表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/218

08 妹が可愛いすぎるんだが


「お兄さん、今日は一緒に寝ましょうか」


夕食を食べた後、突然有咲(ありさ)からとんでもない提案をされた。

どう考えても承諾するわけないだろう。


「いや、普通に無理だが?」

「無理じゃないです。ほら、病人なんですから早く寝ないと」


そう言いながら(ゆう)の部屋に連れていこうとしてくる。

だが、その手には乗らない。

こちらにもプライドがあるのだ。


「それに、お兄さん、疲れている時とか熱がある時はいつもうなされていますよね」


(よくそんなこと知ってるな)


確かに、疲れていたり熱があったりする時は大体嫌な夢を見る。

それを心配してくれているのだろう。この優しい妹は。


その心配は嬉しいのだが、流石に高校生の兄妹が一緒に寝るのはどうなのか。


そんな考えに至り、優は否定を続ける。


「いや…まぁ…そうだけど…流石に無理だから」


もう既にともに風呂に入っているのでプライドもクソもないが、お情け程度に抵抗する。


そこで、ある人物が話に割って入ってきた。


「優、たまには有咲のワガママを聞いてあげてもいいんじゃない?それに、有咲は本当に優のことを心配しているのよ?だから答えてあげないと」


話に無理矢理入ってきたのは母の奈々(なな)だ。

いつも温厚で優しいが、今回は真剣な眼差しで優を見ている。


そんな顔をされたら逆らえない。

これが親子なのだろうか。


優は首を縦に振った。

有咲はとても嬉しそうな表情で、ぴょんぴょん跳ねている。


カワイイな、君。


その姿を奈々は微笑みながら暖かい眼差しで眺めていた。

優も嬉しそうな妹の姿を見て、たまにはワガママを聞いてやろうと思っていた。


「それでは行きましょうか!お兄さん!」


満面の笑みで優に抱きついてきた。

そんな可愛らしい妹の頭を撫でた後、妹を連れて部屋へ向かう。


「ふふふ……」


本当に嬉しそうだな、この妹。


ちょっとブラコンすぎる気がするが、そこには目を背ける。


部屋の前に着いたところで、有咲が深呼吸をした。

何か決意を固めたかのような表情をしている。


その様子にやや呆れつつ、優は自室の扉を開く。

目の前には散らかり気味の部屋が。


有咲はそんな事を気にすることなく部屋に入り、即ベッドに入り、優を誘導した。


「ほら、こっちにきてください」

「えっと……失礼します」


電気を消し、有咲の居るベッドに入り込む。

すると有咲は控えめな笑顔を浮かべ、優の腕と腹の間に手を通し、抱きついてきた。


そんな妹に答えるように、優も抱き返す。


すると有咲は頬を真っ赤に染め、顔を隠すように抱きつく力を強めてくる。

そんな小さくて可愛い妹の姿を見ていると、自然に癒されてしまう。


数秒経ったところで有咲は抱きつく力を弱め、優の目を見る。


「お兄さん、今日は本当にごめんなさい」

「いいんだ、別に俺も悪かったんだしさ…だからこれでおあいこってことでさ、この話はもうしないでおこうぜ?」

「はい、そうですね…ありがとうございます、お兄さん」

「ああ」


そうやって2人の時間を過ごす。


とても楽しい時間だった。


次第に瞼が重くなってきた。


そのタイミングで有咲が身体を密着させてきた。


そしてこう呟いた。


「おやすみなさい、お兄さん。もし悪い夢をみてしまっても、私が必ずそばにいます。だから、安心して、ゆっくりお休みになってくださいね」


そんな優しい言葉が耳元で囁かれた。


ほとんど意識が夢の中に入ってしまっている優は、ただ一言、優しい妹に感謝を伝え、眠りに着く。


「ありがとう。おやすみ、有咲」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ