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44 騒がしいんだが


「お兄さん、起きてください。朝ですよ」

「……ん〜……」

「こーら、ちゃんと起きてください」

「ん〜……ふぁ〜」

「おはようございます」

「あぁ…おはよ〜」


少しあくびをしながら妹と挨拶を交わす。


現在時刻は7時00分。


夏休みであっても早起きをしている有咲(ありさ)にしっかり起こされる。


まあいつも部屋まで来て起こされているので慣れているが。


だが、やっぱり早起きはしんどい。

夢見も少し悪かったし。


そんな(ゆう)を心配するように有咲が顔をのぞいてくる。


「お兄さん、今回は大丈夫でしたか?」

「…ああ、大丈夫だったよ」


どう答えるべきか一瞬迷ってしまった。

そしてその一瞬の迷いはすぐにバレてしまう。


「嘘、ついてます?」

「ついてないよ」

「そうですか?なら良いのですが」


別に半分ぐらいは嘘ではない。


前回程悪い夢を見た訳では無いから。


でも、もうあの夢は見たくない。


そう考えながら優はベッドから降り、リビングに向かう。


「あら、おはよー」

「おはよう、2人とも」


リビングには大人2人がいて、父は新聞を読み、母は朝食の支度をしている。


そんな2人に有咲と優は同時に挨拶をし、食卓に座って父と話す。


「お父さん、今日もお仕事ですか?」

「ああ、今日も遅くなる」

「そう…なのですね…」


有咲が露骨に悲しそうな顔をして下を向いてしまう。

無理もないだろう。

最近は優希(ゆうき)の仕事が忙しく、朝以外ではほとんど話すら出来ていない。


お父さん大好きでかまってちゃんの有咲にとってそれは苦でしかないようだ。


優希は新聞を置いてだらんと落ち込んでしまっている有咲の隣に行き、自分の胸に引き寄せて頭を撫でる。


「ごめんな有咲、仕事が落ち着いたら今度みんなで遊びに行こう…な?」

「…はい…」


まだ寂しそうな有咲の頭をずっと撫でている優希を見て、母の奈々(なな)がニコニコと笑っている。


「ふふふ…仲良しで良いわね〜」

「仲が良すぎる気もするけどな」

「そうね〜。でも、仲がいいと言えば優と有咲も相当よ?」

「ゔ…」


多分普通の兄妹なら起こらないようなイベントもたくさん起こっているので、流石にこれは仲が良いと言えるだろう。


優はシスコンだし、有咲は相当なブラコンだし。


こんな兄妹、他にはいないだろう。


その事を優も何となく理解しているので、何とも言えない表情になってしまう。


丁度優が黙り込んだところで朝食が完成したらしく、優は食事を机に運ぶ。


全て運び終わったところで全員で手を合わせる。


「「「「いただきます」」」」


本日のメニューは一般的な和食で、お米と味噌汁に魚と、結構普通の朝食だ。


だが、奈々の作る料理は一味違う。


「ん〜美味しいです〜」


ほっぺを片手で押さえながら有咲が笑顔で声を漏らす。


それに便乗するように優と優希も料理を褒め称える。


「いつも通り滅茶苦茶美味いな」

「うん、最高だよ」

「ふふふ、ありがとう」


奈々が嬉しそうにしているが、優はそれに構う事なく父に話しかける。


「で、父さんはいつになったら休みがとれるの?」

「…わからん…」


優希は心に刺さる質問に目を逸らしている。

別に悪い事ではないからそんなに気まずそうにしなくてもいいのに。


優秀すぎるが為に会社から滅茶苦茶仕事を任されまくっていて、さらに優しいからそれを断れずといった感じなのだ。


最近昇進が決まりそうだと言って張り切っているが、優は流石に身体を心配している。


「そんなに仕事ばっかしてないで、有咲と遊んでやってくれよ」


これは単に休んで欲しいという優の家族を想う気持ちなのである。


それが優希にはしっかり伝わり、笑顔を作って答える。


「ああ……頑張ってみるよ」

「よし!じゃあ今週の日曜日にみんなでどこか遊びに行きましょうか!」

「はい!私、水族館に行きたいです!」

「まだ休みがとれると決まったわけじゃ…」

「ははは…どんまい…」


これが如月(きさらぎ)家の朝の日常である。


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