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82 打ち上げなんだが


体育祭の打ち上げでクラスメイトで焼肉屋に集まり、いよいよ乾杯の挨拶が始まろうとしていた。


当然乾杯の音頭をとるのは柊太(しゅうた)で、1人立ち上がり、グラスを持って大きな声を出す。


「体育祭お疲れ様!みんなのお陰で楽しかった!これからもよろしく!乾杯!」

「「「「「乾杯!」」」」」


柊太の合図で全員がグラスを掲げ、徐々に乾杯して行く。

当然(ゆう)も近くの席の人と乾杯し、ジュースを一気に飲む。


「もう、そんなに一気に飲んだらお肉食べられなくなっちゃうよ?」


隣にいる七海(ななみ)に咎められるが、優はそれに負けずに反抗する。


「いや、これが醍醐味なんだ。それにまだまだ胃は空いてるし」


優は謎のドヤ顔をし、腰に手を当てて胸を張っている。


それを見て七海は少し引いたような表情をし、優をじっと見つめる。


数秒後七海は目をサッとを肉の方にやり、素早く肉を焼き始める。

その軽やかでかつ正確な動きに優は驚きながらも、ひっそりと端の方で肉を焼いて行く。


焼けた肉を取り皿に移し、最初の肉を頬張る。


「あ〜うめぇ〜」


あまりの美味しさに顔を上げて自分の世界に入ってしまうが、何とか意識を取り戻して白米も同時に食べる。


「もう、そんなに急いで食べなくてもいいでしょ?美味しいのは分かるけどね?」


七海に親のように怒られるが、その声は届いておらず、優はご飯に夢中になっている。


七海は諦めて肉の味を堪能する事にする。


そんな中優は肉を堪能していたわけだが、ここで近くのクラスメイトから声をかけられる。


「そういえば如月(きさらぎ)くん、すごい早かったねぇ。滅茶苦茶意外だったんだけど」


それは恐らく最後の組対抗リレーの話だろう。


優はあの時最下位から一気に全員を抜いてトップに躍り出たのだ。


しかも全員先輩で、差もかなりあったのだ。


その状況からの打開なら、尚更印象に残っているだろう。


1人のクラスメイトが話し出すと、他の人もやってきてこの場はその話で満たされていった。


それに対して優は苦笑いを浮かべて反応に困っているが、七海は笑顔で滅茶苦茶嬉しそうにしている。


(狙い通り…)


一瞬表情が悪者のそれはなったが、それには気づいていないフリをしつつ、この場を沈めにかかる。


「いやーたまたまだよ。たまたま相手が怪我とかで遅かっただけだよ。多分」

「そんな事ないよ?あれは優くんの実力だったよ」

「確かにそうだね」


七海と璃々(りり)のせいで誤魔化す事は出来ず、優は身体を小さくする。


そんな優に構う事なく、七海の口は暴走を続ける。


「相手は2、3年生の運動部なのにその人達を難なく抜いていくなんて…本当にすごいよ」


「確かに如月くんは凄いけど、七海ちゃんもすごかったよ?」

「そんな事ないよ。優くんに比べたら大した事ないよ」

「確かにインパクトは如月くんの方があったけど、七海ちゃんも十分すごい走りだったよ」


自分のことを過小評価している仲間に、璃々が笑顔で褒めてあげている。


実際七海のスピードに衝撃を受けた人は多かったので、この場でも多くの人が共感している。


その反応を見て七海は少し驚き、目を見開く。


「そう…だった…?ありがとね」


ちょっと照れくさそうにしながら両手をもじもじさせている。


「でも…優勝できたのはみんなのお陰だから」

「確かにそうだねー。七海ちゃんの力が大きかったのは事実だけど、やっぱりみんなの力あってこそだったよね」


璃々が少し声を大きくして多くのクラスメイトに聞こえるように話している。


それを聞いて数人の男子が大きく喜び、その場は盛り上がっていく。


七海と璃々もそれを見ながら笑う。


クラスメイトが大きく盛り上がっている中、優はというと…


(あぁ…なんか疲れた…)


身体を縮めて体育座りをして端の方で暗い顔をしていた。


優は完全に気配を消していたので存在が誰かにバレる事はなかった。


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