相談室の灯り 2
バディシステム……難しいですねd(^_^o)
ニコ、ジャンミン、エリオの話です
真夜中の相談室。
学級代表と副代表がキスをしていた……。
ニコがジャンミンの両耳にふっと息をかけると、彼はむくっと起き上がって、ニコに囁いた。
「ニコ〜、おはよ。今日もかわいい」
ニコの無反応に、違和感を覚えるジャンミン。僕にやっと気づいた。
「………………エリオ?!」
ジャンミンは長い間固まっていた。そして、かしこまってローテーブルの上の縁なし眼鏡をかけ、咳払いをした。
「エリオ、就寝時間は過ぎているのに何してるんだい? この事は黙っててあげるから、早く部屋に戻って。ポイントが下がるだろ?」
急に学級代表モードになるけど、全く威厳はない。どの口が言っているのだろう。
「ジャン、俺たちキスしてるの見られてる」
「嘘ー!」ニコに飛びつくジャンミン。
「こっちだって、見たかったわけじゃないよ。ニコ、ジャンミン……君たちルールを破り過ぎ」
(もう、どこからつっこんでいいかわからない)
「お願いだ。黙っててもらえるか?」
両手を合わせるジャンミン。
「うん、わかってる。二人が付き合ってるのはみんな知っているの?」
「誰にも言ってないけど、わかってるんじゃないかな?」
僕は全然わからなかったけど。
「もちろん、ここにいたことは、大丈夫。本当に誰にも言わない。ステファンにもね」
僕が一番大事な人はステファン。だったらステファンに二人のことを教える……。
なんてことはしない。
先に約束をしたほうを僕は優先する。それは当たり前だよな。
あとは……この二人にアドバンテージを取っておくのは絶対に必要だ。
ジャンミンとニコは圧倒的信頼度の高い学級代表と副代表。2年B組に君臨している二人だ。
「ねぇ、教えてほしい。クロノス学園では、バディは恋人同士の場合もあるの?」
ニコがうなずく。
「ああ。暗黙の了解だな……一年前、実は学園も法律が変わったことにとても動揺した。学園の規則を全部、そっくり見直さないといけないからな。昔なんて生徒同士ベタベタしてたら、先生に鞭打ちされたり、付き合ってるのがバレたら放校だった時代もあったんだぜ。それが全部、認められたんだから」
ジャンミンも優しく話し出す。
「エリオ、僕たちの11地区は、14歳から24歳までは同性同士でたくさん過ごし、スキンシップもして、仲良くすること。恋人になることも認めるって法律できたよな」
僕は首を少し傾げた。そのことはあまりよくわかってなかった。
「もちろん異性の恋人だっていいんだよ。でも男女の恋人同士って、十代はいろいろ事件に発展することもあるだろ? 同性同士のほうが穏やかに過ごせることに目をつけたんだ。恋人って言ってもさ、親友みたいなものだよ。親友って一番の心の拠り所だろ」
「そうだね……一年前の法律か。僕のいた村は田舎だから、全く生活は変わらなかったよ」
「エリオの方はそうなんだ。都市ではかなり衝撃なニュースだったな。少年たちの犯罪が多くて。そしてこの法律の後、本当に犯罪率が減ったんだよ」
「そうなんだ」
「もちろん同性同士仲良くするのは推奨するけど、プラトニック……つまり、じゃれあいで止めることが条件だよ」
「つまりここまでだな」
ニコはジャンミンをギュッと後ろから抱きしめた。
「ちょっと、恥ずかしいだろ」
そう言いつつも嬉しそうなジャンミン。僕も思わず口元が緩んでしまった。
「……よかった。ジャンミンが元気になって」
「え? 僕はもともと元気だよ」
「そうなの?」
「へへ。エリオに見られて、適当に嘘ついた」
二人は微笑んで見つめ合う。ありがとうとジャンミンがニコに囁いた。
「あのさ、バディって、どうやって申告するの?」
「先生に職員室で話すんだよ。そして認められたら用紙に書く。エリオたちも先生にバディで申告したらいいよ。告白したんだろ? ステファンに」
僕は横に首を振る。みんなにそう思われてるだろうとは思っていた。
「ステファンが、僕に告白してきたんだ。信じられないだろう?」
「へぇ、驚いた。逆かよ」
「あのステファンがねぇ……よかったな、エリオ」
なんだか複雑だった。ステファンは付き合ってることは先生に見つかったらまずいって言っていた。でも実際は先生に許可を得ることもできたんだ。
じゃあ……禁断の恋ではなさそうだな。僕一人で舞い上がっているみたいだ。
「ステファンにバディのこと聞いたことがある……もちろん親友になりたくてだよ。だけど、今はいらないって言ってたかな」
ステファンと僕はまだ信頼関係は構築されていない。
今夜の二人を見てわかった。ジャンミンとニコとは圧倒的な差があった。
「もしかして、ステファンのバディってまだあの子なのかな?」
ジャンミンの囁く声と同時に、扉をノックする音ーー
まずい……もう真夜中の12時だった。
「やべ……誰だ」
「ニコ! 隠して」
ジャンミンが煙草の入った小さなグラスをソファの下に押し込んだ。
誰か来ました!




