27 その遊びはしたくないんだが
夏休みに入り数日が経った。
そして来週に大きな夏祭りが控えているという状況になっている。
そんな時、七海から連絡が届く。
『来週の夏祭り一緒に行こ♡』
やはり夏祭りの誘いだった。
正直に言うと、既に有咲と約束をしている。
なので七海も一緒にとか言うと多分拗ねてしまう。
だが、いつもデートの誘いを断っているし、夏祭りぐらいは行ってやろうか。
そう考え、優は返信をする。
『いいよ。有咲と一緒でいいなら』
『え?2人っきりじゃないの?』
『それは無理』
直後悲しそうな表情をしている猫のスタンプが帰ってくる。
そんな悲しいスタンプに屈すること無く拒否し続ける。
『まぁ君が一緒ならいいか…』
数分経った時にようやく折れてくれた。
(どれだけデートしたいんだよ…)
毎日のように来るデートのお誘い。
結構しつこい。嫌ではないが。
さて、ようやく一難去った訳だが、まだ一難残っている。
(さて、有咲にどう説明すべきか…)
毎年共に夏祭りに行っている有咲。
当然今年も誘いを受けて承諾している。
今年も2人で行けることに喜びを感じていた妹にどう説明すべきか。
…………。
(うん、何も思いつかない⭐︎)
考えても無駄だと思い、とりあえず有咲の元へ向かった。
部屋の前に立ち、ノックをして有咲を呼び出す。
「どうぞー」
そう言われてから扉を開く。
目の前に現れたのは可愛らしいTシャツを来た小さな妹だ。
Tシャツに愛♡brotherと描かれているが、それは無視して有咲に事情を説明する。
「___というわけなんだが」
「そう…ですか…」
想像通り、落ち込んだ表情をしている。
「はい…わかりました…」
頑張って笑顔を作っているのは、兄にはよく分かった。
流石にこのままにする訳にはいかないので、なんとかお詫びをしようと考える。
妹が何をすれば喜んでくれるか。
それを考えるのは、割と簡単だった。
「えーっと、明日暇か?」
「はい、暇ですけど…」
「じゃーさ、買い物でも行かないか?有咲も高校生になったわけだし、新しい浴衣でも買うか?」
「え……」
少し驚いた様子で見上げてくる。
その直後、嬉しそうな笑顔に代わり、大きな声で返答してくる。
「はい。浴衣、欲しいです!」
めいいっぱいの笑顔を見せてくれた。
そのことが嬉しく、優も微笑む。
「そうか、ならそういうわけで……って、どしたの?」
急に抱きしめてきた有咲に、疑問の声をあげる。
「いえ、ただお兄さんへの愛が溢れ出てしまっただけです♡」
「はぁ………」
うん、いつものやつ。
優はいつものように抱き返し、数秒した後有咲を引き離す。
「では、明日はよろしくお願いします」
「おう」
そう言って部屋を出て行こうとしたのだが、扉に手を付けたところで引き止められる。
「あの、一緒に遊びませんか?」
「ん?まぁ別にいいけど。何する?」
「ではおままごとをしましょう」
(んーなんか嫌な予感がするなぁ)
その予感は的中し、夫婦の日常をおままごとですることになった。
「それではまずは夫が疲れて帰宅したところから」
「あ…ああ…」
「お帰りなさい、あなた♡」
「た、タダイマー」
「ご飯にします?それともお風呂にします?それとも…わ…た…し…?」
「ジャーオフロニシヨーカナー」
「そこは「有咲にしようかな…」と言うところですよ」
「いやそんなのできるか!」
こうして夫婦仲良くおままごとをしたのでした。




