54 とんでもない事があったんだが
「やっぱり如月くんは色仕掛けしないと落ちないかもね〜」
先日水着を買いに行った際にカフェでの作戦会議の時に璃々に言われた言葉。
それを聞いた時は驚きで顔が赤くなった。
しかし、今まで散々好きや愛していると言ったのに全然好きになってくれる気配がない。
こうなると最終手段を使うしかない。
そう璃々に提案された。
七海もやるだけやってみようと思い、今回の海デートで試してみる事にした。
で、今現在胸を優の腕に押し当てている訳だが…
(うぅ〜恥ずかしぃ…)
滅茶苦茶恥ずかしいのだ。
今まで男の人とここまで親密な関係になった事がないのだから当然の事だ。
七海は清廉潔白(?)な純血少女なのだ。
そんな七海は頑張って優にくっついて見たのだが、どうにも優からの反応が得られない。
なので少し不安な気持ちになってしまう。
(優くん…私に…興味無いのかな…私はこんなにもドキドキしてるのに…)
そんなことを考えながらも、心臓の鼓動は早くなっていく。
七海は不安な気持ちからか、抱きつく力を更に強める。
そうすると当然、アレも凄く押し付けられる。
ここで、優は我慢の限界を迎える。
優は片手で七海の背中を持ち、もう片方の手で肩を掴んで軽く押し倒し、肩にあった手を七海の顔の横の地面に押し当てた。
「え…えぇぇぇ⁉︎」
七海は優の想像以上の反応に頭が混乱する。
(急に押し倒すってどういう事⁉︎それってつまりそういうことで優くんはアレがああなっていてそれで私のアレをああしてあぁぁぁぁ⁉︎)
全身を赤くして脳を混乱させている七海に、優は顔を近づけて小声で話す。
「七海…俺だって男なんだ…。そういう事されると…こうなっちまうんだよ…。だから次からはあんまりこういう事はしない方が良いぞ」
直後、優は両手を七海から離して立ち上がる。
「さ、そろそろ帰るか?」
七海はまだ目を見開いて混乱しているが、今はとにかく優から離れたくて、その言葉を肯定する。
「う…うん…」
恥ずかしくて多分とんでもない顔をしているから、今だけは優から離れたい。
その思いで七海は急ぎ足で更衣室に向かう。
(え…?あれ…?今さっき何が…)
七海の脳はまだ処理が追いついておらず、ヨレヨレしながら着替えをする。
着替えが終わる頃に脳が処理するのを諦め、一周回って機嫌が良くなった。
「あ、優くーん!こっちこっちー!」
「お、いたいた。じゃ、帰るか」
「うん!」
2人は歩いて駅まで向かい、30分ほど電車に乗って最寄り駅まで帰る。
駅を出て、優は七海を家まで送って行く。
マンションの前に着いたところで七海は立ち止まってこちらを向いてくる。
「優くん、今日は楽しかった。ありがと」
七海はそう言って笑いかける。
恥ずかしい事も多かったが、心底楽しかったのは事実のようだ。
それが分かり、優はホッとした。
(七海の笑顔が見れて良かったな)
七海の笑顔を見ると、心から癒される。
七海の笑顔を見ると、心から嬉しくなる。
その気持ちを噛み締めながら、優は別れを告げる。
「楽しかったなら良かったよ。じゃ、またな」
優しい表情で七海をまた遊びに誘う。
すると七海は嬉しそうに子供のような笑顔を浮かべる。
「うん!また一緒に遊ぼうね!」
「ああ」
2人は手を振り合ってそれぞれの家に帰って行った。




