07 確かに成長していたんだが
「ただいまー」
「だだい゛ま゛…」
「おかえり〜」
有咲の肩を借りて徒歩で帰ろうとしていたら、母の如月奈々が車で迎えに来てくれて、その車に乗って帰宅した。
そして即有咲にベッドに連れていかれる。
が、優は反抗するように浴室へ向かう。
「お兄さん?お風呂ではなくベッドに行かないと」
「いや、流石にサッパリしてから寝たいというか」
「…確かにそうですね、では一緒に入りましょうか」
「⁉︎」
突然耳に入ってきた衝撃的な発言に動揺してしまう。
「いやいやいや、普通に意味わからないし」
「病人を1人でお風呂に入れるわけにはいきませんよね?だからお供します」
(いやだからって言われても…)
最後に一緒に入ったのは中1の頃だったか。
ほぼ毎日一緒に入ろうと言われることはあるのだが、その度に頑張って断っている。
だが、今回は頭がボーッとしているのもあり、誰かに助けて貰いたい欲(?)が発生していた。
なので優はいつものようにしぶとく断らず、すぐに折れてしまった。
「まぁ…タオル巻けよ?」
「え?兄妹なのにそんなものはいりません!ありのままの姿で入浴しましょう!」
「え…あ…ああ…」
頭が回転していない兄に勢いよく迫り、何とか勝利した妹。
そして優は半分理解していない状態で服を脱ぎ始める。
横で妹も脱いでいるようだが、ほとんど気にすることなく浴室に入る。
体を洗い始めようとしたその時、妹が扉を開けた。
「失礼します。お兄さん」
長い黒髪をお団子にし、やや恥ずかしそうに頬を染めていて、目が泳ぎまくっている。
いつも華奢で小さい体だなと思っていた優は、服を着ていない有咲を見てさらにその気持ちを強めた。
「有咲、ちゃんとご飯食べて運動してるか?」
「はい、ちゃんと食べて運動もしていますが……その…あんまりじっと見られると恥ずかしいです…」
全身を真っ赤に染めて恥ずかしそうに顔を隠している。
その反面、優は本当に心配しているようだった。
有咲は産まれた時から小さくてよく病気になっていた。
だが、立派に育ってきた妹を見て、優は安心している。
「ホント…成長したな…」
ついそんな言葉が漏れてしまう。
その言葉を聞いた有咲は…
「………」
恥ずかしくて頭から湯気が出ている。
そんなに恥ずかしいことを言っただろうか。
「あの…その…確かに成長…しましたけど…そんなに見られると…」
「ん………ん⁉︎」
ここでようやく自分の失態に気付いた。
ただのエロオヤジみたいなこと言ってた。
「あ…あ…えと…そういう意味じゃないっていうか…」
何とか便宜を図るが無駄のようだった。
「べ…別にいいんです…お兄さんになら…いくらでも見られていいですから…」
「いや良くないよ⁉︎」
おもむろに身体をこちらに向けてさらけ出してくる。
今にも頭が噴火しそうになっているのに、隠そうとする気配がない。
是非その熱気を他の部分で生かして欲しい。
「と、とりあえず体洗うか」
有咲に背を向けて石鹸をボディタオルにつけ、体を洗おうとする。
すると有咲の手がボディタオルに伸び、スッと奪い去っていった。
そしてその手が優の上半身に伸びる。
その時かなり強めに身体を密着させてきていたので、柔らかい感触が伝わっている。
それを気にしないように必死になっていると、すでに上半身は終わっていて、次は下半身。
だが、流石に下半身を妹に洗ってもらうわけにはいかないので、ボディタオルを奪い、自分で洗おうとする。
「な、何で自分で洗おうとしているのですか?ほら、私が洗って差し上げますよ?」
「いや…そう言う問題じゃ…」
「ほら、早く渡してください」
気付けば奪われていた。早すぎる。
そして下半身に手が…。
(あ…やば……)
優はなす術なく有咲の思うがままになるのだった。