表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
磨いた成果を試すとき  作者: うみたたん
幕間 クロノス エブリディ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/35

幕間-  言いたいだけ

幕間でスピンオフのショートです。甘々です。怖さはゼロ!


相談室。ジャンミンの前で、秘密を見せたニコです。

夕飯を食べた後のラウンジで、ジャンミンと激しく喧嘩をした。


普段は、阿吽の呼吸、水心あれば魚心……恋人か?

なんてクラスメイトからいじられるほど、ジャンミンとは仲がいい。


(まあ学級代表と副代表ですから……)


たまに言い合いをするのは珍しいことではない。クラスのために、意見がぶつかることもある。

それに議論は嫌いじゃなかった。むしろ好きなほうだ。


だけど手が出たのは初めてだと思う。理由は、問題ばかり起こすルシアンの処遇について。


「甘すぎるんだよ、ニコは!」


ルシアンを放置する俺に、ジャンミンが小言を言った。


「別にどうでもいいよ」


俺が適当に返すと、ジャンミンは胸ぐらを掴んで俺を突き飛ばした。


え?! ………ジャンミン? 

そんなに怒ること?


俺は怒りよりも、ぼやっとしてしまった。


周りに生徒たちが集まって……ジャンミンは、ルシアンとシドフから眼鏡を無理矢理に外された。

そして「ファイッ」と叫ばれ、僕に向かって突き飛ばされた。


そのあとは、めちゃくちゃ……。



◇ ◇ ◇


夜の21時半--

相談室でのヒヤリングにはレイモンドがやってきた。俺とジャンミンはできるだけ離れて腰を下ろしていた。


「全く……ジャンミンとニコが喧嘩なんてねぇ。みんなが興奮……いや、不安になるだろう?」


「…………」

俺はジャンミンをちらっと横目で見る。


「二人とも、冷静になれよ」


俺のオレンジ色の頭をぐりぐりと触るレイモンド。彼はきっと、俺が悪いと思ってるんだろうな。


「はいはい」

俺は頭をずらし、レイモンドの手から逃れた。


学級代表と副代表なんですからね。

そう呟きながら、レイモンドは出て行った。


ドアが閉まる音が大きく響いた。

それと同時に--


「セクハラ事務員」

ジャンミンが吐き捨てる


「え?」


「君の頭をぐるぐる触ってさ」


そう言ってジャンミンも相談室を出て行った。


(かわいいやつ)


「もうすぐ消灯時間だよー」

生徒に話しかけるジャンミンの優しい声が聞こえた。


◇ ◇ ◇


真夜中、相談室のドアをゆっくり開ける。中は真っ暗だった。


「うわっ!」


……ジャンミン。

窓枠に寄りかかり、月明かりだけを頼りにノートを読んでいる。眼鏡を外し、指で目を擦っている。


「……ジャン?」

ジャンミンの肩が跳ねた。窓枠に置いていた眼鏡を慌ててかける。

残念……メガネを外したジャンミンをもっと見たかった。


「……ニコ。なにしに来たの?」


「ちょっとね……一人でやりたいことがあったんだ」


そう言って。俺はジャンミンに近づいた。首を上に持ち上げる。


窓際に立っているジャンミンと、目線を合わせようとするといつもこう。

俺の方がだいぶ背が低いから。


「やりたいことって煙草?」


ジャンミンは俺の目を上からじっと覗き込む。


(え?!……なんで?)


「たまにニコのシャツから煙草の匂いがするから。あと飴の種類はいつもミント舐めてる」


「……内緒にしてくれるか?」


「もちろん……誰も気づいてないよ」


「ありがとう。ジャン」


そんな上目遣いで言われたら、仕方ないしねなんて言う。


いやいや……背が低いから仕方ないだろ?

ジャンミンが手を伸ばし、俺の髪をそっと撫でた。


「……ニコ」 


「ん?」


「好きだよ」



心臓の音が、ドクンと聞こえたような気がした。ジャンミンの瞳が、眼鏡の奥でまっすぐ俺を見てる。


「君に聞きたいことはいろいろあってね。でもずっと聞かないようにしてる。例えば、どうやって煙草を手に入れているのか……とかね」


「……ありがとう」


「聞いてしまったら、学級代表と副代表なんてやってる場合じゃないんだろう?」


ジャンミンは首を傾げた。

身体が、頬が熱い。


ジャンミンの手が、俺の頬、首筋に触れた。冷たい手のひら……。

てことは、俺の身体はやっぱり熱いんだな。


彼が眼鏡を外して、机に置いた。互いの息が触れる。 

……そしてキス。


ぎこちなくて、唇が震えているけど、離れられない。ジャンミンは、僕の首に腕を回して、抱き寄せた。身長差の分、自然と見上げる形になる。


そっと唇を離し、俺を見つめるジャンミン。その目は少し寂しそうだった。


「……ニコ、煙草吸ってみて」


「俺はいいけど、煙って隣のやつに流れるから。ジャンの健康が心配」


「一回くらい大丈夫だよ」


俺は窓を大きく開けた。相談室は窓が最後までしっかり開くので、煙を外に出しやすい。

使い捨てライターをポケットから出す。暗がりのライターの炎は蝋燭のようになった。


俺は煙草を浅く吸い込んで、窓の外に煙を勢いよく出した。


「なんだよ〜。もっとゆっくりと味わう物なんじゃないの?」


ジャンミンが困った顔で笑う。


「お前が見てるから上手く吸えない」


ジャンミンが俺をそっと抱きしめた。

体温が伝わってくる。


「さっき怒ったのに意味はないよ。ルシアンの悪ふざけなんか、何とも思ってない。ただニコと議論したかっただけだよ」


「ああ」


「なのに君が、どうでもいいって言うから……言えなくなった」


「ごめんな」


俺は煙草を消した。


「でも君と格闘できたから。ルシアン、シドフありがとうって」


「あいつらは自分たちが暴れたかっただけ」


俺たちは声をひそめて笑った。


「ああやって、暴れさせないとね。圧力鍋の蓋はちゃんと蒸気を出してあげないと」


「いいこと言うね。さすが学級代表」


相談室のドアは閉められている。電気も消えている。

ジャンミンがまた俺にピッタリとくっついた。


「見て。月明かりの世界では、僕らは一つだよ」


そう囁いて笑った。



ただ相談室で話をしているだけです。この時は、まだ相談室は鍵をかけてないようです。転校したシドフがいるので、本編より前の時間軸です。


二章も、これからゆっくりと始めます。はじめましての人物も出てきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ