表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/218

76 やめてほしいんだが


少し歩くと、2人は親のいるテントの近くまで辿り着いた。


「久しぶりだね。(ゆう)くん」

(さとし)さん。ご無沙汰してます」

「優くん背伸びたねぇ」

翔子(しょうこ)さん。相変わらずお若いですね」

「やだもうー優くんったらー。お世辞が上手くなっちゃってー」


そこに居たのは優と七海(ななみ)の両親だ。


七海は想定外の出来事に、雷に打たれたかのような表情をしている。


「お父さん…お母さん…」


七海の姿を見て両親は安心し、立ち上がって七海に近づく。


そして七海が先に抱きついた。


「もう…来てくれるなら言ってよね」

「そのつもりだったんだけど…優希(ゆうき)にサプライズしようって言われてさ。だから俺たちはわるくない」

「はい?人のせいにしないでくれませんか?大体そっちが__」

「はいはい2人ともやめましょうねー。せっかくのサプライズが台無しじゃない」

「「…はい」」


奈々(なな)に軽く説教をされ、2人は静かになった。


丁度静かになったところで、優が口を開く。


「どうだ?驚いただろ」

「うん、とっても。でも、優くんは知ってたの?全然驚いてないみたいだけど」

「そうだねー。優には言ってないはずなんだけどね」


この場にいる全員が同じような反応で、優のリアクションに疑問を持っている。


その答えを話そうとした時に、ある少女に先を越される。


「きっと借り物競走の時にチラッと見えたんです。そうですよね?お兄さん」

「ん?…ああ」


背後から話を聞いていたらしい有咲(ありさ)が近づいてきていた。


その有咲の言葉を聞き、全員は納得する。


「クソーそれは盲点だった。まさかこっちに来ると思わなかったし」

「サプライズ失敗だねー。ま、七海に出来たからいっか」


親達が若干腑に落ちない表情をしているが、まぁ楽しそうではあるのでよしとしよう。


話がひと段落したところで、有咲も挨拶をする。


「お久しぶりです、智さん、翔子さん。お二人とも相変わらずお元気そうですなによりです」

「ご丁寧にどうも。有咲ちゃんも元気そうでなによりだよ」

「有咲ちゃんは淑女に育ったわねぇ」

「淑女かどうかは分かりませんが、とても良い教育をされてきましたので。親のおかげです」

「「有咲…」」


優希と奈々は感動して涙を流しそうになっている。


(いや何この茶番…)


何ともわざとらしい会話に、優は面倒臭さを感じていた。


この場の雰囲気を無視し、優は優希の隣に座る。


そこでついに七海が一歩前に出て挨拶をする。


「2人ともお久しぶりです。実は今日は1つお願いがありまして…」

「ん?お願い?」

「七海ちゃんのお願いなら何でも聞いちゃうわね〜」


七海は頬を赤く染めながら2人を表情を窺っている。


そして意を決したように表情を変え、頭を下げる。


「優くんを私にください!」


勢い良くとんでもない言葉が口から発せられ、その場にいた全員が驚く。


そんな中、有咲だけが素早く冷静になり、いち早く口を開く。


「そんなのいけません。お兄さんは私のですから」

「有咲ちゃんは静かにしてて。今はご両親とお話ししているの」


七海は有咲の方を見向きもせず、優希と奈々に期待の視線を送っている。


それに応えるように、2人は七海に喜びの感情をぶつける。


「とうとう優に春が…七海ちゃん、優をよろしくお願いします」

「七海ちゃんなら大歓迎よ〜」

「でも大丈夫?本当に優でいいのか?もっと他にもいるんじゃ…」


優希の言葉には真っ向から笑顔を返す。


「いえ、優くんがいいんです。優くんじゃないとだめなんです」

「七海ちゃん…」

「優…いい人と結ばれて良かったな…」


奈々は嬉しそうに泣き、優希は肩に手を置いて褒め称えてくる。


その状況に優は…


「いや勝手に話進めてんじゃねぇぇ!」


結構怒っていて、いつもよりも声を荒げてこの場にいる全員に喝を入れる。


優の努力の甲斐あってその場は何とか収まり、平和な状況で昼食を食べ始めたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ