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79 いよいよラストなんだが


いよいよ体育祭も大詰めで、最後の組対抗リレーが始まろうとしている。


(ゆう)七海(ななみ)は列に並び、入場して行く。


その時、あらゆる人から声援を浴び、選手の緊張は高まっていく。


だが優の心に緊張の文字は無く、むしろ楽しみにしているまである。


大歓声にやって心が奮い立たされて、優の目は燃えている。


それを見て七海も気合を入れ、自分の出番を待つ。


まずは女子の1走がスタートラインに立って構える。


スターターの合図で走り出し、一気に加速して行く。


七海の所属する2組はやや出遅れ、4位からのスタートとなる。


そのまま流れ、結局4走の七海にバトンが渡るまでに1人も抜く事は出来なかった。


そんな状況の中バトンが渡され、七海は全速力で走り出す。


七海以外は2、3年生だが、そんなのお構いなしにどんどん抜いて行く。


先輩相手に楽々抜き去って行き、2位にまで順位は上がった。


だが1位の4組の3年生を抜く事は出来ず、2位のままバトンを先輩に託す。


5走の2年生も追いつく事は出来ず、全てはアンカーに託される。


2組のアンカーは3年生の陸上部なのだが、1位のアンカーも陸上部で、ライバル関係にあるらしい。


差は少しずつ縮まって行くが、なかなか抜けそうにない。


結局ギリギリ抜く事はできず、2組は2位で終わった。


有咲のいる4組が勝ち、席で有咲が嬉しそうに微笑んでいる。


その姿を見て若干癒されながらも、優も気持ちを入れる。


(よし、やるか)


優の心は闘志で溢れ、心なしかオーラが見えてくる。

そんな優を見て近くにいる七海は震える。


(優くん…そんなにやる気に…)


優のやる気のある表情に何とも言い難い感情になり、七海は身体を小さくしてただ優を見守る。


そうしているうちに1走の選手が移動し、もうすぐスタートするようだ。


その運命の瞬間を、全ての人が見守る。


「位置について、よーい…どん!」


その瞬間、選手は一斉に走り出した。


大歓声が上がり、それぞれの生徒を応援しているようだ。


七海も例外ではなく、2組の選手を応援している。

その応援のお陰か、その選手は一気に加速し、トップに躍り出る。


そのまま次の選手にバトンが渡り、その選手も何とか抜かれることなく次にバトンを回す。


いい調子で順位を保ち、出番はないかと油断していたその時だった。


「あっ」


何かに躓いて身体が前に倒れる。


両手を地面に着き、何とか受け身を取って再び走り出すが、もう遅かった。


既にあったリードは全てなくなり、先程とは状況が逆転している。


痛い足を何とか回しながら差を離されないように懸命に走っているが、やはり離されていくばかり。


流石の優もこの状況はマズイと思い、さらに気を引き締める。


結局最下位でバトンが回ってきて、一瞬重圧を感じる。


だが走り出した優の心にそのようなものは完全に消え去った。


ただ真剣に、ただひたすらに全速力で走る。


優の心には、それしか無かった。


自分が1番心地良いスピードで走れば、ただそれだけで他の選手を軽々しく抜くことができる。


最下位だったはずの2組は、気づけばトップにたっていた。


その時は、歓声よりも困惑の声が多かった。


だがやはり七海と家族達だけは全力で応援してくれていて、その声は優の耳にしっかり届いていた。


それによって俄然やる気が出た優はさらに加速し、差を離していく。


気づけば次の選手が目の前にいて、バトンを力強く次に託す。


「はぁ…はぁ…流石に疲れたな…」


久々に全力で走り、優はかなり疲労を感じていた。


重い足を回して何とか歩き、列に並んで座る。


「お疲れ様」


近くにいた七海に囁かれ、優は少しビクッとする。


「どうしたのそんなに驚いて。折角あんなにカッコよかったのに。ま、それが優くんって感じがして良いんだけど」


少し意地悪そうに七海が微笑んできて、優は少しドキッとする。


優はそれを何とか表に出さないよう抑えて、七海にジト目を向ける。


「なんだそれ。よくわかんねぇー」


やれやれといった感じで手を動かし、視線を前にやる。


後は勝利を祈るだけ。


優は心の中で手を合わせて勝利を祈った。


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