39 正直重いんだが
人混みから逃げ、人気の無い森の中に隠れる。
「ふぅ〜危なかったな〜」
優は2人から手を離し、膝に手をついて息を荒げる。
その両隣には優と同様膝に手をつける2人の美少女。
「はぁ…はぁ…ありがとう…助けてくれて」
「はぁ…お兄さん…カッコよかったです…」
七海と有咲は何とか優に着いてきたという状況なので、かなり疲弊してしまっている。
2人への配慮を忘れていた優はすぐに謝罪をする。
「あ、ごめん…ちょっと速く走ってしまった」
「(あれでちょっとなんだ…)」
「(恐ろしいですね…)」
「ん?どした?」
「い…いえ何でも…」
「そうか?ならいいが…」
結構引かれている事も知らず優は頭に?を浮かべるが、2人に変な目を向けられたので更に優の疑問は深まった。
しかし、有咲が速攻何もないと否定したので何とかその場は治った。
「んじゃ、さっきのギャラリーがいなくなったぐらいで戻るか」
「そうだね…よいしょ…痛ッ⁉︎」
「ん?どうしました?」
「あ…足が…」
七海の足を見てみると下駄が擦れて赤くなってしまっている。
恐らく履き慣れない下駄で走ってしまったからだろう。
その事に優はいち早く気づき、罪悪感にかられる。
「俺のせいだ…本当にごめん…!」
頭を下げ、心から謝罪する。
そんな優の姿を見て七海は慌てて優のせいではないと否定するが、優の頭は下がったまま。
「本当に…俺が悪いんだ…。だからせめて…謝らせてくれ…」
ここまで謝られると流石に七海も申し訳なくなってしまった。
なのでどうしたら優に頭を上げてもらえるのか考える。
(こういうのってお詫びを求めたら良いんだっけ…)
どこかで聞いた事がある情報で対処してみようと七海は考えた。
「うん…じゃあお詫びに…おんぶ…してくれない?」
「…おんぶ?」
「そうそう。私を優くんの背中に乗せて?」
「それで良いのか?もっと別にあるだろ?」
「んーじゃあ今度私とデートして?2人っきりで」
「あー…」
別に優としてはそれで七海が良いのなら構わないのだが、多分有咲が許さないので、答えに困ってしまう。
「えーっと…んー…」
「お兄さん」
「は、ハイ」
「私は別に構わないと思います。七海さんの願いなのですから、是非叶えてあげてください」
「あ…ああ…」
有咲から言われた意外な言葉にキョトンとしてしまう。
それに七海も驚いたらしく、目を見開いている。
「有咲ちゃん…良いの?」
「はい。七海さんはそれがしたいのでしょう?なら私からどうこう言う事はありません」
七海も優も完全に意表を突かれた感じで、驚いた表情のままだ。
そんな優に対し、更に有咲もお願いをする。
「ただ…その…今度私とも…デート…してくれませんか?」
「え?…ああ…」
「良いのですか⁉︎ありがとうございます!」
ニコニコと微笑みかけてくる有咲に少し呆れつつ優は膝を曲げた。
「さて、そろそろ帰るか。ほら、乗れよ」
「え?」
優がおんぶするような体制で七海を促す。
「いいの?お願い…叶えて貰えるのに…」
「ああ。これぐらいはさせてくれ」
「ありがとう。じゃあ…乗るよ?」
そう言って七海は優の背中に乗り、腕を肩に回す。
すると優はしっかりと七海の太ももを持ち、立ち上がる。
すると何だか背中に柔らかい感触が伝わってきた。
(え?何これもしかして…)
少し邪な事を考えてしまったが、自分をしっかり保ち、少しずつ歩く。
「うおぉ…凄いですね…」
「優くん…重くない?」
「うーん…」
正直言うと、ちょっと重い。
まぁ普通に考えて女子高生ともなればそこそこ体重もあるので当然の事ではあるのだが。
でも流石に言ってしまうと落ち込んでしまいそうなので黙っておく。
「軽いよ。全然」
「そう?良かったー」
七海は優の背中で胸を撫で下ろした。




