23 話は最後まで聞いてほしいんだが
次の日の朝、男子生徒は2人の美少女と共に登校している。
「んふ♡んふふふふ♡」
昨日の最終奥義の弊害が早速起きている。
有咲がいつにも増して強く優にひっついている。
それを見て七海が有咲の事をじっと睨みつける。
「ねぇ有咲ちゃん?あんまり私の優くんにくっつかないでくれる?」
「いえ、お兄さんは私の物です♡」
「そんな訳ないでしょう?何たって優くんは私に直々に告白してしたんだし」
学園一の美少女2人が平凡な男1人の為に言い争っている。
周囲から見ればかなり異様な光景だろう。
だが、今は周りの視線など気にならない程にマズイ状況なのだ。
「それを言えば、私も告白して頂きましたよ?」
「ふーん、まぁどうせ妹に対しての好きとかでしょ?」
「いえ、あれは間違いなく女性に対する愛してるでした♡」
あ、なんかヤバい状況になってきている気がする。
危険を察知した優が何とか気配を消そうとするが、それは叶わずしっかり七海にくっつかれて非常に強い力を加えられる。
「ねぇ優くん?」
「は…ハイ…」
「一体どういうことなのかな?」
「イヤー…えーっと……」
「私にあれだけ熱烈な告白をしておいて、他に良い女を見つけたらすぐ乗り換えちゃうの?」
「………」
(いや全部違うんだが?)
七海の言葉に心の中でしっかり喝を入れた。
心の中で…ね?
本当に言ったら多分殺される。
それぐらい今の七海は恐ろしい顔をしている。
「ねぇ?黙ってないで何か言って?」
「七海さん、あまりお兄さんを責めないであげて下さい。お兄さんはただ正直に自分の気持ちを告白してくれただけなのですから♡」
「ふーん?」
(いや火に油注いでない⁉︎)
有咲、全然フォローになってないよ。
むしろ余計な事をしたまである。
(というかそもそも俺と七海は付き合ってないから七海が怒るのもちょっとおかしい気が…)
というのを言葉にしたら流石に七海が泣き崩れてしまいそうなので口にはしない。
だが、ずっと黙ったままではこの状況を変えられそうにない。
「優くん?結局、私と七海ちゃんのどっちを選ぶの?」
「そうですね、この際はっきりしておきましょうか」
とんでもない状況になってきた。
これはどう転んでも殺されそうだな。
なので外部に助けを求めよう…と思ったのだが、全員から嫉妬の目を向けられているので普通に無理そうだ。
こうやってはもうどうしようもない。
と思っていたが、実は禁忌の一手が存在する。
これを使えばもれなくいつもの10倍以上2人に絡まれることになるだろう。
なのでできれば使いたくないのだが、使わなければ多分明日には死んでいる。
(やむを得ない……か……)
心の中で決心し、優は口を開く。
「七海…俺はお前の事が好きだ。幼馴染として」
「そう…なんだ♡」
最後の方が大事なのでしっかり聞いていて欲しかったのだが、全く聞いていないようだ。
「有咲…俺はお前の事が好きだ。妹として」
「そう…なんですね♡」
こちらも同様最後の方を全く聞いていない。
「まあ…優くんに愛されるのなら二股でも許しちゃう…かな♡」
「同感です♡」
2人して恥ずかしそうに顔を押さえていながら共感している。
愛してるまでは言ってないんだが。
最後だけじゃなくて最初から聞いてなかった?
まあいいや。気にしないでおこう。
とりあえずこれが禁忌の一手、"異性としてではない作戦"だ。
なんか話を全く聞いないし、変に自己流の解釈をされているが、まあ良いだろう。
こと状況を打破出来たのであれば、お釣りが帰ってくる。
そのように優は心の中でガッツポーズをし、誇らしげな表情で歩く。
当然の事だが、この日から2人はいつにもまして絡んでくることになる。
そんな事は考えない事にする。
だって考えたくないから。




