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磨いた成果を試すとき  作者: うみたたん
1 クロノスの章

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17/33

医務室とステファンと……

ステファンとエリオとブロンド君はどうなるのでしょう?

ステファンと二人で保健室のベッドに寝転がっている。夢のような時間のはずだった。


だけど僕は、再びクロノス学園に来たばかりのことを思い出していた。


◇ ◇ ◇ ◇


クロノス学園に転入して、数日が経過していた。みんな優しくしてくれるけど、僕はいつもステファンを目で追っていた。


「なぁ、ステファンが気に入ってんの?」

眩しいブロンドの髪の少年が、満面の笑みで話しかけてきた。驚いた僕はもじもじしてしまう。


(やっぱり誰でも気づくんだ。僕がステファンを見ていること--)


「あ、あの……」

「一緒に移動教室に行こうか!」


そうブロンドの少年は言ってくれたっけ。そしてステファンとブロンドの子は、寮や学園を案内してくれた。案内は済んだ場所もあったけど、まだ行ったことがない場所もあった。なにせクロノス学園は広い。


ステファンとブロンドの子は、とても親密だった。僕の後ろを二人が腕を組んで歩いている。


「ここはね、ステファンが前に転んだところだ」


「へぇ、そうなんですね」


「おい、そんな案内いらないだろ?」


「いや、覚えておきます」


なんて……ステファンとのエピソードもいれながら、案内をしてくれた。僕はステファンに夢中だったので、そんなステファンのエピソードも嬉しかった。


「次は三階を案内するね」

「あの……理科室の奥の扉ってなんですか? 先生にも学級代表も、そこは開けてはいけないって聞いて」


「そうだよ。二階の奥の扉は開けてはダメだ。なぜだっけ? なぁ、ステファン?」


「ああ、そうなんだ。そこは理科の実験とかで使う薬品があるから危険なんだよ。鍵はかかってるけどね。その扉の話題も避けたほうがいい」


「あ……はい。わかりました」


さすがステファン〜と言いながら、彼にしなだれかかるサラサラのブロンド髪。


「なんでさっきから敬語使うの? 同級生なのにおかしいよ、君」


 ブロンド髪が冷笑した。


「エリオ、そんなに気を使わなくていいよ。このクラスはみんな仲がいいんだ」


 ブロンド髪の少年よりも、ステファンは優しく教えてくれた。ブロンドの少年はニヤッと笑う。


「そうそう、敬語は禁止な〜」



そんなことがあって、僕は二人と急速に仲良くなっていった。ブロンドの少年がステファンと親密にしているのは構わなかった。


今までの僕なら嫉妬するのに。


僕の方が、後からこの学園に入ってきたのだから、それは当たり前だと割り切れた。魅力的なステファンならライバルがいるのは覚悟の上。後から入ってきて、さすがに邪魔しようとは思わなかった。


だって二人はバディ同士でもあるし。

ブロンドの子が僕に聞こえるように、独り言を言っていたから。


でも、それくらいで僕の気持ちは変わらない。そんなことでステファンを嫌いにはならない。むしろ誇らしいくらいだ。

もう前のように目移りする僕ではない。僕はステファンと会って変わったんだ。


◇ ◇ ◇ ◇


「なんで俺の前がマリオンなんだよ。あいつ、全然話してくれないし、いつもなにか書いてるんだぜ。すげえ不気味。変な絵も描いているし」


席替えがあって、ブロンドの少年は大いに不満を言った。僕がステファンの近くになったから、それも悔しいのかもしれない。

いや……ほとんどそのせいだと思う。


「エリオは近くにいてよかったよ」


僕とステファンは顔を見合わせて笑うと、ブロンドは寂しそうにそっぽを向いた。ステファンは気にせず話を続ける。


「なぁ、次の時間はなに?」


「やばい! ティーチャー・パンジーだ」 


ブロンドが言うと、ステファンは頭を抱えた。

「うわぁ。最近赴任してきたあいつかぁ」


「ねぇ……ステファン……僕、ずっとお腹が痛いんだ」


 僕がそう言うと、ブロンドが目を輝かせた。

「いいじゃん! 医務室に三人で行こうぜ!」


「……三人は多いよ。ステファン一緒に付いてきてくれるかい?」


それを聞くと舌打ちをしてブロンドは、ずるいー! パンジー先生の授業、エスケープするなんてと煽ってくる。

 

(そんなつもりじゃない……)


「本当に前の時間から痛かったんだ」 


 僕が懇願すると--


「俺も〜。本当に前の時間から痛かったの〜」


ブロンドの奴はにやにやしながら、真似をしてきた。僕は黙っていた。初めて声をかけられたときのことを思い出した。満面の笑顔で話しかけてきた。あの顔は親切心だったのだろうか?


「いいね! 三人で行こう」


ステファンは気にせず陽気に答えた。


北の端にある医務室は薄暗くて、なんとなく寒い。

ステファンが使用名簿に僕の名前を書いてくれる。


「医務室の先生、午後は出張だって。ラッキー」

そう言って、嬉しそうに飛び跳ねてブロンド髪が揺れている。


「エリオ、大丈夫かい? 横になって」


「あ、ありがとうステファン」


僕はベッドに横になった。すると少し身体が楽になった。


「エリオ、顔が青い……大丈夫か? なぁ……。

見てシドフ。エリオの顔、青いよな」


 シドフ--


思い出した! ちょっと変わったあいつの名前。

シドフ……。


「昼ごはんの食べ過ぎじゃない?」


ブロンドの髪が輝いている……シドフ。なんだか馬鹿にした口調で僕に言った。もちろん無視をした。


「いたた……」


僕は、お腹を抱きしめるようにしてうずくまった。ステファンは僕の頭を撫でてくれ、毛布をかけ直し、僕の横に自分も横たわった。 


ひえぇぇーー!

心臓が止まりそう。ステファンが横に寝ている! 

 

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