28 妹が恥ずかしがり屋すぎるんだが
「じゃ、行くか」
「はい」
先日約束した通り、本日は有咲とショッピングをする。
優と有咲は支度を済ませ、家を出る。
「「いってきまーす」」
「いってらっしゃーい」
母からの声が聞こえた後、優は扉に手を伸ばす。
「ふふっ、兄妹でデートかしら。いいわねぇ〜」
なんか聞こえた方が、知らないフリをしてさっさと家を出る。
目的地のショッピングモールに着き、ゆっくり歩きながら店を回る。
数分歩いたところで有咲の足が止まる。
「ん?どした?」
有咲の目線の先には美味しそうなスイーツの店が。
目を輝かしてその店を眺めている。
(子供みたいだな)
小さくて可愛いなんてただの子供じゃん。
そんな失礼な事を考えた後、有咲にその店に行くか尋ねる。
すると満面の笑みで嬉しそうに頷いてきたのでその店に向かう。
メニューを見てみると様々な種類があり、どれもボリューム満点ですごく女子高生に人気がありそうな見た目だった。
その中でも特に見た目が綺麗なイチゴのパフェを注文する。
「俺はこれで。有咲はどうする?」
前を見ると眉間にシワを寄せてじっくりと考えている小さな生き物がいた。
じっくり悩んだ末、チョコレートのパフェを注文した。
「楽しみですね!」
「ああ、そうだな」
そう言って無邪気な笑顔を浮かべている。
ルンルンと足を揺らしている。
本当に子供みたいだ。
そんな有咲を見つめながらパフェが来るのを待つ。
十数分経ったところでパフェが机に届いた。
「うわー!美味しそうですね!」
「そうだなー」
「では、いただきます!」
手を合わせた後美味しそうに頬張る。
「ん〜美味しいです!ほっぺが落ちてしまいそうです!」
「それは良かったな」
ほっぺに手を当てて至福の表情を浮かべている妹の顔を見ながら自分のパフェを頬張る。
「ん、うまいな!」
「ですです!あ、一口いただいてもいいですか?」
「どうぞー」
そう言ってパフェを差し出すが、有咲はスプーンを優のパフェには伸ばさない。
「どした?食べていいぞ」
「いや…その…」
恥ずかしそうに目を逸らしている。
シンプルになぜ恥ずかしそうにしているのかわからない。
なので普通に聞いてみる。
「えっと、なんかあった?」
「その……あーん…して欲しいです…」
「なんだそんなことか」
優にとっては小さくて可愛い妹に食べさせてあげる感覚なのでそれほど難しいことでもない。
なので優はスプーンで自分のパフェを取り、有咲の口元に差し出す。
「ほら、あーん」
「あ、あーん……ん!美味しい!」
恥ずかしそうな表情から一変して笑顔になった。
表情の変動が激しい有咲を子供を見る目で眺める。
すると有咲は恥ずかしそうな表情をする。
「あ…これ…もしかして……」
「?」
「か…か…間接キス…なのでは?」
「ん、まぁそうだな」
頬に手を当てて顔を真っ赤に染めている。
別に家族ならそれほど恥ずかしがることでもないのだろうが、有咲には違ったようだ。
有咲にとって優は特別なので、普通の家族がするようなスキンシップでも恥ずかしがってしまう。
なので普段から優とは過度な接触をしないようにしている。
うん、接触してるじゃん、君。
ひとまず店でゆっくりした後、2人は店を後にした。
なお、周りからは当然カップルだと思われていた。
微笑ましい表情で眺めてくる大人の女性が多く、正直結構恥ずかしかった。
有咲は間接キスのことが頭に残り続けて気づいていなかったが。
こうして兄妹で熱い時間を過ごして、優と有咲のデートは始まった。




