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81 早く食べたいんだが


体育祭終了から数日経った休日、(ゆう)は打ち上げに向かうべく準備を進めていた。


普段私服を着る時は身なりを整えるようにしているのだが、今回は話が違う。


学校ではあまり目立たないようにわざと着崩していたり寝癖をつけていたりしてるので、クラスメイトが集まる中にどのような格好で行くべきか悩んでいた。


鏡の前で頭を悩ませていると、妹が突然こちらに向かってきた。


「お兄さん、もう行ってしまうのですね。あまりかっこよくしすぎてはダメですよ?女の子が寄って来ちゃいますから」


少し寂しそうな顔をしながら有咲(ありさ)は続ける。


「でも…学校のようにわざと寝癖を立てたりするのはダメですよ?それは嫌ですから」


心は完全に読まれていたようで、優は少しビクッとする。


その反応で図星だと分かったらしく、有咲が呆れた目で見つめてくる。


「…お兄さん?今日の主役はおそらくお兄さんですから、ちゃんとした格好をしないといけませんよ?」


ちゃんとした格好をしないといけないとかカッコよくしすぎたらいけないとか、どっちなんだ。


優はそのような思考に至るが、それを口に出す事はなく有咲に微笑む。


「ああ、そうだな。じゃあ体育祭の時みたいな感じでいいか?」

「はい、それが妥当だと思います」


結局そういう結論に至り、優は体育祭の時のような髪型に整える。


服装も目立ちすぎないように、かといって不格好にならないように注意しながらチョイスする。


準備をパパッと済ませ、足早に家を出る。


優は早歩きである場所まで向かう。


「あ、優くん」

「早いな。結構余裕持って来たつもりだったけど。ま、さっさと行くか」


優は七海(ななみ)の住むマンションまで行き、七海を連れて指定された店に向かう。


今回行くのは学生でも手が出しやすい焼肉の食べ放題の店だ。


その店の前に行くと、既に20人ほどの生徒が待機している形で店の前のベンチに座っていたり雑談したりしていた。


今回の主導者は勿論柊太(しゅうた)なので、到着した事を報告しに行く。


「よお柊太。俺と七海到着したぞ」


当然の如く2人で来ていることに少し変な視線を向けられるが、柊太は笑って確認を済ませる。


「おっけー。これであと15人かな」

「結構早く着いたつもりだったけど…みんな早いな」

「確かに。俺が来た時も既に5人ぐらいいて驚いたよ」

「ちなみにいつ来たの?」

「うーん…40分前ぐらい?」

「マジか…」


そんなに前からいるのかと驚きつつ、優は柊太の肩を揉んで労ってあげる。


すると柊太はすぐに感謝し、尊敬の目を向けて話しかけてくる。


「ホント、優は名前の通りの人間だな」

「それってどういう__」

「そうだよね!私もそう思う!」

「え…うん、そうだよね…?」


突然七海が大声で話に介入してきて驚いているようだが、笑顔は崩さずに会話している。


(コレが優しいヤツって言うんだよ…)


優は心の中でそう思いながらその場から離れて行く。


「あ、優くんまってー」


柊太と優の素晴らしさについて語っていた七海がすぐにこちらに向かってきた。


優はクラスメイト少し離れたところに逃げて行き、恥ずかしそうに下を向きながら腹の音を鳴らす。


「腹減った…」

「そうだね、早く食べたいね」


腹の周りをなでなでしている優に、七海が苦笑いしながら近づいてくる。


「優くん、昔から食いしん坊さんだもんね?」

「そうだったっけ?」

「うん、初めて料理して君に食べてもらった時も、すぐに完食しちゃったでしょ?」

「…そんな事もあったような?」

「あれ?覚えてない?」


優は露骨に目を逸らすが、七海の圧倒的な目力にやられ、何とか目線だけを戻す。


「いや…覚えてます…」


恐怖に怯える口を何とか開き、七海の表情を窺う。


七海は滅茶苦茶綺麗な笑顔になっていて、ルンルンで喜んでいる。


(ちょろ……)


「ん?何か失礼な事考えてない?」

「い、いやぁ…何も考えてないよ…?」


完全に心を読まれたが、何とか誤魔化してこの場を乗り切り、時間が来るまで何とか耐え切ろうと誓ったのだった。


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