93 大丈夫であって欲しいんだが
文化祭1日目は無事終了し、優は七海を家に送った後に帰宅してすぐにベッドに寝転んだ。
疲れが一気に来たのでそのまま目を瞑って今日の事を思い出す。
そんな事をしているうちに眠ってしまい、そのまま2時間ほど睡眠をとった。
目が覚めると外は暗くなっており、部屋もよく見えない。
現在は11月で時間的にもかなり冷えてきているはずだが、手からは温もりが感じられる。
そちらに目をやろうとした時に、一瞬視界に何か映った。
「…あ、お兄さん。おはようございます」
さりげなく有咲がベッドに侵入してきてさりげなく添い寝されていたようで、隣で笑顔を浮かべながら手を握っている。
そんな有咲に一瞬ジト目を向けた後、優は電気をつけて時計を確認する。
「もうこんな時間か」
18時である事を確認し、体を伸ばしていると丁度そこで一階から母の声が聞こえてくる。
「2人とも晩御飯できたわよ〜!」
夕食の完成の知らせが届き、2人は返事をした後に一階に降りていく。
扉を開け、右の方を見てみるとそこでは奈々が料理をせっせと食卓に運んでいた。
本日は父の優希は仕事が忙しくて遅くまで帰ってこれないらしい。
明日も忙しい事が予想されるため、恐らく文化祭に行く事は叶わないだろう。
優希が帰って来ていない事が分かった時にその事を実感し、有咲は悲しそうな表情を浮かべる。
「やっぱりお父さんは来れないのですね…」
「そうね〜。せっかく息子達の可愛い姿が見れるのにね〜」
(いや俺の可愛い姿は見れないけどな⁉︎)
割と本気で言ってそうな奈々に心の中でツッコミを入れた後、席に着いて手を合わせる。
「「「いただきます」」」
優以外の2人はお腹が空いていたようなので箸の動きがいつもより速く、とんでもないスピードで食事が進んでいる。
いつも低速で食事をしている女性陣に対し、いつも爆速の優は…
(昼のパフェのせいで全然お腹減ってないんですけど…)
圧倒的なボリュームのパフェのおかげで全然お腹が空いておらず、優の箸は中々進んでいない。
その事に有咲が気づき、優に心配そうな視線を向ける。
「お兄さん…もしかして疲れてお腹に入りませんか…?」
「いや…疲れたとかではないんだけど…」
「あら〜体調が悪いのなら無理しなくていいのよ?ほら、ゆっくり食べれるだけでいいからね?」
「別に体調が悪いわけでもないから。ただいつもよりお腹が空いていないだけだよ。昼に食べすぎてな…」
そこでパフェのことを思い出し、優は少し天国に意識を持っていかれそうになる。
頭がぼーっとし、意識をが遠のいていく。
だが今回は持ち堪える事ができ、優は気を確かに持ってあることを考える。
(いや今になっても意識持っていかれそうになるってマジで何が入ってたの⁉︎)
本気で何が入っていたのか心配になる。
そして同じ物を食べた人物も心配になる。
(七海…大丈夫かな…)
頭の中であの時の七海の表情を思い出したところで有咲の声が聞こえてきた。
「お兄さん…?本当に大丈夫ですか?何か心配されているようですが」
妹に完全に心を読まれていて、優は少し笑ってしまう。
「ははは…大丈夫だよ。ちょっと昼に食べたものが大丈夫か心配になっただけだよ」
「それ、本当に大丈夫なのですか?」
有咲に本気の心配する目を向けられ、優は笑顔を作って大丈夫なことをし示す。
「まあまあ…何もないって。多分…」
しっかり保険をかけておき、優はこの話を終わらせる。
本当に大丈夫なのだろうか。
大丈夫であってくれ。
そんな事を考えながら食事を続ける。




