図書室と幽霊 2
エリオの語りです。
図書館に現れた幽霊のまりかと2人きりです。どうなるのでしょう?
殺される? なんで僕が?
「僕が殺される? 僕が何かしたの?」
「今はまだ詳しく言えない。だってエリオ……」
まりかは僕から視線を外した。
「顔に出るだろうし……危なっかしいから」
危なっかしいと幽霊に言われると、ちょっと納得できないけど……。
そのとき、急に人の気配がして振り返った。
「エリオ!」
ジャンミンがこちらへ小走りでやってくる。
「ジャンミン…………」
そして、その後ろにいるのは……。
「……ニコ」
ジャンミンは僕を強く抱きしめる。驚いた。
こんなこと初めてだ。
「あぁ、よかった! 中で倒れていたらって、不安だったよ。アマンドのこともあったし」
ジャンミンの腕の中で、僕は着物姿のまりかを探した。だけどまりかはもう消えていた。
図書室の空気はまだ重く湿っている。
「僕がエリオを図書室に誘ったからさ。これで何かあったら、どうしようかと」
「ジャンミン、心配しすぎだよ。大丈夫だよ」
後ろからニコが話しかける。
「エリオ……誰かと話してた?」
ニコも心配そうに僕を見つめた。だけどニコの声にはどこか疑いが混じっている。
「え……誰もいないよ。僕一人」
まりかの存在を話したいと思ったけど、大騒ぎになるのは目に見えていた。特にジャンミンは興奮しているし。
「さっき声が聞こえたんだ。エリオ、なにか困ったことあった?」
ニコはまだなにか違和感があるようだ。
「ニコ、もういいよ。エリオが無事ならね。ごめんね、図書室に鍵がかかってしまったんだ」
「そうなんだ。本を探してて全然気づかなかったよ」
僕は髪をいじりながら苦笑いをした。そんな僕の指先をニコがじっと見ていた。ジャンミンが続けて話す。
「ちょっと廊下に出たらさ、ガチャッと音がして扉が開かなくなったんだ」
「古いからな、ここも」とニコ。
「ごめんね、エリオ。僕の閉め方が強かったのかな? 鍵が勝手にかかるなんてね」
ジャンミンは本当に申し訳なさそうだ。
「ノックしたんだけど図書室は広いから、奥にいると聞こえないよね。それでニコに鍵を取りに行ってもらった」
ニコは肩をすくめる。
「ジャンミン、エリオ。さぁ、もう戻ろう。皆の感想文の本はとりあえず……」
扉の方を見るニコ。
「入口にある、司書さんのお勧めの本を少し借りていこうよ。読みやすいだろ? あとは寮のラウンジにも、本はたくさんあるし」
「いいアイデアだ。時間も遅いし、急ごう」
ジャンミンも賛同し、三人で図書室の出口に歩き出したとき……背筋がゾクっとした。
『エリオお兄ちゃん……明日もここに来て。とても大事な話があるの』
まりかの幼い声が、なぜか直接頭に響いた。
「おぉうわぁ!」
僕は変な声を出してしまう。
「どうした、エリオ?」
「な、なんでもないよ! 顔に虫が止まったんだ」
僕はなんとか誤魔化した。
あぁ、明日、図書室には行かないぞ。
無事、帰ることができました。このあと大変なことが続きそうですよ。




