87 何言ってもダメなんだが
文化祭の出し物は決まり、いよいよ準備を始めたいところだが、生徒達はある事に絶望していた。
「何でこの時期にテストが…」
「今回はヤバいかもなぁ」
そう、みんな大好き中間テストだ。
今回のテストで赤点を取ると、文化祭の準備の時にかなり迷惑をかけてしまうので、みんな必死で勉強している。
そんな中、全く勉強もせずにテストに挑もうとしている生徒が1人。
「俺にかかればテストぐらい余裕さッ」
彼は優の友達の聖澤泰明だ。
現在時間は13時過ぎで、2人は教室でで弁当を食べている。
どうやって七海から逃れたんだって?
それはまぁ…口にはしない方が良いので黙っておく。
とにかく2人でゆったり会話できる時間ができたのでよしとする。
と、ここで優が泰明の発言をガン無視していた事に気づくが、やっぱり無視をし通すことにする。
数秒ガッツリシカトしていると、泰明が冷めた目でこちらを見てくる。
「何か言ってくれない?俺が変なやつみたいになるじゃん」
「いや変なやつだろ」
泰明の回りくどい正常者アピールをしっかり否定しておき、さらに追い打ちをかける。
「学年最下位のやつが勉強しないって…それ最下位より下に行ってしまうんじゃね?」
「いや最下位より下ってなに⁉︎」
「人外…とか?」
「いや誰が顔も性格も人間以下のゴミカス野郎だ」
「うーん…誰もそこまで言ってないけど否定はできない…」
「いや否定しろ?わざわざボケたんだからツッコんでくれよ」
「今のボケてたの⁉︎気づかなかった」
泰明の自虐ネタに気づかないふりをしてしらを切り通す。
そんな優の反応を見て泰明は驚いた顔をしながらツッコミに回る。
「いや気づけ?てかその反応気づいてるだろ」
「さて、何のことやら」
ここで泰明が諦め、優の勝利となった。
別に勝ち負けとかないんだけどね。
ともかく優は話題を変えて口を開く。
「んで、文化祭の話なんだけどさ」
「おっどした?」
露骨に食いついてきたので若干のけ反りつつ話を続ける。
「メイド喫茶とかして大丈夫なのかなって」
「ふむふむそれはつまりどういう意味だね?」
「いや普通に一般客も来るのに現役JKがメイド服着るのはマズイかもなって」
「なるほど…つまり桜庭さんのメイド服姿を独占したいということか?」
「…はい?」
理解不能の言葉が飛んできてつい変な声が出てしまう。
そしてすぐに意識を取り戻して早めに否定しておく。
「いやいや、独占ってなんだよ…」
優がそう言った瞬間、泰明が胸ぐらを掴んで思いっきり体を寄せてくる。
「とぼけんじゃねぇ!お前が桜庭さんとそういう関係なのはわかってんだよ羨ましいなぁ!」
少し大声で言っているので周りから視線が集まるので、優はすぐさま否定しにかかる。
「いやそういう関係って何だよ⁉︎七海とはただの友達だからな⁉︎」
優は良い感じに否定できたと思っていたが、その思考は周りの生徒の表情を見ると消え失せてしまう。
「…は?いやだから2人は付き合ってんだろ?」
「…は?」
泰明の発言を聞いて周りの何人かが頷いているので完全に勘違いされている事を理解し、何とか正しい認識にしてもらおうと努力する。
「いや本当に七海とはただの幼馴染であり友達だよ。そこに恋愛感情なんてないよ」
結構強めを否定しておき、間違った認識を改めてもらおうとする。
だがしかし、周りの生徒の何人かは納得しておらず、優に鋭い視線を送ってきている。
(あ、これ何言ってもダメなやつ…)
その後も優は何とか頑張ってみるが、結局何人かには誤解されたままだったとか。




