エリオvsシドフ 2
ステファンの語りです。
医務室にいる三人。ステファン、エリオ、シドフ。
寝てしまったステファンを挟んで、シドフはエリオにマウントをとっていたが……。大好きなステファンのことになると譲れない二人。
こちらは一章のステファンとエリオと……と同じシーンですが、語り手が違うのでまさかそんなことがあったの?となっています。
俺がエリオを嫌いだと言ったこと……。
エリオに絶対言わないって約束だったのに、シドフはあっさりと破った。 だけどエリオは悲しんだりせず、意外な反応をした。
「ステファンがそんなこと言うはずないだろ?」
いまのエリオ?
シドフに歯向かうところ初めて見たな。二人の会話が続いた。
「どうしてそんなに焦ってるの?」
「な、なんだと……」
「僕は二人の邪魔はしないからさ……僕は、ね」
エリオが畳み掛けるように言い返した。強気なエリオも嫌いじゃない。俺にも言って欲しいな。
俺がいないところではこんなふうに喧嘩しているのか?
いや……そうは思えない。きっと今日が初めてだ。
押し黙ったシドフ。もう、完全に負けた感じだ。普段は上から目線だけど、そんなやつに限って反撃されると弱いんだ。
シドフのやつ……またおかしなことを言ったら困る。
俺は場の雰囲気を変えるため--
「メリークリスマス! ……寝てた!」
おどけて俺は起き上がった。この状況は止めないといけない。
「ステファン、何言ってるんだ」
シドフが呆れている。
俺がいないと二人が噛み合わないのもよくわかった。だから俺は結構楽しめた。
「ステファン、シドフ、二人とも戻ってくれない?」
ベッドの中からエリオの苦しそうな声。本当に体調が悪いみたいだ。
「エリオ、ごめんな。ゆっくりしろよ」
俺とシドフは医務室をあとにした。 最後にゆっくりとエリオの頭を撫でた。
最悪の雰囲気のまま、俺とシドフは冷たくて薄暗い廊下を歩く。 一人置いてきたエリオに、後ろ髪引かれた思いがあった。本当に辛そうだった。
すでにエリオに会いたかった。だけど目の前にいるのはのぼせ上ったシドフだ。
こいつ……。
俺が寝ている間にエリオに意地悪をしたせいで、俺まで追いやられた。イライラして髪をかき上げる。 髪をかき上げるのは本当にただの癖だった。
クロノス学園に来てから、髪をかき上げたり、頭をちょっと振るだけでかっこいいって言われる。それが面白くてわざとするようになった。
でも本当にただの癖なんだ。イライラして頭を強く振った。
「ステファン、さっきの続きしてもいいよ」
「あ?」
「もっと僕を触りたいんじゃない? 背中じゃなくて……いろいろ。でも僕は、誰にでも体を触らせるわけじゃないよ」
そりゃそうだろ……節操なくいろんな奴とベタベタしてたら、内申が下がるどころじゃなく、放校だろう?
認められてるのはバディ同士になったやつらだけだ。
シドフ……どうせなら放校になってもらっても構わないのだが。 魅力的はたくさんいるしな。
と言っても、他の奴には今は興味がない。
シドフとエリオとあと…………それくらいだ。二人の共通点はなんだった?
……単純で薄っぺらいところ。でもそれだけじゃなかった気もするが。
ああ……そうか。
俺の手を取って空き教室に誘ってくる。その力は意外と強く、教室に入ってしまった。
「ステファン、こっちに来いよ」
「やめろって!」
「本当はステファンだって、エリオより俺の方が好きだろ?」
俺の手を握るシドフ。その手を自分の胸に持っていく。
「なあ、エリオはつまらないだろ?」
「そんなこと言うなよ」
「ステファン、俺のこと……好きだろ?」
甘えるみたいに何度も聞いてくるシドフ。一つも魅力を感じない。俺は一体何してるんだ。シドフを振り払った。
「痛っ…………エリオのこと嫌いって言ったくせに」
そうだった。それに頭にきたんだ。
「おい、絶対に言わないって約束はどうした? シドフ……エリオに言ったな? さっき聞こえたぞ」
「え? そうだったかなぁ…………あれ? ステファン、起きてたの?」
少しバツが悪い顔をするシドフ。だけどすぐに気を取り直し、企んだ顔をした。
「ステファンこそ、盗み聞きするってさぁ……かっこ悪いね」
かっこ悪いって言葉。俺が好きじゃないこと知ってるくせに……。
「シドフがいきなりキスしてきたからだろ!」
シドフは知らん顔をしていた。そのツンとした顔は、前から気に入らなかった。
「そのことエリオに自慢するとか言って……」
思い出したくもない。誰もいない階段の踊り場で、シドフにキスされた。まだ誰ともキスはしてなかったのに……唇に……。
お前となんかしたくなかったのに。お前なんかと!
せめてエリオがよかった。
いや、本当は--
ルシアンーー
「内緒でいて欲しかったら、エリオなんか嫌いと言えって、言わせたじゃないか! それだけだ」
俺がエリオに傾いたら、切り札みたいに告げ口するとは思ってはいた。
かなり早い段階で使ってるんだな。しかもエリオに反撃されちゃって。ちょっと笑える。急に涙声になるシドフ。
俺を強く抱きしめてきた。
「だってステファン、俺のこと飽きたんだろ? なぁ? ずっと一緒にいたい」
俺はシドフを突き放し、教室には戻らず渡り廊下から外に出た。
「待って、ステファン……ごめん!」
「ついてくるな!」
さっさと中庭に向かった。このコースは運動場に出るときのショートカットで普段は使わない。俺は走った。
お気に入りの場所だ。中庭の奥。
くぬぎの木……。
近道だからと、俺とエリオとシドフは、渡り廊下から中庭を通って運動場に出ていた。
まだ後ろから人の気配があった。
ステファンとシドフが不穏になってます。それでもシドフはステファンの後を追いかけて……。




