あのね… サミュエルはあなたが好きなのよ。でもあなたを憎んでもいるの」
「僕を?」
「分かるでしょう?あなたは一番近くですべて持っているでしょう?それをサミュエルがどう思っていたか分かる?」
「……」分かる。バンドを組もうと言った僕をあんなに責めた彼の悔しさ。
「今回の旅でサミュエルの心はまっぷたつに分離してしまったの。あなたを愛している、けど憎んでいる。この不安定さ!」
「‥‥でも‥ それは‥」
「そんな時にローラが来て"タクミと私は何回も寝たわ"と言われてごらんなさい」
!!!!!!
「じゃあオレともしろよ、となっても不思議じゃないの」
そんな嘘をローラは言ったのか?
「‥‥むずかしいわ‥‥ 今回のケースは。サミュエルの心が分かるだけに… 彼のセクシュアリティもね。あと、最後にこれだけ言っておくわ。拓己、サミュエルはきっとあなたと共有したかったんだわ。」
「共有?」
「ローラもね。これは彼の一番のエゴ」
なんてことだ!!!
彼の激しさを思った…
僕は、僕は、どうしたらいいんだろう…