新天地
新しい出会いは吉と出るか凶と出るか
「もう、駄目かも…。カイヤくん…。」
「あともう少しだから耐えてくれガネット。」
「き、きもちわるい…。」
「頼むからここで吐かないでくれ。」
「な、んで船ってこんな揺れるの…。」
顔色を真っ青にして船の手すりに寄りかかり、時折嗚咽を繰り返すガネットの背をさすりながら前方に見える島を視界の隅に入れる。あれが今回の目的地であり、聖女が生まれて消えたとされている国の一部。今から上陸する島だ。長かった船旅もようやく終わりを迎える。船旅は予想以上に長くなってしまい、この通りガネットは船酔いを起こしてしまった。この船に乗っている人も少なくはなく、そのほとんどが冒険者で聖女失踪の影響力の大きさはやはりただ事ではないな。しばらくして船が港に着くとぞろぞろと下船していく。
「ガネット、ついたぞ。」
「あぁ、そ、う?よかった…。」
「だ、大丈夫、ではなさそうだな。」
「ご、ごめんねカイヤくん。」
「気にするな。」
ガネットをおぶって船を降りる。なるべく揺らさないように港を進んでいく。妖精の国は発展が遅く、自然が主体だと聞いていたが港はそんなことはなく、人間の国のように賑わっていた。違う人間の国に入ってしまったのかと勘違いするほどに。きょろきょろとまずはガネットを休ませるために宿を探し歩いていると、声を掛けられる。
「あ、あの!大丈夫ですか?」
「!?」
声をかけてきたのは小柄で可愛らしい女性だった。太陽のもとできらきらと柔らかに反射する稲穂色の髪に明るくて鮮やかな青の瞳はまるでおとぎ話に出てくる妖精のよう…ん?妖精の?そこまで考えてふとここが何の国だったかを思い出す。
「あの、つかぬことをお聞きしますが、貴女はもしかして妖精族では?」
「あ、はい、そうです。えっと、急に声を掛けてしまってごめんなさい。後ろの女性が苦しそうに見えたので良ければ休める所をお教えしますよ?」
「いいんですか?助かります。」
「いえ。貴方たちも、わたしたちのためにここへ来てくれたんですよね?そんな優しい方たちの助けになるのならこれぐらいどうってことないのです!ついてきてください。」
そういって歩き出す妖精族。ありがたくついていくことにする。背中を見ると閉じているが確かに羽が生えていた。本物の妖精族。見るのは初めてだが悪い人ではなさそうだ。
しばらく歩いてたどり着いたのは小綺麗な酒場。中に入るとここも冒険者であふれているが、席がないほどではない。白い石造りのテーブルとイスは見たこともないほど綺麗な輝きを放っていて、とても酒場とは思えない。そっとぐったりとしているガネットを降ろして、小柄な妖精族の女性と向き合う。見れば見るほど整った容姿をしているな、妖精族だからなのか、はたまた王族か。
「すみません。ありがとうございます。助かりました。」
「いいえ、そんな!いいんです!困っている人を助けるのは当たり前のことですから!えっと、一つ聞きたいことがあって人間さんはおねえちゃ…あ、聖女様を見つけるためにここまで来てくれたんですよね?」
「え、あ、はい。」
今さっき、なんて言おうとした?おねえちゃ…?ま、まさか…。
「やっぱり!よかったぁ!わたし、えっとえっと…おねえちゃ…聖女様の知り合いでえっと凄く心配で、でもわたし出来ることが少ないからこうして出来ることを探してて、それで人間さんの役に立ってよかったぁ。」
「あの、おねえちゃんって…。」
「!あ、聞こえちゃいましたか。実はわたし聖女様の妹なのです。」
「ですよね。」
聞こえちゃったというか何というか。あれは隠す気があったのだろうか。ともかく、運がいい。妹なら姉の情報を持っている可能性も高いし、無情報で闇雲に探すよりもある程度目星をつけて探したほうが見つかりやすいのも事実。
「聖女様の妹様ということを見越してお願いがあるのですが、いいでしょうか?」
「!はい!わたしにできることならなんでもです!」
「感謝します。まずは自己紹介から。俺はカイヤ・キャトル。現ランクは4で冒険者をしています。こっちは仲間のガネット。ギルドの依頼で行方不明の聖女様の捜索をしに来ました。お願いというのは、情報提供のことでして、聖女様について何でもいいので情報が欲しいです。もちろんお金は払います。」
「!お、お金なんてそんな!ダメですよ!いりません!こちらの都合ではるばる来てくれたのにその上お金なんて!おねえちゃんについてのお話ならしますから!」
「ですが。」
正直無償で情報を提供されるのは気が引ける。それにこんな親切を受けておいてお礼ができないのはなんだか、こう、嫌な気分になるのだ。
「じゃ、じゃあ!こうしましょう!わたしに外の世界のことお話ししてください!わたし、この国の外に出たこと無くて何も知らないから、教えてほしくって。」
「そ、そんなことでいいのなら喜んで。あぁ、すみません。貴女の名前を伺っても?」
「あ!ごめんなさい!わたし自分のことばっかりで!わたし、ソフィラって言います!ソフィラ・モルフォー。おねえちゃんはロジュリア・モルフォーです。冒険者さんではありませんがおねえちゃんはよく冒険者さんたちを助けてました。えっと、それからそれから…。」
「う、ううん。」
「ガネット、起きたか?」
「うん。でもまだ気持ち悪いかも。目がグルグルして…カイヤくんが二人いるみたい…。あと、女の子が見える。」
「!それは大変ですね!なんとかしないと!でも、ここじゃ目立ちますし…。カイヤ様、ガネット様を連れてお外に出てもらってもいいですか?人目が少ないところに行きます。」
「え?は、はい。行くぞガネット。立てるか?」
「うん。」
ふらふらとおぼつかない足取りで立ち上がるガネットのに肩を貸しながらソフィラさんの後をついていく。酒場を出て路地を抜け、石造りの建物も道も見えなくなり、草花が生え始めた場所を歩いているうちにだんだんと人気がなくなり、木が生い茂ってきた。森の中なのか?不思議なことに道という道がないのに彼女のあとは進みやすい。まるで彼女のことを木々が避けているような錯覚さえも感じる。これはどういうことだろうか?
「あの、こんな森の奥まで行ってしまったら出れないのでは?」
「心配しないでください。森はわたしたち妖精族の生まれる場所。迷いはしないのです。それにあそこは人目が多すぎますし、人工物も多い。唄の効果がちょっとだけ落ちてしまうのですよ。」
「唄!?」
「はい。あ、つきました。ここなら唄っても大丈夫そうですね。ささ、ガネット様をこちらへ。」
木々を搔き分けて着いたのは綺麗な泉だった。水は澄んで中の様子が肉眼でもはっきりとわかる。所々綺麗な色をした魚たちが跳ねてはポチャンと静かな音を立てた。泉のそばの草が柔らかい場所へガネットを寝かせると、ソフィラさんが横に座って目を瞑り、背中の羽を広げた。瞳と同じ綺麗で鮮やかな青をしている。
「いきます!」
刹那聞こえてきたのはこの世のものとは思えないほど透き通った声色だった。不純なものなど一切感じさせない美しいや可愛らしいなどの言葉はではきっと言い表せないだろう。鈴のよう、いや違う。鈴よりも綺麗だ。綺麗…思わず聞き入っていると彼女が周りにきらきらとした光を纏っていることに気が付いた。そうだ、彼女の声色はまるで光のよう…その光は蛍のようにひらひらと空間を泳いでいる。その光がガネットに落ちては消えていくのをただ見つめていると彼女が唄い終わった。途端に消える光。あれは、ガネットの言っていた魔力?なのだろうか。
「んん?え?あ、アタシ、視界が戻ってる?気持ち悪くない!カイヤくんもひとりだし、女の子…はいる!」
「元気になったのか?ガネット?」
「え?あ、うん。もう大丈夫。」
「わぁ!良かったです!わたし役に立てたんですね!嬉しい!」
「え?この子だれ!?」
混乱しているガネットにこれまでの経緯を話すとガネットはとても驚いた顔をした。
「!?妖精族!!凄い!本物だぁ!初めて見た!か、可愛い!えっと、ソフィラちゃん、だよね!ありがとう!とっても楽になった!」
「いえいえ、そんなそんな。大したことじゃないのですよ。それよりもガネット様が元気になってよかったぁ。わたしの唄、おねえちゃんと比べて効果が薄くて、ちゃんと効くかわからなかったから安心です。」
「ううん。凄かったよなんだか、あったかかった。ほわほわ?しててふわ~って。これ、回復魔法?」
「わたしの属性は光なのです。だから傷とか病気とか癒すのが得意で、ガネット様に使ったのも癒しの唄だったので、人間さんの使う回復魔法とはちょっと違いますけど回復系の効果があります。」
「凄い本には書いてあったけど本当に唄に変換して使うんだ。魔力変換効率はどうなってるの?他の唄もあるの?効果はどれくらい?持続時間は?唄が詠唱の役割を果たしてるの?攻撃系の魔法はあるの?杖とかは使わないの?魔力切れは起こすの?あとはあとは…!」
「えっとえっと。」
「はいストップ。ソフィラさん困ってるだろ。」
熱くなっているガネットの肩を叩く。初対面の人に対して質問攻めとは…。
「あ。ごめん。つい気になちゃって。ごめんね、ソフィラちゃん。」
「いいんです!ガネット様はとっても勉強熱心な人間さんなんですね。」
「えへへ。ありがとう、ソフィラちゃん。」
「盛り上がってるとこすまないが、そろそろ先に進まないといけない。俺たちは遊びに来たわけじゃないからな。」
「あ!そうだったね、ごめん。」
「そうでした!では皆さんを妖精の国にご案内しますね。人間さんが妖精の国を見れば何か分かるかもしれないのです!」
「妖精の国はさっきの賑わったところでは?」
「あそこは外から来る人たちように造られた港町なのです。冒険者さんたちや商人さん、旅行に来てくれる人たちが主流ですので、本来の妖精の国はもっともっと深い自然に囲まれた森の奥にあるのですよ。いつもなら皆さん向けに妖精の国への道が開通しているのですが、この状況ですので勝手に出入りされると犯人さんが逃げてしまう可能性もあります。なので、入る前に調査を受けて初めて身分が怪しくないと証明できた方が妖精族の案内を受けて国にたどり着けるのですよ。妖精族でない方が勝手に森の奥に入ってしまわれると、皆さま迷ってしまって運が悪ければ死んでしまうのです。」
「え!?そんなに深いのこの森!?」
「はい!深いですよ。国への道は一本道なのですが最奥に近づくにつれて霧が出てきてしまうのです。普段は皆さん用に霧避けの唄を唄っているのですが…それをするわけにはいかないのです。それにわたしたちは自然と共に生きる種族ですので平気なのですが人間さんや他の種族さんにはこの森はどうも牙を剥きだしてしまうらしいのです。」
「こわぁ。」
「ですから!絶対に離れないでくださいね。」
「ちょ、ちょっと待ってください。ソフィラさんの言ったことが本当だとするならば、俺たちはその、案内される資格がないと思うのですが。」
彼女の言ったことをまとめると身分と素性の安全性を妖精族に示し、かつ妖精族の案内を得てようやく彼女らの国に入ることを許されるということだろう。ならば、その調査を受けてない俺たちは入れないのではないか?港町に冒険者が溢れかえっていたのを考えると簡単に済むものではなさそうだ。それなのに俺たちを案内すると言ったのはどうしてなのだろう?
「それは、わたしが大丈夫だと判断したからなのです!カイヤ様もガネット様も悪い人間さんには思えません。わたし、おねえちゃんよりも唄は下手だし、綺麗じゃないし、おばかだけど人を見る目はあるのです。だから、お二人は大丈夫なのです!」
「そ、そうですか…。」
「まぁ、いいじゃんいいじゃんカイヤくん!せっかくこう言ってくれてるんだし!」
「そう、か?」
「そうなのです!行きましょう!カイヤ様はわたしを騙して殺すような冒険者さんじゃないはずです!」
「そりゃあ…。」
それはそうだ。当たり前だ。そんなのは冒険者ではなくただの通り魔である。
「歩きながらおねえちゃんの情報も教えちゃいます!」
「…。」
「ねぇねぇ、ソフィラちゃんのお姉さんって聖女様なんでしょ?どうして消えちゃったのとか心当たりはあるの?」
「おい…。」
歩き出したと思えば段階を踏まずにいきなり、芯を突きに行くガネット。無鉄砲というか何というか、姉が消えているんだ、思うところもあるだろうに。それにソフィラさんは優しい人だ。見知らずの人を助けるほどには、最初こそ情報が得られると喜んだが、今更ながら非道だと思う。人の家族が消えているのを喜んでるのも同義ではないか。駄目だ。これではアイツと何も変わらない。
険しい顔で自分の心情を思い返しては後悔をしていると彼女は思い出を手繰るような目をして口を開いた。
「心当たり…は正直ないのです。おねえちゃんはとっても優しくて賢くて、責任感がある人でした。そんな、おねえちゃんが消えてしまうなんて今も信じられないのです。みんなに優しくて、毎日毎日この土地を浄化して回る完璧なみんなの聖女様。それが姉です。そんな姉がわたしの誇りです。みんなに期待されて、それに微笑みながら応える。わたしのおねえちゃん。今はどこにいるのかわからない。突然消えてしまいました。」
「消えちゃったっていうのは、攫われちゃったってこと?」
「少なくともわたしたちはそう思っているのです。姉は国を揺るがす力をその声に、唄に秘めている。外から来る悪い方は姉を狙うでしょう。いつもなら護衛さんがいるのですが、姉が消えてしまったのは夜でした。突然浄化に行く、ただ一言そういって帰ってこなかった。」
「その時誰も追わなかったの?」
「姉が夜に一人で浄化をしに行くのは不思議なことではなかったのです。時折、1人になりたいと言って夜の森に足を踏み入れる。しばらくするとそよ風に乗って姉の唄が聞こえてくるのです。あの日もみんなみんなみんなみんな全員がそうだと疑わなかった。おかしいと思ったのは唄が聞こえてこないことに気が付いた事でした。私の家族、護衛、全員に嫌な予感が走り、急いで姉の後を追いました。でも、どこを探しても、朝になっても、名前を必死に叫んでも姉の姿はおろか存在した痕跡まで見つからなかった。みんな安心していたのです。霧に守られているから、姉は慕われているから、姉は強いから…誰も手出しはできないだろうと。これまで外から来る悪い方たちはみんな霧の中で迷ってしまうか、姉に近づけたとしても姉の唄の前では無気力になるか、護衛さんに返り討ちにされるかでした。だから、油断をしてしまった。わたしたちは…わたしは姉に守られていながら姉を守れなかった。何もできなかった。気づけなかった。」
彼女は眉をきゅっとひそめて唇を噛みしめ、どこか遠くを見つめている。多分、後悔しているのだろう。姉が攫われた日に何もできなかった自分を。
ふと、あの日の自分を彼女に重ねた。目の前で両親を、最愛の兄を何でもないように、ごく当たり前だというように燃やされたあの日。あの時、すぐに立ち上がり、兄を突き飛ばしていれば、俺が代わりになれば…一緒に燃やされていれば。何度頭の中で考えた?何度自分を呪った?何度後悔をした?…同じだ。彼女は俺と同じ。同じ苦しみを知っている。だからこそ、彼女の姉は必ず見つけなければならない。彼女は合わなければならない。生きて。姉に。必ず。
「カイヤくん。」
「ん。」
ガネットの声にはっと顔を上げる。
「霧が濃くなってきたよ。ボーっとしてると迷っちゃう。」
「あぁ、すまん。」
ガネットの言う通り周りには霧が立ち込めている。奥に進めば進むほど視界がぼやけ、すでに遠くの木々は見えなくなった。これだけ濃い霧だ。確かに迷うだろう。そんな霧の中を一寸の迷いもなく進んでいく小さい背中が何と頼もしいことか。
「あ!見えましたよ!あれが妖精の国の入り口です!」
「!?」
「?え?」
突然、彼女が足を止めた。目の前には何もない。ただ木々が互いの枝を絡ませているだけだ。これのどこが入口だというのか。
「何もないように見えるんだけど?」
「あぁ!人間さんには見えないんでした!こっちです。この木の間をくぐってみてください!」
言われたとおりに枝と枝の間をくぐる。
「ッ!」
「えぇぇ!?」
くぐった先、視界いっぱいに広がる太陽の光。青々とした葉。目がチカチカするほど鮮やかな色の花。澄んだ鳥の声、どこかから聞こえる清らかな水の音。先程まで薄暗く静かで視界がほぼ靄で覆われていたとは思えないぐらいの世界の変わりよう。自然豊かとは聞いていた。だが、まさかここまでとは。もはや豊かすぎて現実かどうかも怪しくなってきた。ここが、妖精の住む国。
「ようこそ。わたしたち妖精族の住む国へ。歓迎します、カイヤ様、ガネット様。」
「あ。」
「わぁぁ!!ソフィラちゃん、ここが妖精の国なんだね!とっても綺麗!まるで宝石箱みたい!」
「ふふ。そう言ってもらえると嬉しいです。姉の守る国ですから。」
そう言って笑う彼女の顔は嬉しそうだった。本当にこの国が、姉が好きなんだとわかる。
「でも、凄いね!さっきの森の雰囲気とは全然違うよ!霧の中にこんな綺麗な場所があるなんて信じられない。全然わからなかった!」
「森と霧はこの国を守る砦のようなものですからそう簡単にわかってしまっては困るのです!」
「でも、あんな近くだったのに全然わからなかったよ?」
「森の霧は妖精族以外を惑わせ、国を隠す役割を担っているのですよ。」
「幻…を見せられていたと?」
「幻というよりはですね…認識を阻害させると言った方が正しいかもです。」
「なるほど。ただの霧じゃないんだな。」
「はい!魔力を含んでいるのです!」
「わお!妖精の国って凄いねぇ。これじゃ誰も見つけられないよ。」
「その、はずなんです。」
途端にしゅんと項垂れる彼女。確かに見ている限りではとても聖女様が攫われるなんて思えない。しかし事実、事は既に起こった後だ。一体どうやって犯人は聖女様を?真っ先に思いつくのは同じ妖精族による犯行だが、そうだとしたらこんな大事になってはいない。聖女様という大層な身分のお方が消えたとなれば血眼で国中を探すだろう。隠れてはいられないし、聖女様も人形ではなく生身の者。抵抗はするだろう。そもそも、聖女様より力をつけた妖精族がいるのだろうか。あぁ、駄目だ。情報が少なすぎる。
「あの…。」
さらなる情報を得ようと彼女に声を掛けたその時だった。
「!ソフィラ!」
「うぐっ!」
「カイヤくん!」
怒鳴るような声が聞こえ、ドンという音と共に肩に響く鈍い痛み、思わず目を瞑り体がよろめくのを感じる。何とか踏みとどまった矢先、目を開けば現れたのは視界いっぱいの緑。それが何かの植物の先端だと気が付いたのはそれがもう目の前、瞬きをすればまつ毛の先端に触れるか否かの距離…。避けなければ。避けなければ避けなければ。頭は必死に体に命令を出すのに当の胴体はちっとも動かない。このままでは…。
あ、と情けない声を出したのは誰だったろう。きっと俺だ。目を潰される恐怖か、はたまた焦りか、わからないがこの後に起こる悲惨な状態が脳裏に浮かんで呼吸が止まる。時が止まったかのように思えたその刹那、ガネットの悲痛な声だけが耳に届いた。
彼女の名を呼んだのは誰だろう…
投稿が誠に遅くなりまして大変申し訳ないです…。忙しかったとだけ言い訳をしておきまス。




