相談室の灯り
新しいエピソードです。語り手はエリオ。なにを見ちゃったの?(//∇//)
ちょうど一週間前のことを思い出していた。水曜日、真夜中の相談室。あれは僕たちだけの秘密だ。
そのあと不吉なことが起こるとの予言をしたあいつ……それはアマンドのことだったのかもしれない。
でも少し違う気もする。
話はあの相談室に遡るーーー
◇ ◇ ◇ ◇
真夜中に僕が目を覚ますと、相談室の明かりがつきっぱなしだった。おかしいなと思った。僕が就床前に、トイレから戻ったときは消えていたから。だからその後に誰かがつけたんだ。
フロアの相談室は僕がこの学園に来て、初めて入った部屋。ジャンミンたちと挨拶を交わして……レイモンドさんとさよならをした部屋だ。
あ……そう言えばあのときの赤いリュックって返却してもらったっけ? 汚れたから、洗って返すって言われたよな。僕から取りに行くんだっけ? まあ、使わないし別にいらないんだけど。
そう。相談室はローテーブルとソファしかなくて、本当に話をするだけの部屋なんだ。書類を書くとか、転入してきたときとか……あとはトラブルや喧嘩したときのヒアリングとかね。これはちょくちょくある。一人一人個別に聞き取るときに使う部屋なんだ。まさに名前のまま。
普段は鍵が閉まっている。鍵はカウンターの中にあって、誰でも取れる。でも触って良いのはうちのクラスでは、ジャンミンかニコだ。
電気がつけっぱなしなのは、もったいないと思った。スイッチは部屋の内側にあったので、ドアを回す。鍵も開いていてーー
「ハウッ!」
変な声をだす僕。
「エ、エリオ?!」
中にいたのは、ジャンミンとニコ。うちのクラスの学級代表と副代表。二人がギュッと抱き合っていた。ジャンミンの胸に顔をうずめているニコ。ニコの右手には煙草が挟まっているんですけど!
「あれ? やばっ! 鍵閉め忘れた」
ニコは慌てて、ジャンミンから離れる。ドアの方を見たジャンミンは縁なし眼鏡はしておらず、とろんとした顔で僕の方を見る。なんだか気怠そうな顔……。
「エリオ?」
「ご、ご、ごめん! ええと、見なかったことにするから」
やばい! 僕、見てはいけないところを見ちゃった!
「待てって。こっちに来い」
ニコのいつもより低い声。
「大丈夫、僕、言わないよ」
「待て! 副代表の言うこと聞けよ」
だからその副代表が何やってんですか?!
「ニコ。好きだよ……」
いつもしっかりしているジャンミンが、寝ぼけているのか、ニコにまた甘えてくっついてしまった。
えええ……僕はなにを見せられてるのだろう……。
とりあえず目の前のソファにおずおずと腰掛ける。
「これ、あげるから」
ポンとカラフルな飴とチョコを投げられた。
いやいやいや! これで帳消しにできるわけないでしょ!
「いいから食べろよ」
「ニコ……規則違反だよね。煙草はまずいよ」
「ああ、これね。確かに……ジャンミンの肺が汚れるのはよくない」
そう言って、ニコはもう一口深く吸った。ゆっくりと上を向いて煙を吐き出した。そして煙草をグラスの中に投げ入れた。
(ニコが体が小さいのって、もしかして煙草とか吸ってるから? お酒も飲んでたりして)
「俺の体が小さいのと、煙草は関係ない。吸ってなくたって小さいままだから。酒は隠してません」
え? 心の声、聞こえた?
「ニコ、退学処分になっちゃうよ?」
「君が黙ってればならないよ」
なにそれ……脅してるの?
「ニコ、煙草だけじゃない。真夜中なのにこの部屋……飴も持ち込んでるし」
「ジャンミンの悩みを聞いてたんだよ。成績が下がってジャン……ちょっと不安定なんだ。だからついでにちょっとデートしてた」
デート!?
「あの、あのさ……二人ってバディだよね? つまり親友って……学園に伝えてるんでしょ?」
「ああ……そう。認めてくれてるからねぇ、学園がね」
「親友ってことを?」
「ん? エリオ。バディシステムってなんだと思ってるの?」
「え? なにって……親友ってことだよね?」
ニコは一体何を言ってるのかな。それくらい田舎者だけどわかってるよ。
「バディってほぼ恋人だよ」
えええ!! そんな……みんな親友って僕に教えてくるんだけど。
「エリオ。俺たちの都市、法律決まったよな。14歳から25歳までは同性同士でたくさん過ごし、スキンシップもして、恋人も作りましょうってさ」
そうだった。
僕達の都市は……一年前、同性同士のカップルの推奨という新しい法律ができたんだ。
最後の文、驚きましたか?
そうなると、そんなに規則違反はしていない?煙草はあかん!




