47 寝落ちはやめておきたいんだが
(あー何とか乗り切った…)
あの後もしっかりデートは続き、2人でゲームをしたり耳かきしたり、お風呂に入ったり…。
そういった感じでおうちデートは幕を閉じ、優は部屋でゴロゴロしていた。
ベッドで寝転がり、ダラダラとスマホをいじる。
無心でしばらく動画を見ていると、ある時一件の通知が画面上に現れた。
それは七海からの連絡を知らせるものだったので、すぐさまその通知を押して連絡を取る。
『優くん』
『なんだ?』
『今週の日曜日空いてる?』
『ああ、空いてるけど』
『海デートしよ』
大体予想通り。
七海から連絡してくる時は8割ぐらいがデートの誘いなので分かってた。
いつもは断っているが、今回は約束しているのですんなり承諾する。
その後は時間や場所などを決めていたんだが…突然七海から電話がかかってきた。
別に電話するほどの内容じゃないだろとか思いながらも電話に出る。
【もしもし、聞こえる?】
「ああ、聞こえてるよ。…で、なぜ電話?」
【それはまぁ…声が聞きたかったから?】
「なんで疑問系?というか、電話の声は本人の声じゃなくて__」
【まあまあそんな事は気にしない】
「はあ…」
結局七海に押し切られ、電話は継続する。
【昨日はありがとね。久々にすごく楽しめたよ】
「…そうか…それならよかったよ」
(久々…か…)
それは即ち最近楽しかったことがほとんど無かったということ。
優はそんな悲しい妄想をしてしまう。
してしまわずにはいられない。
そんな風にじーっと黙り込んでしまった優に七海は疑問を抱いている。
【?…どうかした?】
「…いや、なんでもないよ。楽しんでもらえたなら何よりだよ」
【うん!あ、ちなみに私は前のデートもとっても楽しかったよ?】
「はは…そうか」
七海には優の考えている事がなんとなく分かってしまったのだろう。
そんな七海に優は申し訳ない気持ちになり、罪悪感が増してしまう。
だが、前のデートの楽しかったところを語っている七海の声を聞くとそんな物は消えてしまった。
(七海の声…こんなに綺麗だっけ…)
電話で聞いている声は実際の声とは異なるのだが、それでも優は七海の声を本気で綺麗だと思った。
そう思った瞬間から、心臓の鼓動が早くなっている。
(は…?なんで…?)
遭遇したことの無い感情に戸惑う。
【優くん…聞いてる?】
全く反応をしていない優に声をかけてみる。
優は本当に聞いていなかったので誤魔化すことなく謝る。
「ごめん…聞いてなかった…」
【はぁ…困った旦那さんだね…じゃあ…寝落ち通話してくれたら許してあげる…】
「…はい?」
【だーかーらー寝落ち通話だよー】
「いやそれは分かるんだけども…」
「分かるんだけど?」
「…何でもない…」
(いや普通に寝れないんだが?)
はっきり申し上げると、今優はドキドキしている。
超絶美人と夜に2人で通話なんて普通の男子高校生ならドキドキして当然だ。
そして優は普通の男子高校生なので…
(あー身体が熱い…エアコンあっても無理かもなこれ…)
となるわけだ。
そんな風に心臓の鼓動が速くなっている優だが、当然七海も同じ状況なのだ。
(優くんの声が夜も聞けるなんて…♡)
こちらは優のドキドキとは若干違う気がするが、とにかく両者ドキドキしている。
そのように両者寝落ち通話のことをすっかり忘れて思考を巡らせていた。
結局寝落ち通話の事は最後まで忘れていて普通に通話は終わった。
ちなみに優は結局よく寝れず、翌朝有咲に叱られた。
七海はよく寝れて肌がツヤツヤになってすごく機嫌が良かったのはまた別のお話。




