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36 完璧なネタだったんだが


何とか無事に高台に辿り着く事ができ、3人は安堵していた。


「あ〜怖かった〜…」

「こんなに怖かったなんて…」


七海(ななみ)が体を縮ませて震えている。


その横には顔が青ざめている有咲(ありさ)の姿が。

昔は怖いもの知らずだった有咲も、成長した今となってはかなり怖がりになってしまった。


七海は昔から怖がりな部分があり、今はそれが悪化したような感じだ。


そんな風に女性陣がビビりまくっているが、その中心にいる(ゆう)はというと…


「懐かしいな〜ここ」


感慨に浸っていた。


怖がっている2人の方を見向きもせず懐かしさを感じていた。


(色々あったな)


優は目を閉じて過去を思い出す。


嫌な思い出。


楽しかった思い出。


それらが心の中で蘇り、なんだか切ない気持ちになる。


(本当に、出会えて良かった)


そんな事を考え目を開くと、目の前に不思議そうな顔をしている美少女2人が。


「どうかした?」

「いや、なんでもない」

「そう?まあ良いけど」

「それより、後どれぐらいで始まるのでしょうか」

「うーん、あと10分ぐらいかなー」


スマホの時計を見ながら2人に時刻を告げると、2人は驚いた表情で口を押さえた。


「え?そんなに時間経ったの?」

「30分前にここに行こうと言う話をしたので、20分もかかったということですか?」

「まあそうだな。結構グダグダだったし」

「誰のせいですか?」

「そうだよ。そんなに遠くないのにこんなに時間かかっちゃったの誰のせい?」

「うん、君ら」


もはや分かって言っているのでは?と思ってしまうぐらい見事な自虐ネタだった。


そんなことできるんだね。知らなかったよ。

計算され尽くしたような見事なネタに優は感心しつつ、自分達のせいで遅くなってしまった事を謝罪している2人を励ます。


「まあまあ、怖いもんは怖いんだから仕方ないって。俺もちょっと怖かったし」

「そうなのですか?そんな風には見えませんでしたが…」


2人は少し音がするだけで過剰に反応していたので、全然怖くなかったのに段々怖くなってしまった。


なんて事は言えず、優は優しい表情で返答する。


「まあな。これだけ暗いとビビっちゃうな」

「でも、ちゃんと私達の事を守ってくれてたよね?」

「はい、その通りです。あのお兄さんの絶対に妹を守ろうとする動き…カッコよかったです」

「ん?あの時は私の事を守ってたんだよ?」

「はい?そんな事実はありません」


2人とも別に守ってないんだが。


勝手にしがみついてきて、勝手に後ろに隠れて、勝手に守られてただけでしょ。


そんな事はどうでもよくて、早く花火に備えなくては。


まだ座る場所も確保していないのに。


「はいちょっと待った2人とも。もうすぐ花火始まるから、準備しねぇと」

「あ…はい…そうですね…」

「うん…準備…しよっか…」


2人ともまだやり足りない様子ではあるが、何とか話を断ち切って準備を進める。

そこでまた問題点が1つ。


「席順…どうする?」


七海が期待した表情でこちらを見てくる。


餌をくれそうになっている犬か君は。


そんな七海を押しのけるように有咲が横から来て、七海が隣に座るのを防ごうとしている。


「お兄さんが1番左で、真ん中が私、1番右が七海さんでどうですか?」

「なんでもどーぞ」

「そんなの良いわけないでしょ!私が優くんの横なの!」


また喧嘩になっちゃった。


(良い加減仲良くしてくれないかなぁ…)


心の底からの願いが2人に届く事はなく、議論を続けている。


だが実は今回は完璧な解決策がある。


2人が優の横に座れる状況を作れば良い。


つまり…


「俺が真ん中で2人がその両隣にきたら良いんじゃね?」


ということだ。


優のこの発言に2人は「盲点だった…」と言わんばかりの表情をしている。


2人とも頭は滅茶苦茶良いのになぜ気づかないのかは解明できていないが、とりあえず喧嘩は治ったようで何より。


「じゃあ、横座るね?」

「失礼します。お兄さん」


2人ともルンルンな表情で優の両隣に座り、花火が打ち上がるのを待つ。


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