表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
磨いた成果を試すとき  作者: うみたたん
2 ルシアンの章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/40

放課後の悪魔

ペナルティのため、池の掃除です。



(え? 亀がいるじゃん……)


一番に池に着いた僕。

池は庭園の奥にあって、校舎から遠い。だからここまで来たのは、まだ数えるほどしかなかった。


昨夜の罰として、池の掃除って言われたから、緑のぶよぶよしたなにかが浮いている汚い池を想像していたけど、わりと綺麗だった。


「思ってたよりマシだな」

学級代表、ジャンミンの鼻にかかった声。


「エリオ早いな……本当、汚くないや」


その後ろにはニコもいた。

今は冷静なジャミンだが、昨夜はかなり落ちこんでいたな。二人はゴム手袋やビニール、頑丈な虫取り網を2本持ってきている。


幼い見た目のニコが網を持っていると、虫取りしている小学生にしか見えない。


「僕、なにも持ってこなかった」


「大丈夫、エリオの手袋もあるよ。なんか巻き込んじゃってすまない」


「いや、僕は別に…………池の掃除も楽しそうだし」


(なんとも思ってないなんて言えないな)

元から失う物がないのは気が楽……なんだな。

僕はジャンミンに尋ねた。


「レイモンドは見張りに来るの?」


「説教しに来るかもね。大魔王は来るかな?」


大魔王とはルシアンのことか。


「ルシアンが来ないと連帯責任でさらに罰を受けるだろ? めんどくせ」

ニコが眉をひそめる。


「それかクラスのポイントが減るかもしれない。それは困るんだ」


「…………ねえ、池に亀がいるんだよ」


「…………」

「…………」


ニコとジャンミンは顔を見合わせた後、同時に池を覗き込んだ。


「あ、誰かがこっち来るよ、あれ?」


「おーい! エリオー! ニコ、ジャンミン……」


遠くからでもわかる。赤髪で背の高い……しなやかな身体。満面の笑みで手を振っている。

やって来たのは意外にもステファンだった。


「君たち、昨夜ラウンジでこそこそしてたんだって? 羨ましいなぁ」


場所はラウンジになったのか……俺も呼んでよぉ〜と、ステファンはにやにやしている。


「どこが。そのせいで池の掃除だぜ。パッとしない罰だな」とニコ。


「昨夜、ルシアンもいたんだろ? エリオ、何話したの?」


「……えっと、なんだっけ?」


なんて言えばいい?

ルシアンはレイモンドさんと現れた。そしていきなりパジャマを脱いで……。


「あ、レイモンドより伝言。ルシアンは緊急で他のペナルティができた。代わりにステファンを入れて四人で掃除をします。あと日時計も磨いてくれ……だって」


ステファンは自分が助っ人だと、胸に手を当てながら言った。

「ほんと? やった!」


僕は嬉しくて、ステファンに飛びついた。


僕たちは裸足になり、池に入った。ジャンミンだけは長靴を持ってきていた。


「冷たいな」


「池の掃除ってさ……夏じゃないのにね」


網や手で、池に浮いた葉っぱや死んだ虫を取る。手袋はありがたかった。ジャンミンが僕に声をかける。


「エリオ、よかったな。実は僕もステファンでほっとしたかも。ニコもだよね?」


「あぁ。大魔王が来たら、掃除どころか余計に汚すぜ。びっしょりになってさ。けど、なんでステファンが来たんだよ?」


ニコは少しつっかかるようにステファンに聞く。


「さぁ。レイモンドに暇かって聞かれて……学級代表と副代表がべったりだったら、エリオが可哀想だろ?」


「ベッタリなんてしないって。君たちとは違うから」


ジャスミンは真面目な顔で言い放つけど……。昨夜はニコに抱きついてキスをしていた--


「君たちも、恋人って申請すればいいのになぁ。お似合いだよ」


「いや、僕はそんな……ねぇ、ステファン?」


『ああ……まだ▪️▪️れてるし……』


ステファンが早口で言った。とても小さい声で聞き取れない。僕は聞き返す。


「えっ? 何?」


「あぁ、先生に言うつもりはない。エリオとの関係は秘密がいいんだ」


「いや、ステファン、みんなにバレバレだよ」とジャンミンが真面目に言う。


「まぁ、俺の気持ちの問題なんだよ」


「…………」


僕は当事者だけど、よくわからなくて黙っていた。気持ちの問題?


「それに法律が変わったからって、すぐ流行りに乗るのは嫌なんだ。あ、なにこれ?!」


「亀だね」


亀がステファンの目の前に泳いできた。


「こんな小さかったんだー」

「かわいいね、なんかニコみたい」

「なんでだよ」


二コとジャンミンのやりとりは微笑ましい。ステファンは池の中央を見つめていた。


「俺……あの石を磨こうかな」


池には二つの大きな石があった。池の形は8の字に似ていて、合わせるように二つの石が置いてある。それもあって、いびつな8に見える。


ステファンは持ってきた雑巾で石を擦り始めた。


「やっぱり、ぬるぬるするよ」


「ステファン、真面目だなぁ。助っ人なのに」


「だって俺、凝り性だから」


ステファンは石を磨くのが面白いのか、集中して擦りだした。

ジャンミンとニコは落ち葉を集めながら、亀を追いかけたりしている。


「ねぇ。僕も石、磨くの手伝う?」


「いや。これは俺がやってるから」


集中と言うか、ムキになってるようで心配になってきた。


「だって、僕もやったら早いよ?」


「いいんだよ、むこうへ行って」


冷たく言われ、僕は離れた。ステファンは無表情で同じところを拭いているような--


ステファンは急にふらついて、池の中で跪いてしまった。


「ステファン、大丈夫? ゆっくりやらなくちゃ!」


僕はステファンの腕を掴んだ。彼を池の淵に座らせた途端、ステファンはそのまま倒れてしまった。


ステファン大丈夫かな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ