シドフの解放
地下から解放されたシドフの語りです。
幽霊のオレ、シドフ登場ー!
おいおい、もっと喜んでくれよ。なんだよこれ。
カオスだろ? カオス過ぎるぜ。
地下室に閉じ込められていたオレは、まりかちゃんの機転でやっと外に出られたんだ。
だけど目の前にいるのは大っ嫌いだったエリオ。 鼻につく副代表のニコだ。
「まりかちゃんはどこに行ったんだ? オレの友達で命の恩人だぜ」
エリオに聞いた。
「まりかはステファンを監視に行った。ここに来させないって言って」
「おい、エリオ。お前の妹、まりかちゃんは優秀だぜ。お前とは大違いだ」
「あぁ……そうだね、シドフ。辛辣なのは死んでも変わらないね。なんだか懐かしいよ。あの頃に戻ったみたいだ」
「本当だな。悪かったな、お前に意地悪ばっか言って。てか……なんでオレ、ステファンに殺されたんだっけ?」
なんだか一番重要なところが、オレはわかってないんだよな。エリオがオレの目の前にやってくる。
「シドフ、こっちこそ悪かったよ。それよりステファンが最近不穏な動きをしてるって、まりかは僕に伝えてくれた。着物を着た幽霊になって出てきたんだ」
ニコは口を挟んだ。
「エリオ、さっきの話だが、シドフを最後に見た日……エリオが腹痛で、ステファンとシドフと三人で医務室に行ったんだな? その夜、ステファンが濡れた姿で部屋に立ち尽くしていたのか?」
「うん、そうだよ」
「あぁ……その日のこと、ジャンミンか俺に伝えて欲しかったな」
急にニコがエリオを責め始めた。
「そんなこと言われたって。お風呂に落ちただけかと思ったし。それか池とか……」
「シドフは池に落とされて死んだんだ。犯人に繋がる情報じゃないか!」
オレとエリオは、冷めた目でニコを見た。
問題はそこじゃない……それはニコが一番わかってるはずだ。
「ニコ……学園の失態を子供のエリオに被せるのか? オレが殺されたのに、転校したって嘘ついたのは学園側だぜ。シドフは死んだと正直に言うべきだった。ステファンが濡れていたことや、何か見た奴がいたかもしれないだろ?」
オレは真面目に言った。
「……あぁ、その通りだな。ごめん、エリオ。悪いのはこっちだ。生徒のアリバイすら調べなかった」
最悪な教師たちだな、本当。エリオは首を振った。
「いや、僕たち……声かけずに医務室に行ったのかも。ニコもジャンミンも忙しそうでね」
「そうか……悪いことは重なるな」
「おい、ニコは何をしてこの学園に入れられたんだ? お前のことだけファイルに載ってない」
「……秘密なんだが、俺は監視役の教師だ」
「えええー! こんなチビなのに?」
オレは大袈裟に驚いた。だからか……教師とは相性悪いからな。
「成長が止まっている。なぜかはわからない。本当は25歳だけど、15歳に見えるだろ? 生徒のフリをするのにぴったりなんだ」
マジか……12歳くらいにしか見えないのに。ニコはそっち側だったのか。仲良しのジャンミンもなのか?
いや、母親を殺したって書いてある。
まじか。オレと同じなのか……。
「ジャンミンは知らない。なにか思うことはあるみたいだが……。シドフ、君が殺されたと最近わかってね。でも犯人が見つからなくてイラついていた」
「今さらだぜ。犯人を捕まえたところで、オレは生き返らないし」
「でも野放しにはできない。ステファンだったのか……ここで生徒を殺したんだ、捕まえないとまずい。みんなの安全が第一だ」
「なぁ、ニコ。オレをステファンのところに連れて行ってくれよ」
オレはニコの目の前に、すぅっと移動する。やはり幽霊は怖いみたいで、ニコは硬直した。
「シドフ、復讐するのか?」
「まさか。話がしたいだけ。バディにしてもらえなかったけど、本当に好きだった……ステファンのこと。今は幽霊になって、執着するものがなくて楽になったぜ」
オレはブロンドの髪を触りながら続けた。エリオは静かに言った。
「僕もバディじゃないよ。今はステファンの気持ちがわかるよ」
「……あぁ。それより、地下室は霊を封じ込める力が強力でね。学園が頑丈にオレを閉じ込めたんだ。俺は扉にも触ることができなかった。それで先生たちに開けてもらうことにした」
「おびき寄せたのか」
「まあな。まりかちゃんが図書室にエリオの母親の本を隠したり、極秘のファイルを盗んだ。校長先生か誰かがここの鍵を開けるかもしれないって。まりかちゃんの案さ。さてと……エリオ、ニコ、じゃあな」
「えっ?!」
オレはニコの膝の上に、機密事項のファイルを放り投げた。そしてニコの体を素通りした。冷気が体を貫通したようだ。
「うわっ!」
ニコが肩を震わせた。
「待って、シドフ。仲直りしよう!」
エリオが手を差し出してきた。オレは掴めなかったけど、手のひらをエリオの手に重ねた。ふわっと二人の手が少しだけ輝いた。
「じゃ、楽しませてもらうからな!」
「シドフ! ダメだ。行くな! ここにいてくれ」
ニコが叫んだ。
無駄だよって、エリオがニコに告げている。
オレは準備室の扉をそのまま抜け出てしまった。
あはははははは……。あはははは!
オレは高らかに笑った。
ニコ、オレを止めることはできない。勝手に地下に閉じ込めたのはそっちだろ?
オレだってまりかちゃんみたいに自由になりたい。そうだろ?
シドフも学園に飛び出してしまいました!
まりかちゃん、シドフの幽霊たち、どうなるのでしょう?




