マリオンのペーパーナイフ (プロローグ)
BL×学園ゴシックです。よろしくお願いします。
ホラー?サスペンスに近い?心理的なホラー目指していて、残酷描写はないです。
深い森にあるギムナジウム。溺愛したり、ふざけたりいちゃついたり。ドキドキしながら。読んで下さい。
木曜日、朝のホームルーム。
なにがそんなに面白いの?
教室に響く笑い声や、仲間同士の大きな話し声。
その中心にいるのは――
ルシアン--
亜麻色の明るい髪を、少し長めに伸ばした少年。天使のような甘い顔に、ベビーブルーの澄んだ瞳。口元は優しい笑みが浮かんでいる。
それなのに……。その口から出てくるのは、僕には理解できない品のない冗談やくだらない話ばかり。
このクラスに限っては、もっと規律を厳しくしたらどうだろう。
くだらないことで喧嘩をするな。大声で笑うな。囃し立てるな……。
まぁ……それだけじゃ足りないかな。
「このクロノス・ギムナジウムの生徒は特別な存在です。卒業すれば、輝かしい未来が待っています。君たちは選ばれた人間だということを忘れず、自由の中にも規律を意識しなさい」
先生の言葉が教室に響く。
はぁ、なんだか息が詰まる。15歳でこんなことを言われるなんて。確かに、厳しい試験やたくさんの面接をくぐり抜けてこの学校に入ったけど。
このギムナジウム、通称、クロノス学園の規律は厳しい。うんざりするほどだ。
でも校舎の高窓は好きだ。光をたっぷり取り込むために作られた高い窓が、玄関や廊下のあちこちにある。そのいくつかは、精巧なステンドグラスで飾られている。
特に、玄関ホールにある真っ赤な薔薇のステンドグラスが気に入っている。まるで燃えるように鮮やかな赤だ。あの窓を見ると、低血圧な僕でも血を分けてもらったような気がして、気持ちが落ち着くんだ。
でもルシアンは言っていた。
「節操がなく、下品」って。
彼がそう言うのなら……そうなのかもしれないな。
他にも青を基調とした聖母やネモフィラの花のステンドグラスも美しい。鳩やハチドリも温かみがある。
偉い人がこの学校の視察に来るとき、ステンドグラスを見に来ただけの人もいたらしい。
天気のいい日には、色とりどりの光が校舎に差し込んで、僕たちを照らしてくれる。
歴史のある修道院のような全寮制の学園で、僕たちは共同生活を送っている。
厳かな雰囲気の中で響くのは、讃美歌ではなく、少年たちの笑い声や他愛もないおしゃべりばかりだけど。
ため息をついて、机の中からノートと鉛筆を取り出した。騒がしいクラスメイトの話を聞いていても時間の無駄。それよりも物語を創作するほうがずっと有意義だ。
薄いノートをそっと開くと、ペーパーナイフが現れた。アートの授業で作った、好きな模様を刻んだペーパーナイフ。
先生にも素晴らしいって褒められたんだ。自慢じゃないけど、美術館にも飾れるんじゃないかと思っている。
柄の部分には、自分の名前「マリオン」と彫った。裏側には好きな模様を彫れるので、マーガレットの花を彫った。これは姉さんの好きな花。だからとても気に入っている。毎日、指でそっとなぞって、柄の凹凸を感じている。そうすると心が落ち着くんだ。もう見なくても、模様の形は指が覚えている。
ひとしきりなぞった後ハンカチで拭くと、どんどん艶が出て銀色に輝く。本物のナイフみたいだ。自分を輝かせる方法はわからないけど、このペーパーナイフは誰のものよりも輝いていると思う。
ああ、早く三時間目のアートの授業にならないかな。
――眩しい!
窓際にやってきたステファンとエリオが急にカーテンを開けた。強い日差しが教室に差し込む。久しぶりの快晴。
「いい天気だな!」
「眩しすぎるよ」
背の高いステファンの横にいると、小さいエリオはまるで弟みたいだ。クスクス笑っている。こっちを見て顔を寄せ合ったり、肩を叩き合ったりして囁き合っている。
それは兄弟よりも恋人同士に見えなくもない。
ステファン、エリオ……僕は君たちがベタベタするためにここにいるわけじゃないんだ。
せめて「カーテン開けるよ」とか、ちょっと声をかけてくれてもいいじゃないか。
ペーパーナイフの先端が日差しに反射して、暗い床に一瞬光を投げかけた。慌ててノートを閉じた。
これは見られたら非常にまずい。
だけど心配はいらなかった。ルシアンが話し始めたからだ。
長い前髪で、顔が隠れている僕のことなど、誰も見ちゃいない。
みんな美しいルシアンの話を聞きたがっている。
ショーの始まりだ。
ショーの始まりと言いつつ、次では始まりません。
後ほどになります。
次は転入生がエリオが来た夜の話になります。少し時間が戻りますね。
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