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磨いた成果を試すとき  作者: うみたたん
1 クロノスの章

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医務室とステファン 4

ステファンとキスまでしたのに……余計なことを言ってしまった。


「あいつの髪--」   

「ステファン! 実は秘密があるんだ。ステファンにしか相談できないよ」


僕はステファンの話を遮った。ステファンの腰にてを回す。ベッドで横になっているので、彼の顔はものすごく近い。


「え? ……なんだよ?」


「絶対秘密だけど……寮でね、僕の部屋に誰か入ってきたんだ」


「は? 入ったらダメだろ、 誰だよ?」


ステファンはすぐに反応した。彼は正義感が強いことはわかっていた。規律には結構厳しいタイプなんだよ。僕は腕を軽く押さえて落ち着かせた。


「ええと。真夜中にね、その子、部屋の入口に立ってたんだ…でも暗くて顔はよく見えなかった。僕、ルールは守らないとって言ったんだ。他人の部屋に入っちゃ絶対ダメだって教えたよ」


「で、外に出たのか?」


「ううん。早く出てって、って言ったんだ。守らないと罰則が増えちゃうよって」


「鍵、閉めなかったのかよ?」


「うん、その夜は忘れてたのかな……」


ステファンの無表情が怖かった。こんな話しなきゃよかった。でも、途中でやめるわけにもいかないし。


「罰則でビデオも本も借りられなくなるって言ったのに、その子、もっと近づいてきたんだ」


「だから誰だったんだよ?」


「それで……よく見たら、顔がないんだ。のっぺらぼうだった」


「は?」


僕はつい笑ってしまう。


「嘘だよ。ごめん! 僕が考えた怖い話なんだ」


ステファンが笑ってくれるかと思ったけど、明らかに怒らせてしまった。こんなつもりじゃなかった。


「なんだよそれ。くだらないからやめろよ」


「ごめん……ステファン、怒らないで。ごめん」


「怒っちゃいないよ。エリオ……他に言いたいことがあるんじゃないかな? だからそんな話をしたんだ。さあ今度こそ本当ことを話してくれよ」


ステファンに顎をすぅっと触られた。


「ごめんて。急に言われても……ちょっとわからないよ」


「ダメだ。あるだろ」


ステファンは、普段は穏やかで親切だけど、怒ると怖いのは知っていた。前に中庭で急に怒ったことがあった。あのときはもっと怖かった。


それであの話を思い出した。さっきの話も嘘っていうか、実は明け方の夢……だったんだけど。それを正直に言うのも、面倒だったからのっぺらぼうって言ったんだ。本当は体も全部、もっとぼんやりとしていたんだよ。


「えっと…クロノス学園に僕が転入してきたときの話するね。ステファンと何人かに話したよね?」


「ああ、あれか! 面白かったな。感知するやつ。センサーライトの話だろ? 自分の影が追いかけてきて、驚いたんだっけ? 面白くて語り継がれるぞ」


「へへへ」

僕は苦笑いをした。


「先生たちの棟ばっか設備が新しくなって、俺らの寮は古いままなのにな」


ステファンは機嫌を直して笑ってくれた。僕は真面目な顔で話を続けた。


「えと、それでね影に首を絞められたんだ」


ステファンが目を見開いた。そのぎょっとした彼の顔は怖いくらいだった。


「ライトでできた僕の影の中に、一人だけ両手を伸ばして追いかけてくる影があったの。僕、両手なんて上げてなかったのに。そいつが首を絞めてきた。すごく苦しかった。その影、絶対子どもだった。小さかったから。だからレイモンドではないよ」


「作り話じゃないよな?」


僕は無言でうなずいた。


「なるほど……それは怖いな」


ステファンが低い声で呟いた。そして--


「こんなふうにか!」


ステファンが目をさらに開いて、急に僕の首に手をかけてきた。

ステファン? なんで……苦しいよ!


僕に覆い被さってくる。ステファンの目は切れ長で、普段からちょっと冷たい雰囲気なんだ。でも、その目が大きく見開いて……なのに口元は笑ってる。この人、誰? やめて……。


「ママ、やめて!」


ステファンはハッとして、手を離した。本気で絞めてたわけじゃないと思うけど怖かった。ステファンが僕を抱きしめてきた。


「ごめんごめん、エリオ。冗談だよ。怖かったか?」 


「…………」


「エリオ、ママって言ったよな?」


僕は黙っていた。怖くて言葉が出なかったんだ。


「……名前間違えちゃった。僕マザコンだったから、へへ」


なんとかふざけて誤魔化してみた。

「あぁ、そうか。やっぱり好きだよ、エリオ。ブロンドのあいつより好きだよ」


僕の震える身体をぎゅっと強く抱きしめてくれた。

そういえば、前に保健室に三人で来たよな。ステファンと僕、あとブロンドのあいつと。


あの頃はずっと三人で一緒にいたんだ。


またブロンド君のいた頃の話になります。何かあったのでしょうか?

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