ラウンジのカラフルキャンディ
エリオがクロノス学園のことを教えてくれますよ。
はじめは転校してきた僕のこと、みんなちやほやしてくれた。わからないことを教えてくれたり、ボクのくるんとしたくせっ毛を触ってくれたり。
寮でもラウンジに一人でいると、そっと横に座ってくれ--
「何かわからないことある?」
なんてみんなが聞いてくれた。
でもそれは一瞬だった。一瞬で僕、エリオのモテ期が終わってしまった。はぁー。
まぁ、もうそんなことはどうだっていい。
クロノス学園に来て、僕は生まれて初めて、完璧な恋に落ちたから-
禁断の恋だ。
物心ついたときには初恋は済んでいると思う。恋多き乙女、ではなく少年だった。
隣のお姉さん、幼稚園の先生、登校班の副班長……でも、そんな淡い思い出も全部なかったことにしてもいい。
全部クロノス学園で出会うための練習。ウォーミングアップだったってこと。
僕は一瞬で恋に落ちて、本当の初恋もして、禁断の恋もしたのだから。
◇ ◇ ◇
夜に転入してきた僕。次の日に寮は一通り案内してもらってた。学園のことも大まかに理解した。クロノス学園には厳しいところと緩いところがある。
『飴と鞭』
上手いなぁなんて思った。いや、誰目線だよって、感じだけど。
寮で自分以外の部屋に入ってはいけないのは厳しいと思う。少しくらいいいじゃないかと。でも盗難やいじめなどを防ぐためのようで、それなら仕方ないのかもしれない。
その代わり、ラウンジと呼ばれる談話室にはたくさんの小説、漫画、映画のビデオテープが置いてある。
給水機もあるし、飴やチョコも一人二つまで食べていいんだ。おやつとは別にね。
飴もチョコもキラキラ光る包み紙に入っていて、カラフルでハロウィンを思い出すよ。どちらも甘くて本当に美味しい。
ふふふ。羨ましいでしょ?
ビデオテープは、カウンターの奥にあって、ノートに書かれている題名を言えば、宿直の職員さんや、当番の三年生が棚から出してくれる。
テレビの使用時間はクラスごとに決められている。その時間の長さや順番などは、毎日の生活態度や、ステンドグラスの制作も関係してくるんだ。
今のところ、2年B組はあまりポイントは高くない。なぜかって言うと、ルシアンの生活態度が良くないからだ。
ラウンジは夜の9時45分まで使用できる。消灯は10時。これはかなり嬉しい!
(一年生は9時まで)
他のところは夜の9時半には消灯が多い。もっと厳しいところだと9時にフロアの灯りを全て消されてしまう寮もあるらしいから。
クロノス学園には立派な図書室があるけど、このラウンジだって同じくらい素晴らしい。
僕はラウンジのほうが断然好きだ。だってパジャマでいられるんだから。
図書室のように大きすぎないのが使いやすいしね。だって図書室はいまだに迷路だよ。そして薄暗くて怖いんだ。一人では奥までは行けないよ。
寮のことはジャンミンとニコからいろいろ教えてもらえた。ここに来た次の日は若くて優しい女の先生に学校案内をしてもらうことになった。少ないけど女の先生も数名いるんだ。
この学園は超レディーファーストだから本当に大事にしてもらってるよ、女の先生たちは。
僕は緊張しやすいから、案内はジャンミンたちがよかったのだけど、生徒たちは授業に出ているので、そうもいかない。
「次は運動場にPEの見学に行きましょう」
若い女の先生に言われた。
PEはフィジカルエデュケーションの略で、運動の時間だ。ちょうど2年B組のクラスメイトたちが集まっていた。何人かは初めて見るやつもいた。
あれ?あんな背が高くてモデルみたいなやついるんだ……赤毛で顔もキツイ感じだな。全然タイプじゃないけど。
と、思った瞬間、バネのある体……彼は全力で走って、ボールを奪った。そして--
僕は恋に落ちた。サッカーをしてる彼から、本当に目が離せなかった。胸の鼓動が激しくて、ドッドッって鳴っていた。
詳しく話した途端に特別じゃなくなっちゃいそう。僕だけの秘密にしたい。ライバルがこれ以上増えるのは困るんだ。
だけど、僕はステファンに恋していなかったら、どうなってたかなとは思う。
ルシアンに一目惚れしてたかもしれない。
僕は可愛くてキラキラした子は、女の子でも男の子でもすぐに好きになってしまう。そうなんだ。僕は自分がちょろい性格なのは自覚しているし、治ればいいなぁとは思っているんだけどね。
だから余計にステファンに恋をしたのは運命だと思う。
まあ僕だって……顔は整ってると思うよ。背は低いけど。髪の毛はくせっ毛だけど、それが逆に猫みたいでいいなって、触ると落ち着くって言われるし。
でもルシアンには到底敵わないけど。
なんて、僕は数ヶ月前の出来事を思い出していた。
生徒が休憩するところに、給水機や飴やチョコがあるのは羨ましいですよね?




