表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
磨いた成果を試すとき  作者: うみたたん
ステファンの章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/56

ルシアンのお願い

ステファンがクロノス学園に転入したばかりの頃です。さらに前の時間です。

クロノス学園に来て、あっという間に一週間が過ぎた。まだ慣れないことも多いけど、寮のことも含めなんとなくわかってきた。


でも、まだこの制服には慣れない。地元の制服は昔ながらの黒い学ランだったから。僕にはあっちのほうが似合っていたと思う。


ルシアンが、ラウンジにいる僕に話しかけてきた。

白のシャツに紺のカーディガンを羽織った彼に息を飲んだ。一週間経っても、毎回初めて見たみたいにドキッとしてしまう。


彼のシャツは、一番上のボタンが開いており、首筋に目がいってしまう。

ルシアンの美しさは今日も圧倒的だった。


『天使』と思った。

初めてルシアンを見たとき、声に出てしまったかもしれない。お告げのような、なにかを感じた。クロノス学園に来たのは、ルシアンに出会うためと思ったほどだ。


こんな美しい生物が、この世界にはいるんだ……と。


「やぁ、ステファン。お願いがあるんだ」


ルシアンから頼まれ事なんて、初めてだった。僕の胸は高鳴ったが、なんでもないように答えた。


「ふふっ。ステファン、またぼんやりしてる」


「え? ああ、なんでもない。考えごとさ。ルシアン、どうしたの?」


「理美容の順番なんだけど、替わってくれない? 今日だよね、ステファン。髪を切るのは」


「うん、そうだよ。替わるのは構わないよ。よくわからないけど、一人空いているからどう? って聞かれた」


「僕、少し毛先を切りたくてね」


くるっとした亜麻色の髪の先端を触りながらルシアンは言った。


「毛先だけ?」


「そう。ステファンは、具合が悪くて横になっていたことにして」


「わかった」


寮生活だと、髪の毛を切る日まで決められている。もちろん切りたくなければ 名前を消せばいいらしい。

僕はここに来たばかりだし、よくわからないので、寮長の言われるがまま理美容に行ってみようと思っていた。


ルシアンは僕の少し伸びた髪を、つぅーと触った。胸の鼓動が早くなった。


僕はおしゃれとか髪型とか全然興味がなくて、いつも短く刈り込んでいた。だから今回もそうしようとしていた。その髪型は別に気に入ってたわけではなかったけど。


「ねぇ、ステファン……君って髪を長めにした方がきっと似合うよ。せっかく赤茶の綺麗な髪……もったいないよ」


「そうかな? 自分じゃよくわからなくて」


「ステファンって、背が高くてスタイルもいいし。髪を長めにしたらモデルみたいになるよ」


ルシアンは上目遣いで僕の顔を見つめ、真面目にアドバイスをした。外見をそんなに褒められたのは初めてだった。


◇ ◇ ◇



夕方、ルシアンが理美容から戻ったけど、全く髪型は変わっていない。


「ルシアン、髪切ったかい?」


「いや、やっぱりやめたんだ。先生に呼び出しくらってさ」


「え?……大丈夫?」


「別に……いつものことでね」


ルシアンは複雑な表情をして、なんとなく寂しそうだった。彼が髪を切りたいから変更したのになぁ、なんて思いながらー


僕は癖で、何気なく前髪をかき上げた。


「ステファン、かっこいい! もう一回、髪をかき上げて」


「はぁ? 髪をこうやるのが?」


もう一度、髪をかき上げる。ルシアンはため息をついた。


「いいね、すごくいいよ。なぁ、ステファン。君はこれから自分のことを、俺って言ってみて」


急にルシアンは腕を組んできた。腕を伝って、心臓の音が聞こえてしまいそうで怖い。


「俺? いやいや。僕はそんなタイプじゃないよ」


「いや、ステファンはカリスマ性がある。俺って言ってほしいな」


「そんな……恥ずかしいよ。急に変えるのも、なんだかおかしいし」


「そんなことない。ステファンは来たばかりだから誰も気にしないよ。もっとクールな感じにいてほしいな」


そんな……無茶なことを言う。


「あまりおどおどしないでさ。この学園にはリーダーのような存在が必要なんだ」


「リーダー? 嫌だよ、そういうのは」


「いや、役職の話じゃないよ。精神的にさ」


精神的に? 


首を傾げていると、落ち着いて何事にも動じないでいてくれたらいいんだと……。


「あとは髪を少し伸ばして。僕みたいにね。そうしてくれたらさ、デートしてあげるよ」


「デート?」


「週末一緒に出かけよう」



それから僕は髪を伸ばし、自分のことは『俺』と言うようになった。できるだけ喜怒哀楽を出さずに、落ち着いた態度でいることを心がけた。


こうして俺は、少しずつ変わっていった。



前はステファンは『僕』だったようです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ