アマンドと夢の続き 3
絵がとても上手なマリオン--
みんな忘れられがちな窓際の子。ボクも彼とは話したことがないんだ。でも気になって、ときどき彼をじっと見てしまう。黒の前髪は長くて顔がよく見えない。多分わざと顔を隠しているんだ。
本当は少しだけ彼に親しみを感じている。ボクも本を読むのが好きだし……。
親しみというか、彼がいるから安心しているのかも。僕よりも孤独な生徒がいるってことに。
いつも一人で絵を描いたり、文章を書いたりしてる。それが本当に上手で。もしかしたら、ちょっと憧れてるのかも。
彼の実力はみんなわかっていると思う。ペーパーナイフに刻んだあの花……花なんて掘ったら、女みたいって冷やかすだろう? でもそうじゃなかった。あまりの精巧な美しさに、誰もが息を呑むほどだった。
いろいろ話したいんだけどね。でも変わり者って言われてるマリオンと話したら、みんなからどう思われるかな……そんなこと気にしているボク。
結局、ボクって臆病でつまんない人間だ。
この前、マリオンがクラスの子の名前で小説を書いてるのをちらっと見かけた。かなり内容が気になったけど、怖くなってすぐに離れてしまったっけ。
◇ ◇ ◇
ニコが笑顔を向けてくる。
「そうそう、マリオン! だから大丈夫。俺たちのクラスは優勝か準優勝だな。それよりアマンドが話してた夢の話、詳しく聞かせてよ」
「え? 別に大した話じゃないんだよ」
「俺、中休み、途中から来たから聞けてなくて」
ボクが夢の話をもう一度話すと、ニコは三日月の岬をもっと聞きたがった。
「三日月の形をした岬か……アマンダってロマンチックだね」
「みんなが、人の夢で勝手に盛り上がってるだけだよ」
ボクたちは地理の棚に移動した。普段はここには来ない。いつも小説の棚で止まっていたから……。
「海がある場所だから……地図で調べてみる?」
地図帳を棚から取り出したけど、岬の名前もわからないので、本探しはすぐ暗礁に乗り上げた。
僕たちは床に腰かけた。先生たちが見回りに来たときに、棚の隙間から見えないようにするためでもあった。
「ねえ、エリオってさ……まだステファンと仲直りできてないかな?」
「ん?」
「エリオだよ。その岬に行きたいって言っててね。ステファンと行きたいんだと思う」
でも、もう行きたくないって言ってる頃かな?
「あの二人、仲良くどこかに行ったけど」
ニコがいたずらっ子みたいに笑う。
「え、ほんと?!」
びっくりした。もう二人、仲直りしてたんだ。心配して損した! 僕の大きな反応で、ニコを驚かせてしまった。
「ほんとだけど、なんだよ」
「だって、エリオがすごいやきもち焼いてたんだよ。あー、ニコに聞いて、心配する時間が減ったよ。ここに来てよかったかも」
ニコに肩をわざとぶつけた。ニコがふっと笑う。
「あいつら、わかりやすいだろ?」
「うん。ボクとステファンが暫く格闘してて、エリオが怒って帰ってしまって……心配してたんだ」
「あー、あれはベタベタだったもんなぁ。それで君に焼きもち焼いたんだ? エリオって、わかりやすいくらい恋愛体質だよなぁ」
「恋愛体質?」
なにそれ……そんな体質、初めて聞いた。
「あの二人、付き合ってるんだぜ」
………えーっ!!!
図書館なのに、思わず大声を出してしまった。
アマンドの話は次でおしまいです。見届けてください。




