ステファンの証言
エリオの章はここでおしまいです。
ステファンが証言します。なにか秘密を話してくれるのでしょうか?
《ステファンの証言》
はい? シドフを殺したこと?
後悔なんてしてませんよ。どうして……。どうしてって?
そうですね、ダーウィンの『種の起源』だったかな。知ってます?
ああ、タイトルだけでいいです。タイトル長いですよね。そこに答えがあります。
自然選択? 自然淘汰? 生存競争において有利な者が保存される……種の起源とかなんとか。
自然界で起こる自然淘汰について言ってるんです。人間も同じでしょ?
それで、この学園でも淘汰されたんですよ。
みんなに迷惑をかけて、人に依存して干渉して、人を見下して嘘もつく。
だから俺は彼を淘汰したんです。シドフを。その方がクラスは上手くいくから。
環境によって変わろうとしないやつは、生き残れないんですよ。
シドフがいなくなってほっとしている生徒は多い。実際に先生たちだってそうでしょう? 彼をすぐ転校したことにしたでしょ。
これ、俺だけ罰せられるんですか?
まあいいですけどね。他にも僕の罪はあるし。
ルシアンを外に連れ出したこと? 別に……暇つぶしです。ふふふ。
俺、保健係になったから彼の様子を聞いていて……寝たままでつまらないだろうって。外の風景を見せてあげたくなったんです。
動けないはず? それは俺にもわかりません。あのときは動いたし、歩けたんです。
山の景色を見て、彼は感動してましたよ。寝たままじゃなくて、たまには散歩させてくださいね。
あ、先生を気絶させた……確かに!
あの先生、訴えないって? 本当にすみません。ルシアンのお世話をしてくれている先生たちなのに。
ルシアンとマリオン……ルシアンのほうが大事かって? そりゃそうだよ。彼はクラスのヒーローです。いつも盛り上げてくれて面白くて、そして美しい。
マリオン? 彼には何度か話しかけたよ。でも無視するからね。
声が出ない病気? 知らなかったよ。自閉症みたいな……そうか、それに近いんだ。
でも、マリオンのことは尊敬してますよ。だってティーチャー・パンジーをペーパーナイフで刺したんだから! 何度もね。すごいよ。かっこいいな。
そうだ。その記憶、消されていたんだよ。でも閉鎖病棟に隔離されてから、いろいろ記憶が戻ってきた。
あれかな……俺は瞑想の時間に参加してないからかな。あのお香と音楽とビタミン剤……怪しいですね。それも調べてください。
あとラウンジのキャンディとチョコ……カラフルな紙のね。あれ、なにか入ってたんじゃないかな?
この学園なかなか悪どいな。レイモンド校長、やってくれますよね。
あと違う記憶も思い出したんですけど。話すべきですか?
クロノス祭って女子寮の女の子たちと交流して、年に一度、ダンスを踊ることになってるけど……そもそも女子なんているのかなって。
この間のクロノス祭、たくさんのおじさんがやってきて、ステンドグラスとか買っていって……男の子たちとダンスも踊ったんです。お茶を一緒に飲んでおしゃべりしたり。彼らも嬉しそうにしていたけど。
でもクロノス祭の次の日にはみんな……かわいい女の子たちと踊ったって言ってたんです。俺も含めて。
あぁ、これ……話すべきじゃなかったかな。俺、殺されるとか?
兄を殺したかって? 俺が暴力を振るわれてた? あれは俺じゃなくて、兄貴は恋人を殴ってたんだ。
だから兄が酔っ払って風呂に入ってるときに沈めた。俺がやられるわけないだろう。俺の方が強いからね。
レイモンド? あいつはゲス野郎。死んで当然だよ。最高な死に方だったね!
ルシアンのこと、商品みたいな発言してただろ? 絶対許せない。
ルシアンと踊るのはすごくいい値段なのかな。そんな言い方だったよ。
そう。俺がレイモンドを殺した。
なんで?! どう見たって俺が殺したんだよ。俺が風見鶏を投げたじゃないか。そしてレイモンドの心臓に突き刺さった!
あの距離じゃ無理? じゃあどうするわけ?
もともと風見鶏は朽ちていて、いつ落下してもおかしくなかった?
強風で落ちた……なんだよそれ……。
俺が殺したことにしてくれよ。その方がルシアンも喜ぶよ。
あのとき黒い雨雲が突然できあがり、レイモンドに覆いかぶさったのを数名が確認している……あぁ、確かに。俺も見た。死神みたいな黒い雲……影が現れた気がして。あれはなんだったのだろう?
じゃあ俺の罪は? 俺の罰は?
嫌だよ、閉鎖病棟なんて。せめてルシアンの横においてくれないか?
あぁ……どうして飛び降りさせてくれなかったんだよ。エリオに見せたかった。俺がホバリングできるかどうか……。空中停止のこと。
もしかしたらできたかもしれない。
人間も環境によって進化するんだよ。淘汰されないためにね。
ふふふ。あははははは!
そういえば、幽霊になったシドフが夢に出てきたんです。俺を恨んでいるか聞いたら、恨んでないって。逆にごめんと謝られました。
幽霊になった彼のほうが、憑き物が落ちたみたいで。すごくまともで、魅力的に見えましたよ。不思議だったな。
彼はこう言ってました。
——僕たちは普通の学校で普通に過ごすことのできなかった生徒たち。
精神が壊れ、犯罪者の烙印を押された少年たち。
特別なテストをたくさん受け、この学園に連れてこられた特別な生徒。
喜びも悲しみも、パニックも振動し共鳴し、伝染する……。
クロノス学園サイキアトリク・ホスピタルーー
読んでいただきありがとうございます!!
ステファンの証言はかなり気に入っております。
次回はステファンの章でステファンの語りです。
エリオが転入してきたときに戻ります。
間違えてステラと書いてました(^◇^;)
ブックマークなどしていただけると嬉しいです。最後の章に入ります。




