PEの時間
新しい章で、最後の章です。驚く結末があります。
ステラの語りです。エリオが転入したときの、スポーツの時間を思い出しています。
フィジカルエデュケーション、略してPEはスポーツの時間。俺の一番好きな時間。
エリオが初めてやって来たときのことは、今でも鮮明に覚えてる。 くせっ毛の男子が、先生と一緒に段差ががたがたの外階段を降りてきたんだ。
足取りは転ばないように必死で、顔も真剣だった。なんだか小さい子供のようでかわいかったな。
紺のズボンは皺一つなく、シャツもパリッとしていた。転入生って一目でわかった。
エリオはPEの時間、フットボールをしてる俺たちのクラスを見学に来た。
だけどうちのクラスの男どもは、ドタバタとボールを追いかけて、鬼ごっこをしてるみたいだった。みんなふざけてるんだ。高い声で笑いながら団子になって動いていた。
フットボールって本来、パスを繋いでいくスポーツだろ。なのに自分がボールを蹴りたいやつらばかりだ。
うんざりした俺は端っこで見ていた。
先生は肩をすくめて、エリオに言い訳してた。
「すまないねエリオ、今日は大目に見てくれ。フットボールをやると、いつもめちゃくちゃで」
運動音痴だと言われてるエリオでさえ、後にこう言ってた。
「フットボールには見えなかったな。ボール遊びをしてる子供みたいだ。でもそこに弾丸みたいに突っ込んできた鋭い目の男の子がいて……髪をかき上げて。かっこよかったな」
そう。俺は髪をかき上げて全力で走り、団子になっている奴らの背後を取り、長い足でボールをかすめ取った。ジグザグに相手をかわして、そして一気にゴール前まで運んでシュート!
嘆きと感嘆が入り混じった声が響く。
「あー、ステファンまた独断プレー!」
先生は呆れてたけど、仕方ないだろ。転入生に舐められたくなかったんでね。
エリオは口をぽかんと開けて、驚いた顔してた。 そして頬を赤くしながら大きく拍手をしてた。
俺は満足した。見学してるソニアがいたから、大げさにカッコつけたんだ。
(実は惜しいところでゴールは外したけど、まぁみんな気にしてなかったな)
数日後、音楽の授業が終わって教室に戻るときーー
シドフが俺の背中に体当たりをした。そしてふざけて抱きしめてくる。
「なぁ、ステファン。あの転入生、ずっとお前を見てたよ」
言われなくてもわかっていた。エリオは俺の動きをずっと追っている。
シドフはニヤついて、エリオに話しかけに行った。意地悪言わなきゃいいけど……。シドフにはそういうところがあるんだ。
でも意外と普通で、学校案内をすることになった。
「ここ、ステファンが前に転んだ場所だぜ」
おいおい。案内って……ただのマウントじゃないか。自分が俺と一番仲がいいと自慢してるだけだ。
「へぇ、そうなんですね」
エリオは素直に相槌を打つ。なんだこいつ……嫌じゃないのか? 無理してるようにも見えない。素直すぎて逆にかわいいな。
◇ ◇ ◇
最初はエリオを見てもピンとこなかった。でも一緒に過ごすうちに、だんだん愛おしくなってきた。 くせっ毛が少し跳ねてピョンとしているところも、かわいく見えてくる。
逆にシドフのキツい態度が鼻につくようになった。俺はすぐ根回しした。次の席替えで、シドフと離してほしいと担任に頼んだ。 ベッタリしてきてしつこいし、俺のノートも勝手に覗くし……なんて、ちょっと盛った嘘もついた。
担任はちょうど俺のこと、気にかけてたって言ってたけど、嘘だろ。いつも生徒をほったらかしだし。席替えの時期すら忘れてたくせに。
俺に指摘され、慌てて二日後に実行したくらいだ。
「エリオが近くにいてよかった」
席替えの後、俺は満面の笑顔で言った。エリオは恥ずかしそうに微笑んだ。もちろん席が離されたシドフは絶望してたな。
今にも泣きそうな顔……。
それを見て、俺はすごく満足した。
◇ ◇ ◇
次の日、昼休みにエリオがお腹が痛いって言い出した。 そういえばずっと大人しかったのは、体調悪かったのか。 席替えで気を使ってるだけだと思ってた。
この後、三人で医務室に行ったのは失敗だった。
二人で行ってれば、違う未来があったかもしれない。それとも結局こうなる運命だったのだろうか?
今でもわからない。
ずっとわからないんだ。
この後、ステラ視点で医務室の話が書かれます。エリオの知らない出来事が起こっています。
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