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211 食べたいんだが


あれからも桜庭(さくらば)家は騒がしい1日となり、それを乗り切った(ゆう)七海(ななみ)は暗い部屋の中で2人仲良く同じベッドに寝転んでいた。


そこで優は昼ごろから気になっていたことを七海に質問した。


「何かあったのか?昼ごろからちょっと変じゃないか?」

「変って…?」

「何というか、元気がない?というか、いつもの勢いがないというか」


そう、今日の七海はいつものようにくっついてきたり愛を囁いてきたりなどといった行動が見られない。


むしろいつもとは逆で静かで大人しい雰囲気だった。


流石に何かあったのだろうと質問をすると、七海は目を逸らしながら説明を始めた。


「それはその、今日の優くん…カッコよかったから…」

「……?」

「お昼の話だよ…。一生かけて幸せにするとか…人生を捧げるとかって…」

「あぁ…」


ようやく優も気づき、自分の行動を反省する。


(確かに本人がいる前であれはやり過ぎだったな…)


でも後悔はしていない。


自分の本心を義両親に伝え、そして婚約を許してもらえたのだから。


でもまぁ、やっぱ七海の目の前であれはやり過ぎだったか。


優は寝転がったまま軽く頭を下げた。


「ごめん。あんなこと言われたらどう反応したらいいかわからないよな。ちょっと気遣いが足りてなかった」

「い、いや別にそれはよくて…う、嬉しかったの。そんな風に思ってくれてたんだって…」


七海は胸に手を当てて自分の気持ちを話し始めた。


「優くんは、私の幸せについてばっかり話してて…そんなに私のことを考えてくれるだけで、私は幸せだったの。でもそれと一緒に、期待が湧いてきたの」

「期待…?」

「そう…これからどれだけ私のことを幸せにしてくれるんだろうって。私をこれ以上幸せにしてどうするつもりなんだろうって…。自分勝手だよね。私の幸せばっかり考えちゃって…優くんの幸せは全然考えないで__」

「それでいいんだ」

「え…?」


優は咄嗟に七海の頭を撫でた。


「それでいいんだよ七海は。自分だけ、幸せになろうとしたらいい」

「で、でも__」

「俺はな、七海の幸せそうな姿を見るだけで幸せなんだ。七海が一生幸せでいてくれたら、俺も一生幸せなんだよ」


優は心が熱くなるのを感じながら自分の気持ちを話す。


「だから七海。俺に、一生幸せにされてくれ。これが、俺の企み、かな」


全てを説明し終えると、七海は急接近してきて顔を優の胸に埋めた。


「もう…優くんは悪い人だね…」


七海は目だけを上に向けた。


「私を自分のものにして、一生甘やかすつもりなんでしょ…?」

「まぁ、間違ってはないな」

「やっぱり…」


七海はもう一度顔全体を優の胸に埋め、急に胸を押し付けてきた。


「な…っ⁉︎」

「聞こえる…?私の心臓の音…」


正直そんなことを気にする余裕はないが、何とか頑張って七海の心臓の音を感じてみる。


「聞こえる…」


柔らかい感触の向こうから微かに早い心臓の鼓動が届いてきた。


「早いな…」

「うん…今、ドキドキしてるの…」

「なんで…?」

「ん…?それはね…」


七海は頬を赤くしたまま笑いかけてくる。


「幸せだから、だよっ」

「っ…!!」


可愛すぎる。


そんな破壊力抜群の笑顔を向けられたら、自分の中に眠る愛が溢れてしまう。


優は飛び出した愛を表現するかのように七海を抱きしめた。


「きゃあ…♡私、どうされちゃうんだろ♡」

「何もしねぇよ…。でも、ありがとな。俺と一緒にいてくれて」

「うん、これからも一緒、だよ」

「そうだな。これから一生、な」


そこで目が合い、そのまま顔を近づけた。


そして唇が重なりそうになった時に、七海は急に拗ねたように口を尖らせた。


「あ、私の好きなところをいっぱい言うのは禁止ねっ」


やはり七海は昼間のことを根に持っているようだ。


でも優はいっぱい言いたいのでしっかりと理由まで尋ねておく。


「え、なんで?」

「…恥ずかしいから…」


七海は目を逸らしながらそう言った。


またしても可愛い顔を向けられ、心臓が跳ねる。


それでも優はイタズラ心の方が勝ち、軽く笑いながら応えた。


「ははっ考えとく」

「もぅ…絶対考えないじゃん………っ⁉︎」


七海が拗ねながらこちらを見つめた時、優は唐突に唇を奪った。


「な、な…っ!」

「ははっ、可愛いな。食べちゃいたい」

「た、食べるの…?」

「ああ、パクっとな」

「…いいよ…?別に…」

「え、マジ…?」


優は身体を回し、七海の上に覆い被さるような体制をとった。


「本気にするぞ…?」


七海は静かに首を縦に振った。


そして酔っていた優はいつもより積極的に七海に手を伸ばした。


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